「肩を回せ」とよく言うが、それで上手くいかなかった人は多いはず。それもそのはず。回すというとどうしても「横回転」をイメージしてしまうから。しかし、それが根本の間違いで、肩は「縦」に回すのが今の主流なのだ。「肩の縦回転」とはいったい動きなのか。 新たな飛距離アップの世界へご案内。
画像: 【指導/目澤秀憲プロ】 めざわひでのり。1991年生まれ。アメリカ留学の経験を生かし「エースゴルフクラブ」でレッスン活動中。日本では数少ない「TPIレベル3」取得

【指導/目澤秀憲プロ】
めざわひでのり。1991年生まれ。アメリカ留学の経験を生かし「エースゴルフクラブ」でレッスン活動中。日本では数少ない「TPIレベル3」取得

画像: 【指導/三觜喜一プロ】 みつはしよしかず。1974年生まれ。辻梨恵らのコーチを務めるなど、ジュニアからトッププロまで幅広い層をサポート

【指導/三觜喜一プロ】
みつはしよしかず。1974年生まれ。辻梨恵らのコーチを務めるなど、ジュニアからトッププロまで幅広い層をサポート

「世界のトップはみんな“縦回転”」(目澤)

今は、どんな動きでも数値で可視化できる時代。スウィング解析システム「ギアーズ」で、PGAツアー40人のスウィングを計測しデータをとったところ、驚くべき。そして、その数値の平均をスウィング化したのが下の図だ。

PGAツアー40人のスウィングの平均値がこれだ

画像: PGAツアー40人のスウィングデータの平均として作成。トップでは左肩が下がり、インパクト以降では右肩が下に。「ギッタンバッコン」のような動きが今の平均というわけだ

PGAツアー40人のスウィングデータの平均として作成。トップでは左肩が下がり、インパクト以降では右肩が下に。「ギッタンバッコン」のような動きが今の平均というわけだ

そこでわかったことは、「肩は縦に回している」という事実だ。この結果に、目澤プロは今のクラブの性能を考えると当然の動きだと感じたという。

PGAツアーでは縦回転が主流

画像: ツアーを代表する飛ばし屋の2人も肩の動きは縦。体の回転を使ってヘッドを走らせているため、飛んで曲がらないスウィングになっていると目澤。「体が自然な動きをすれば今のクラブは飛んで曲がらないはずなんです」

ツアーを代表する飛ばし屋の2人も肩の動きは縦。体の回転を使ってヘッドを走らせているため、飛んで曲がらないスウィングになっていると目澤。「体が自然な動きをすれば今のクラブは飛んで曲がらないはずなんです」

目澤 なぜ縦に回るのかと言うと、クラブのライ角どおりにインパクトするためです。前傾角度をキープしない限りライ角どおりには当たりません。姿勢を維持するには肩を縦に動かす必要があるんです。

目澤プロは、昔の選手のほうがスライドなどの横の動きが強かったと言う。それがクラブの進化で横の動きが必要なくなったと続ける。

目澤 今の選手は軸をセンターにして振る傾向が強くなっています。慣性モーメントが大きい今のクラブは肩を縦に動かしてローテーションを抑えたほうが動かしやすい。時代に合ったクラブの動かし方が必ずあるんですよ。

体を倒し、そして回る

画像: トップで体は右に倒し、インパクトは左に倒す

トップで体は右に倒し、インパクトは左に倒す

画像: 「倒す+回す」でこの動きになる

「倒す+回す」でこの動きになる

「物理的にも、縦じゃないと力は発生しない」(三觜)

縦回転で振ることが主流なのはわかった。ではなぜそれがいいのか? プロやジュニアを指導する三觜プロに肩を縦に回すことの原理を聞いた。

三觜 クラブ力学の観点から言うと、シャフト線上に重心がないゴルフクラブを思いどおりに動かすには“重心の管理”が重要になります。重心を管理する方法は直線的に引く動きをすること。真っすぐに引くことではじめて重心がついてくるわけです。

三觜 それには縦回転が有効です。横回転だとフェースはどんどん開く方向に力が働き、重心の管理が難しくなります。また、力の出し方も「上から下の動き」のほうがエネルギーは大きくなります。地面にあるボールに対して強い圧力をかけようとしたら、肩を縦に回転させる必要があります。実際にやってもらえれば、わかると思いますよ。

上から下に体を使うと圧力は大きくなる

画像: 「物理的にも、縦じゃないと力は発生しない」(三觜)

