アントニン・レーモンド(1888-1976)
クラブハウスも数多く設計。東京ゴルフ倶楽部駒沢コースのメンバーで赤星家とも交流があり、長男・鉄馬、三男・喜介の自宅も手掛けた
“レーモンドスタイル”が 遺憾なく発揮された モダニズム建築
1960年 門司ゴルフ倶楽部(福岡)
エントランスに足を踏み入れると幅広い階段が眼前に現れ、見上げるとはさみ梁で支えられた高い天井や円形のシャンデリアが顔を出す。
フランク・ロイド・ライトとともに来日し、数多くの作品を残したレーモンド
1932年 東京ゴルフ倶楽部 朝霞コース(埼玉)
わずか8年で消えた白亜のクラブハウス。同時期に我孫子GC、相模CC、藤澤CCの4つのクラブハウスを手掛けたが、それぞれ異なった意匠で設計。藤澤CCのみ現存。
1958年 富士カントリークラブ(静岡)
クラブハウスとして初の登録有形文化財。富士山麓の景観にマッチした木造の山小屋風。富士の全姿がすっぽりと1枚ガラスの窓にはまる「ピクチャー・ウィンドウ」。
1963年 白河高原カントリークラブ(福島)
藁葺き屋根の合掌造り。ゴルフ場の造成時に伐採した栗・楢・欅、 地中から出た石・砂利を使用して建設。合掌造りの藁葺き屋根で重厚な雰囲気。
1970年 小田原城カントリー倶楽部(神奈川)
相模湾を見下ろす高台の赤い屋根。コースを見渡す高台に建ち、青い空と群青の海に包まれた赤い屋根のクラブハウス。山荘風の趣で随所に煉瓦が使われている。
1922年に独立し 事務所を開設
レーモンドの薫陶を受けた日本人建築家 吉村順三(1908-1997)
レーモンドに師事し、1941年に独立。56年間で計画案や増築を含め500を上回る作品を残した。形そのものよりも「重心の居住空間」にこだわった
帝国ホテルの完成を待たずして帰国したライトに対し、レーモンドは日本で設計を続けた。独立当初はライトの影響が色濃く残っていたが、コルビュジェなど他の建築家や日本建築の影響を受け、独自の作品を発表していく。 レーモンド事務所は前川國男や吉村順三など多くの日本人建築家を輩出。東京GCのメンバーだったほどのゴルフ好きで、数多くのクラブハウスを手掛け、現存しているものも多い。
1961年 小倉カンツリー倶楽部(福岡)
1932年 藤澤カントリー倶楽部(神奈川)
神奈川県立体育センターの一部として整備中。屋根瓦が緑色で「グリーンハウス」と呼ばれたスパニッシュ様式の建物。
1975年 木曽カントリー倶楽部(長野)
木が主張する和モダン。木を中心に造られ自然のなかにうまく溶け込んでいる。ラウンジには大きな暖炉が設けられ、レーモンドの影響が強く見られる。
レーモンドの独立を援助した、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880-1964)
英語教師として来日し、建築事務所を設立。部下がレーモンドの独立を援助した。神戸GCのクラブハウスだけでなく、軽井沢ユニオンチャーチや山の上ホテルなど1000棟もの建物を手掛けた。「近江兄弟社」の 創業者で「メンターム」を日本に広めた。
1932年 神戸ゴルフ倶楽部(兵庫)
週刊GD2018年5月1日号より