「ザ・ゴルフィングマシーン」(以下、TGM) が刊行されたのは、1969年のこと。その構成は、従来のゴルフ実用書の類とはまったく異なり、 一見すると難解な学術論文のようで、とっつきにくいことこの上ない。それもそのはず、著者であるホーマー・ ケリーは、プロゴルファーでもなければ、ティーチングプロでもなく、一般の企業に勤める、いわば「普通の人」だったのだ。

ただ、彼がほかの人とは違っていたのは、科学的な知識に長けていて、学術的探究心が異様に強く、わからないものをわからないまま放っておくことができない性格だったことだろう。彼が最初にゴルフと出会ったのは、1929年に始まる大恐慌の真っただ中。働き口がなく、米・ワシントン州シアトルのビリヤードバーで、やむを得ずコックとして働いていた時だった。
バーのオーナーが熱心なゴルファーで、ケリーをゴルフに誘い、それがきっかけでケリーはゴルフにのめりこんだ。その頃、プロを含む、たくさんの人に技術的な質問をいくつも投げかけたが、ケリーが満足するような、明確で、科学的に納得できる答えは得られなかった。
それが、後にTGMを書く、動機になったのである。ケリーは10年近い歳月をかけ、ゴルフスウィングを幾何学的、物理学的に解析し、その結果をTGMに記した。
この本の中身は"セオリー"というより、幾何学と物理学で解析した"システム"だ
日本在住のアメリカ人コーチ、ジョン・パーカー氏に、TGMの要点を解説してもらった。
パーカー 現代にも通じる概念とすれば、やはりスウィングプレーンに沿って、クラブが動くという点でしょう。有名な「マシーン」の概念模型(写真下)における、斜めの板がそれにあたります。

週刊GD編集部が再現したゴルフィングマシーンの概念模型。回転の軸となる部分に装着された水平方向と上下方向に動く2つのヒンジが、腕(クラブ)をプレーン上に保つ
パーカー この板に沿って、クラブを動かすために必要なのは、①軸が不動であること。②クラブを上下に動かす蝶つがい(ヒンジ)があること。③クラブを左右に動かす蝶つがいがあること、の3つだけです。つまり、腕のローテーションとか、手の返しは、本質的には不要ということなんですね。
【ゴルフィングマシーン実戦の主なポイント】
Point 1. シャフトとの接点(グリップ)はグラグラさせない

マシーンの概念模型を見ると腕とクラブは一体となっている。つまり、グリップが緩んでクラブがぐらぐらすることは想定されていない
Point 2. シャフトは常に平面状かそれと平行に動く

クラブは斜めの平面に沿って動く。実際のスウィングではこの平面から離れても、平行であれば問題ない
Point 3. ヘッドの軌道が弾道を、フェースの向きが打ち出し方向を決める

ボールがフェースの向きに飛び出し、スウィング軌道によってスライス、フックになると説明されているが、最新の弾道計測器で事実と確認されている
デシャンボーはゴルフィングマシーンの体現者。機械は人間になれないが、人間は機械になれる…
TGMにおける「マシーンの概念模型」は、必要最小限に簡略化されているため、人間が実際にクラブを振ると、模型とは形が異なるのが普通だが、ブライソン・デシャンボーのスウィングは見た目までマシーンの模型とそっくり。
パーカー 実は彼のコーチのマイク・シェイのスウィングもデシャンボーとうり二つ。二人でTGMをベースにオンプレーンスウィングに取り組んだことが良く分かります。

左)テークバック、右)ダウンスウィング 「デシャンボーのスウィングはテークバックとダウンスウィングの軌道がまったく同じです」(パーカー)

ジョン・パーカー
米国で新井規矩雄のキャディを務めたことをきっかけに来日したティーチングプロ。ホームページはこちら
【ブライソン・デシャンボー】シングルプレーンスウィングの解説記事はこちら
週刊GD2016年11月15日号より