日本女子ツアーは、畑岡奈紗や勝みなみなど黄金世代をはじめとする若手プロが日替わりで台頭し、もはや誰が勝つかわからない時代に。そんななか、5月に久しぶりに日本人でメジャー優勝を手にしたのは、無名と言ってもいい若手選手だった。渋野日向子、黄金世代の20歳。プレー中のキュートな笑顔と迫力あるショットでファンの心を鷲づかみ。どんなプロなのか? 密着取材を行った。
【解説】青木翔コーチ
あおきしょう。1983年生まれ、福岡県出身。大学卒業後ツアープロを目指すも、改めて自分を見つめ直したことをキッカケに27歳でティーチングの道を志す。現在、渋野日向子をはじめ、日本アマ優勝後プロ入りした飛ばし屋の亀代順哉や超有望なジュニアゴルファーを数多く育成している、いまもっとも注目のティーチングプロ
頭を抑えて上体の伸び上がりを防ぐ
── 両親から受け継いだ才能だけを頼りにゴルフをしていた渋野だったが、約2年前から青木翔プロに指導を受け、ゴルフが一気に飛躍したという。どんな練習をしているのか、同行させてもらった。
GD いま、青木プロに教わっているそうですが、何を一番よく言われますか。
渋野 “振れ”って言われます(笑)。ザックリとしたイメージ的な話が多いですかね。
青木 細かい体の動きをどうこうするって、頭ではわかっても、人間はロボットじゃないので、できないじゃないですか。ボクはなるべく難しく考えさせずに感覚的にわかるように指導しています。
GD 今は弾道測定器など数値化してレッスンするコーチが多いなか、ある意味めずらしいですよね。
青木 そうかもしれませんが、ボクも元々はプレーヤーだったんで、選手たちの気持ちがわかるんですよ。頭ではわかっていても、できることとできないことがあるってことを。ボクのレッスンのモットーは「イチ言って10できる選手」を育てることです。だから、あれこれ言わず、まずはひとつのことを徹底的にやって自問自答させる。これが、選手が成長するコーチングだと思ってるんです。
渋野 習いはじめから、頭を抑えるだけですもんね(笑)。
青木 コラッ! それはシブ子がインパクトで伸び上がってたから。現にフックの度合いが減ってきただろ?
渋野 そうですね(笑)。
青木 もちろん、感覚を養うヒントやドリルもさせますけど、やるのは選手。ボクの操り人形では自立できません。継続を支えるコーチでありたいんです。
一年でインパクト激変。頭が上がらず前傾キープ
── 青木プロに師事してからずっと頭に手を置かれてショット練習を続けた渋野。すると驚くほどインパクトの形に違いが現れた。
GD 一年前のインパクトと今をくらべると、確かに別人ですね。
渋野 ですよね! 私もそう思います(笑)。
青木 以前は上体が伸び上がっていたので、クラブがインサイドから入りすぎて、フックの度合いが大きかったんです。今は、体の右サイドでボールを押し込めているので、球質が強く、距離も出るようになりました。
GD 頭に手を置くレッスン、あなどれないですね。
渋野 始めた当初は、ダフッてばかりでした。昔は感覚的に、ダフらないように伸び上がって調整していたんですね。
青木 以前の彼女は、上体を起こしてヘッドの通り道を作っていたんですけど、前傾の意識を持つようになってダウンでヘッドをリリースするタイミングを覚えました。いままでは、腕力や筋力に頼って打っていましたが、効率よくパワーが出せる体の使い方を覚えたことで、方向性も飛距離も身につけたんです。でも、まだ発展途上ですけどね。
渋野 明らかに球筋が変わったから、「頭に手をポン練習」の成果があったんですね(笑)。
【シブ子ポイント】 右わきを縮めるように押し込む
上体が浮き上がっていたときは、体重が上に逃げて手打ちになっていた。右わきで押し込む意識を持つようになってから前傾角が変わらず飛距離も伸びた。
青木プロコーチングポイント
クローズスタンスドリルで前傾を保ちながらボールを押す
アドレスからの前傾角を変えずに振る感覚を養うために、クローズスタンスにしてフォローで体の左側にしっかり振り抜く。素振りから始め、慣れてきたら実際に打つ。上体が伸び上がらずボールを押し込める。
渋野日向子ゴルフ完全解剖②に続く
PHOTO/ARAKISHIN、Shinji Osawa、Hiroyuki Okazawa
週刊GD2019年6月18日号より
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