風洞実験データから風の影響を算出
これから公開する「飛距離データ」は、福岡工業大学・溝田教授の研究により導き出された「3次元飛翔軌道方程式」により算出したもの。
3次元飛翔軌道方程式とは、空力特性を測る溝田教授の実験室にある「風洞実験装置」で実験したゴルフボールが飛んでいる最中に風から受ける影響の数値化と、屋外での実際のプロの試打データを解析して、導き出した数値。
「風量」や「打ち出し角度」など、状況に応じて想定値を入力すれば「この風速と打ち出し想定で、何ヤード飛ぶか?」を正確にシミュレーションできるという。
風速値ごとの自然の反応
フラッグが軽くはためくアゲンスト、
7Iで-16.87ヤード
4~5月は全国的に強い風が吹く日が多い。日本気象協会によると「南の方角から暖かな空気を運んでくる風」がとくに太平洋沿岸で強くなるからだというが、ゴルファーにはこの風が悩みの種にもなる。
福岡工業大学名誉教授の溝田武人氏は、ボールが受ける「風の影響」を長年研究してきた。ボールが飛翔中に受ける影響を数値化した風洞実験により、飛翔軌道計算のデータを集め、プロの試打データも計算式のベースに取り入れ「ゴルフボールの飛翔軌道の方程式」を編み出した。
今回は、この計算式で算出した溝田教授のデータを紹介。まずは150ヤードを7番アイアンで打った場合。「ゴルフコースの木の葉がつねに揺れていて、ピンフラッグが軽くはためく」程度の風速5m/sのアゲンストでは、無風に比べて飛距離が7番アイアンのショットが16.87ヤード落ちる。
風速5mのアゲンスト。マイナス16.87ヤード
さらに10m/sの場合では、マイナス35.38ヤードと飛距離は大きく落ちる。フォロー(追い風)の場合は、5m/sはプラス13.88ヤード。10m/sではプラス24.19ヤードと、アゲンストよりは影響が少ない。
「アゲンストで飛距離が余計に落ちているのには理由があります。同じ回転数で打った場合でも、スピンパラメーターが大きくなるためです。スピンパラメーターとは、空気抵抗を決める数値であり、向かい風だと数値は、追い風よりも大きくなり、空気抵抗を大きく受けやすいのです」(溝田教授)
同じ風速であっても、追い風と向かい風では飛距離の増減は同じではない。向かい風のときは、より風の影響が大きくなることを覚えておこう。
番手が変わるとどうなる?
続いては100ヤードをPWで打った場合のデータ。風速5m/sのアゲンストで15ヤード、10m/sでは30ヤード近くも距離を落としている。目標に対する割合として考えると、PWの場合のほうが大きい。
「バックスピンが増えるPWは、アゲンスト風の受ける影響は大きくなります。滞空時間も長くなるので、一度戻され始めると、その幅も大きくなります」(溝田教授)
グリーンを狙った100ヤードの一打が30ヤードもショートしたら、7Iで30ヤードショートした場合より、精神的ショックはさらに大きいはずだ。今回のデータから使用する番手を考えてみよう。
PWの100ヤード。5m/sのアゲンストで-15ヤード
たとえばPWの飛距離が100ヤードの場合、風速5m/sのアゲンストで100ヤード飛ばすにはプラス15ヤード、つまり9番アイアンが必要。風速10m/sのアゲンストならプラス30ヤード以上で8番アイアンが必要になるという計算。
最後に、風の中でのプレーでは何に気をつければいいのか?
「当然ですがアゲンストの風ではボールを上げないようにする。上空に舞っている風は地面で吹いている風よりも速いため、ボールが受ける風の影響は大きくなるのです」(溝田教授)
「同じ番手でも、ライナー性の打球を打つなど工夫することが必要です。曲がり幅も大きくなるので、できるだけ縦回転の球を打つことも心がけたいところです」
「飛ばない」ばかりか「曲がり」も大きくなるようでは、好スコアは「風とともに去りぬ」。今回のデータをしっかりと頭にインプットして、次のラウンドに臨もう。
TEXT/Toshiaki Muraki
週刊GD2019年4月30日号より
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