渋野日向子(しぶの ひなこ)
1998年生まれ。岡山県出身。2018年プロテストに合格。今季、いきなり国内メジャーの「ワールドレディスサロンパスカップ」でツアー初勝利を挙げる。
インパクトがD・ジョンソンとうりふたつ
渋野日向子選手の最大の魅力は、そのインパクトにあります。体重を右に残しつつ、左脚の内側で回転し、強いハンドファーストでボールをとらえるその姿は、まるでダスティン・ジョンソンのよう。この形を見ただけでも、彼女が質の高いインパクトの持ち主であることがわかります。
基本的に、アドレスやトップなど、打つまでの形や動作をマネるのはそれほど難しくありません。しかし、球に当たったときの形というのは、なかなかマネられないものです。
逆に言えば、これだけボールに圧かけられるインパクトを実現できるのは、ボールに強くコンタクトする感覚、エネルギーを効率よく伝える感覚に優れた証拠と言えるでしょう。
これはソフトボールなどのスポーツ経験によって培われてきたものだと考えられますが、このホームランバッターのように美しく力強いインパクトが、彼女のプレーを支えているのです。
クラブを正面にキープしたまま球に強い圧をかける
渋野選手を見たとき、まず目につくのは、ハンドダウンで手元を下げたアドレスです。これは、手元を低く抑えてインパクトするための姿勢と考えられます。
彼女のようにダウンのタメが強いプレーヤーは、どうしてもシャフトが寝て入りやすくなります。そこからクラブを前方に振り出していくときに、手元が浮きやすかったのではないでしょうか。このハンドダウンの構えは一見すると特殊に感じられるかもしれません。
しかし、これだけ球に圧かけられるインパクトを実現しているのですから、彼女の場合は功を奏していると言えそうです。また、アドレスで両腕の間隔を詰め、ピンと伸ばしているのは、腕をひとつの束にすることで、スウィング中に腕の長さ、体と腕の間隔を変えないようにしているのでしょう。
アドレスでは腕をリラックスさせることを重視するプレーヤーも多いのですが、彼女の場合は、これによってスウィングのゆるみを抑えているのです。このように、アドレスには個性を感じさせる渋野選手ですが、スウィング自体はかなりオーソドックスな動きをしています。
とくに、大振りをせず、クラブを体の正面にキープしたままコントロールしているところなどは、読者のみなさんにも参考にしてもらいたいところです。
【解説】井上透
いのうえとおる。プロコーチ。東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩、川岸史果らのコーチを務める
PHOTO/ Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa
週刊GD2019年6月11日号より