クラブの進化とともにスウィング理論も変わるもの
1990年代 ヨコの動き「ウェートシフト」
ヘッドが小さくシャフトが硬いので、左右に体重を移動してヘッドを球にぶつけるようにして飛ばしていた。
2000年代 回転の動き「ボディターン」
重心距離が短くヘッドの開閉が容易だったので、体を回転させることでヘッドの開閉を安定的に行い飛ばした。
2019年 タテの動き「サイドベンド」
重心距離が長くヘッドの開閉がしづらいクラブは、体の「右の側屈」を使い、肩をタテに動かしてフェースの開閉を抑えて飛ばす。
── 今のクラブに、昔のスウィングは合わないということですが。
黒宮 昔は体重移動を行い、ぶつけて飛ばしていました。それが反発力の高いクラブになりヘッドの開閉を多く使うボディターンになりました。でも今のクラブは開閉が苦手で直線的に動くので、今までの振り方だと大曲りします。
── 新しいスウィングとは、どういったものなのでしょか。
黒宮 今のクラブには『サイドベンド』を使って“タテ”に体を動かしフェース面を返さない打ち方が最適なのです。詳しく説明しましょう。
サイドベンドとは“右わき腹を縮め”肩をタテに使う動き
モデルは側屈王子ことホアキン・ニーマン
彼はまさに究極のサイドベンド打法。腰が水平に回る一方で肩が完全にタテ回転している。ハンドファーストでつかまりすぎを防いでいる
ホアキン・ニーマン
チリ出身。アマチュアで23勝を挙げ、世界アマランクで長らく1位。今季プロ転向後8試合、19歳でシード権獲得した注目ルーキー
── 体を側屈させ、タテの動きが入るとなぜ飛ばせるんですか。
黒宮 今やデータ分析が当たり前に行われ、最下点より先で当てるのが理想というのが分かってきています。いわゆるヘッドの上がり際、インに入り際で当たり、高打ち出し低スピンのつかまった球が打てるポジションなのです。
高打ち出し&低スピン…このインパクトを可能にするサイドベンド打法!
アマチュアに多いインパクト
【スピンロフトとは】
ダイナミックロフト(インパクトの瞬間のリアルロフト)ーアタックアングル(クラブの入射角度)の計算式で導き出されるもの。ダイナミックロフト14度ー5度(アッパー)=9度となる。数値が少ないほどスピン量は少なくなる
黒宮 ただし、(ヘッドが上昇中のインパクトは)球が左に出やすいので、ハンドファーストで少し目標方向に逃がすようにして、球を真っすぐいかせるんです。その際に“サイドベンド”がキモになります。重心距離の長いヘッドで育ってきた若い選手は、みんなタテの動きが入っているんです。
「サイドベンド」はギッタンバッコンのイメージ
タテに動かすスウィングには「サイドベンド」が大切ということだが、実際にどんな動きなのか。
黒宮 サイドベンドというのは、日本語では側屈を縮め、上体を横に倒す動きなんです。実はその側屈の動きは今までNGだったギッタンバッコンの動きのイメージ。
テークバックでは左わき腹を縮め、切り返しでは右わき腹を縮める
テークバックで左わき腹を縮め(左)、右わき腹を伸ばしながら上体を回していく。これが「サイドベンド」を使ったテークバック。手打ちも防げる。
切り返しから右わき腹を縮め(右)、左わき腹を伸ばすようにクラブを下ろす。そこから回転すると「サイドベンド」を使ったインパクトになる。
黒宮 ギッタンバッコンだと肩の上下運動だけなので、そこから回転して上体を回せるようになれば、正しい“タテ”のスウィングが作れるようになるのです。
ギッタンバッコンに上体の回転を加える
わき腹が縮めば軸ブレしない
側屈を正しく使って肩がタテに動くようになると、左右への移動がほとんどなくなる。軸がブレずに効率よく力が伝わるようになる。
肩はタテ回転、腰は水平回転、そしてハンドファースト
サイドベンドはわき腹を縮める動きということが分かったが、スウィングにどう取り入れればいいだろうか。実際に黒宮コーチの指導を受け、サイドベンド打法を実践している梅山プロにきいた。
梅山 切り返しで、左お尻を左かかと側に突きだすイメージを持っています。こうすることで腰が水平に動いて、ふところにスペースができます。そこで一気に右肩を縦に押し込むようすれば、サイドベンドが使えたダウンスウィングになります。
タテ回転できる3つのポイント
【ポイント①】下半身リードで右肩を下げるように切り返す
左お尻を後ろに突き出すことに連動して、左肩が上がり少し右わき腹は縮みます。そこに追い打ちをかけるように腰をターンし、右肩を押し込むことが大切。
【ポイント②】トップで右お尻、インパクトで左お尻を後ろに突き出す
トップで右お尻を後ろに突き出し、インパクトで左かかと側に体重をかけて左お尻を突き出し、下半身先行のスウィングを作る。
【ポイント③】インパクトでお腹に力を入れ背中を丸める
インパクトでお腹に力を入れ猫背になり、シャフトごとボールを打つイメージを持つと、ハンドファーストインパクトに近づく。
現代のドライバーに合った「サイドベンド打法」。体の左右の側屈を活かして、両肩をタテに動かせるかがポイントだ。前傾姿勢がまったく崩れず、左右のスウェイも消えてしまう体使いでもある。
月刊GD2019年2月号より