テコの原理を使うと肩は縦回転になる

三觜プロは肩を縦に回転させるには、始動がもっとも大事だと言う。

三觜 テークバックで大事なことは、体の運動量とクラブの運動量が合っていることです。クラブの運動量が少ないと、必ずクラブは暴れてしまいます。アドレスが正しいことが前提になりますが、クラブは飛球線に沿う形で直線のイメージで動かします。

三觜 動かし方のポイントは、左手で地面をグッと押すこと。下に向かって押していくことで、ヘッドが上がっていきます。つまり、テークバックでは「左手を下げていくイメージ」です。手を上げようとすると、上体が浮いて、縦の動きができなくなってしまうんですよ。

手を下に押すように動くとテコの原理でヘッドは上がる
ヘッドと体の運動量と合わせるにはテコの原理を使ってヘッドを上げる。ヘッドから動かそうとすると運動量はどうしてもバラバラになり手打ちの原因になる。

画像: テークバックで手が下がればヘッドが上がる

テークバックで手が下がればヘッドが上がる

左肩が地面を向いている
左手で地面を押すように始動すると左肩は自然と地面を向く。左肩を下げる意識は必要なく、自然に下がるものだと思っておくとナチュラルな縦回転になる。

画像: 左肩は自然に下がる=縦回転の始まり

左肩は自然に下がる=縦回転の始まり

イメージがわかない人は……「車のハンドルを左にきるように上げてみて」

画像: 両わきを締めた状態から車のハンドルを左に切る動き。テークバックでヘッドは直線的に動き出す

両わきを締めた状態から車のハンドルを左に切る動き。テークバックでヘッドは直線的に動き出す

右手のひらを下向きにダウンスウィング

直線的な動きを意識するのはテークバックだけではないと三觜プロ。解剖学的にはスウィングは回旋運動だが、あくまでも直線的な運動ととらえるべきだと言う。

三觜 次はダウンスウィングですが、ポイントはリリースです。野球のピッチャーをイメージしてください。右投げ投手がボールをリリースしたあと、右手の親指は地面を向きます。これは腕を外旋させながら右手をリリースしているから。ボールを手に持って、地面に投げてみるとこの動きが体感できるはずです。

右手は意識しないという表現は、正しい動きができているプロだから言えることだと三觜プロ。ボールに向かって右手のひらを下向きに下ろす動きが、ダウンでの縦回転を生み出す。

ボールに向かって右手を下ろす
ダウンスウィングでは右手をボールに向かって下ろす。結果、右手のひらは地面を向くはず。右の手のひらがターゲット方向を向くのは横回転をしている証拠。

画像: 右手のひらが下を向けば肩は縦に回る。手のひらが横を向けば肩は横に回ってしまう

右手のひらが下を向けば肩は縦に回る。手のひらが横を向けば肩は横に回ってしまう

左の胸骨から引っ張る
体の左サイドの意識は、切り返しで左の胸骨で引っ張るイメージ。体のスウェイを防ぐことができ、軸をキープしたまま体の直線的な動きが実現する

画像: 右手のひらを下向きにダウンスウィング

肩の縦回転にはストレッチが欠かせない

肩の縦回転を身につけるために効果的なのが胸を開くストレッチだと目澤が教えてくれた。

ストレッチ①椅子に座って後ろにのけぞる

画像: 椅子を使ったストレッチ。自分の後ろ側を見るつもりで椅子の背もたれを支点に背中を思い切って反らす。デスクワークで縮こまった胸を開くと仕事もはかどる

椅子を使ったストレッチ。自分の後ろ側を見るつもりで椅子の背もたれを支点に背中を思い切って反らす。デスクワークで縮こまった胸を開くと仕事もはかどる

ストレッチ②前傾した状態から腕を引き上げる

画像: 両手を広げた状態から前傾、左右に体を回転。腕は広げたまま胸が開いた状態をキープ。肩が縦に回転する感覚も同時に得ることができる

両手を広げた状態から前傾、左右に体を回転。腕は広げたまま胸が開いた状態をキープ。肩が縦に回転する感覚も同時に得ることができる

肩を縦に回転させる効果を高めるには、ある程度の柔軟性が必要だと目澤プロ。筋力アップよりも柔軟性を高めることが、「飛ばしの縦回転」のポイントです、目澤プロは付け加えた。(了)

画像: 肩の縦回転にはストレッチが欠かせない

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画像: golfdigest-play.jp
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週刊GDより

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