2019年シーズン、初優勝を挙げたあとも、安定した成績を続ける河本結選手。注目のショットメーカーのスウィングをプロコーチ・井上透が分析する。
画像: 河本結 1998 年生まれ。20 歳。愛媛県出身。抜群のショット力を武器に、今年3月のアクサレディスでツアー初優勝を果たす

河本結
1998 年生まれ。20 歳。愛媛県出身。抜群のショット力を武器に、今年3月のアクサレディスでツアー初優勝を果たす

下半身の力を効率よく使う

正面からスウィングを見ると、下半身のパワーを活かして振ろうという意図がはっきりとわかります。たとえば、バックスウィングでは右へ重心を移動するというよりも、始動した瞬間からその場で左へ傾くような動きを見せています。

これは、ダウンで左サイドに強く踏み込むための準備。下半身の力を最大限に得るためには、この左サイドへの踏み込みが不可欠なのです。

そして、トップから左へ踏み込んでいくのですが、ダウンで左腕が地面と平行になるあたりからは左脚を伸ばすことで重心を右に戻しているのがわかります。

この左へ踏み込んでから右に戻す重心移動は、最近流行している地面反力を使ったスウィングの特徴です。従来の重心移動(右に移したものを左へ移す)とは逆の動きになりますが、この動作によって下半身の力を上半身へと効率よく伝え、ヘッドを加速させているのです。

回転力が生み出すツアー屈指のパワーフェード

速いテンポとシャープなキレが特徴の河本プロですが、特筆すべきはインパクトの手元の低さです。ダウンではクラブに遠心力が働くため、手元が浮き上がりやすくなります。しかし、彼女の場合、ア
ドレスよりもインパクトのほうが低いのではないかと思わせるほどの位置に収まっています。

ここまでのハンド・ロー・インパクトは女子ツアーではあまり見られません。これが彼女のショットの精度と安定性を支えていることは間違いないでしょう。 

基本的に、インパクトで手元が浮き上がるほど、クラブはトウダウンを起こすため、シャフトが暴れてフェースの管理が難しくなります。逆に言えば、手元を低く引きつけることで、シャフトの挙動は安定し、方向性をアップさせることができるのです。

また、河本プロは、比較的フラットなスウィングが特徴ですが、ここからドローではなく、パワーフェードを放っていくところが、彼女の非凡なところ。トップが低くなるほどドローは打ちやすくなりますが、大きなフックも出やすくなります。

これを体の回転力によって球を逃がし、フェードを打つことで、飛距離と方向性を両立させているのです。

【解説】井上透
いのうえとおる。プロコーチ。東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩、川岸史果らのコーチを務める。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa

週刊GD2019年7月9日号より

This article is a sponsored article by
''.