【解説/南出仁寛プロ】
2006年にプロ転向。ドラコン選手として日本トップクラスの実力を誇るが、実は飛ばしだけでなく寄せも上手い。PGAティーチングプロの資格も持つ
【セベ・バレステロス】豪快に飛ばし、どこからでも寄せた"魔術師"の足使い
多彩な技術で「魔術師」と呼ばれたゴルフ史に名を残す名手セベ・バレステロス。
南出 飛ばし屋の名手は、2打目でウェッジを使う頻度が多いため、アプローチが必然的にうまい。共通するのは、しっかりと足を使ってスウィングのリズムを作っているところ。ドライバーでも、ウェッジでも、テークバックで右足が伸び、インパクトに向けて左足を踏み込んで、フォローで左ひざが伸びていきます
南出 セベのスウィングを見てみると、両ひざを柔らかく使ってテークバックし、大きな捻転から一気に振り切っていることが分かります。右から左への大きなニーアクションでスウィングのリズムを作っているのです。
南出 ドライバーショットも振り幅の小さいアプローチも、右足の伸びたバックスウィングから、ひざを送って体の正面でボールをとらえています。スタンス、振り幅、力感は違いますが、基本は同じなんです。
【松山英樹】日本人離れした飛びも、絶妙なアプローチも、基本は同じ
南出 ウェッジでもドライバーでも、インパクト後も頭は残ったままで前傾をキープ。頭とヘッドが引っ張り合い、球を押し込めるのでドライバーは飛距離につながり、アプローチでは方向性がよくなります。
南出 体の正面から腕が決して外れていない。強さの違いはあっても、同じイメージで打っているので、同じ姿勢の振り抜きになっています。
【タイガー・ウッズ】飛ばしも、寄せも、体の正面でボールをとらえる
南出 ひざを柔らかく使うセベに比べて、インパクトからフォローにかけて、強く、素早く左ひざが伸びていきます。ドライバーもウェッジも、下半身でスウィングを作っています。左ひざを伸ばすことで左の壁が出来て、ヘッドが目標方向に加速していきます。
【ジョーダン・スピース】初優勝も、10勝目も、バンカーからチップイン
バンカーショットの名手といえば、勝利を決めるチップインを決めてきたジョーダン・スピース。
南出 ドライバーも、ウェッジも、前傾をキープしたまま肩を回して、クラブを縦に振っています。短いクラブでも、しっかりと足を使って、体全体でスウィング。「縦回転」で振っているので、左右へのブレが少なく正確性も高いです。このクラブをアップライトに振る動きは、石川遼プロと共通点が多いですね。
【石川遼】手首は固めず柔らかく。アップライトに振るからインパクトが長い
南出 クラブを縦に振り、手首を柔らかく使っているのはジョーダン・スピースと共通するポイントです。手首をガチガチに固めると力が伝わらず、ヘッドのコントロールもできなくなります。
南出 手首を柔らかく使うことでドライバーではヘッドが走り、ウェッジではフェースを上手く使うことができるんです。ただ、飛ばそうとするとボールのスピン量が増えて、どうしても曲がりやすくなる。
南出 そこでフォローでクラブが立つようにアップライトに振ると、横にブレにくくなる。さらにインパクトゾーンが長くなるのでボールを押す時間が増え、飛距離が伸びるだけでなく、直進性もアップするんです。
石川遼は、10代の頃からそのアップライトな振り抜きが素晴らしかった、と南出プロ。
【尾崎将司】ドライバーもウェッジも、上から下ろしてタテに振り抜く
南出 縦にクラブを上げて、真上に振り抜くようなスウィングでインパクトゾーンが長いです。これはすべてのショットに共通しています。ドライバーでは長くボールを押せて飛距離につながり、アプローチではスクェアに当たるので方向性が安定。手首を柔らかく使っているため、ヘッドのコントロールもうまいです。
和合の"奇跡のバンカーショット"も右手は添えただけ
1989年日本オープン最終日、17番パー3のティショットは左のバンカー。しかも左足下がりのライ。ショットはカップに吸い込まれたが、打った直後の写真に注目。右手はクラブから離れているのが分かる。
1987年フジサンケイ最終日、川奈の16番、17番連続チップインも縦振りから
16番ではグリーンをオーバーしてガケ下へ。ピンも見えないアプローチがチップインイーグル。17番でもチップインバーディ。縦振りのスウィング軌道から生まれた。