ZOZO選手権が最大のチャンス!?
石川遼の涙の優勝で劇的な幕切れとなった日本プロゴルフ選手権。久々に男子ツアーが盛り上がった大会だった。さぁ、いよいよ石川遼の本領発揮かとゴルフファンの期待も高まるが、その翌週も翌々週も男子ツアーは試合がない。
“海外とのリンク”が人気回復のカギになる!
下記グラフは男子ツアーの現状。
2019年は試合数も賞金額も女子ツアーに抜かれた!
日本プロが終わったのが7月7日。しかし、今季の男子ツアーは8月22日に開幕する長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップまで、実に1カ月半、ツアースケジュールに“空白”があるのだ。
こうした男子ツアーの現状に対して、日本で初めて開催される米PGAツアーの公式戦「ZOZO選手権」が人気回復のきっかけになるのではというのは、元サッカー日本代表の福西崇史氏。
「Jリーグでもイニエスタ選手やビジャ選手が加入したヴィッセル神戸は完売続きです。ZOZO選手権は男子ツアーの特効薬になるのでは?」
と予想する。テレビ解説でお馴染みの佐渡充高氏も、「これからの男子ツアーは海外とのリンクが不可欠。ZOZO選手権が契機となって海外ツアーとの共催が増えれば盛り上がる」と復権に期待を寄せた。
識者たちの見解
サッカー元日本代表 福西崇史氏
Jリーグでは、イニエスタ選手やビジェ選手が所属するヴィッセル神戸のチケットが完売続きです。海外の有力選手を引っ張ってくるというのは即効薬。その意味で言えば、ZOZO選手権を開催してタイガーを呼んだ前澤社長の存在は大きい。ヴィッセルの三木谷オーナーらと同じくキーマンですね。
ただ即効薬には持続性はない。持続させるためには開催者側の努力が必要。スポーツ観戦はエンターテイメント。「来てよかった。楽しかった」と思わせたら、ファンもポジティブな感想をSMSで宣伝してくれると思います。
プロゴルファー タケ小山氏
この時期に1カ月も試合がないというのは、とても残念なこと。石川遼が久々に優勝をした盛り上がりもこの空白によってきえてしまう。もったいない。でも、この時期、地方では小さな大会が行われている。
私も先日、北海道「道東オープン」に出場しましたが、そうした小さな大会を北海道・東北シリーズとして、それこそ遼が言っているような形で地元プロと一緒にやりながらスケジュールに取り組むというのはどうか。
以前は地方オープンが日本オープンの予選もかねて機能していた。ツアーに空白を作らないために考えてほしいですね。
元プロ野球選手 田中幸雄氏
私が所属してた北海道日本ハムファイターズでは、2軍の鎌ケ谷でも土日になると野球場の外に動物園みたいなものを作って、子供たちに喜んでもらえるサービスをしていました。
もちろん、そうしたことは家族連れで来てもらうことを意識したもので、子供たちが野球自体を観なくてもあきの来ないような演出というのは、ゴルフツアーでも作っていった方がいいと思います。
そうすることで、試合観戦に家族で行きやすくなるわけで、世の中のお父さんたちに喜んでもらえますし、ギャラリーの増加につながると思います。
ゴルフ解説者 佐渡充高氏
ツアーの人気を高めるには、選手が強くなること。そして素晴らしいコースを作ること。さらに、選手を育てる優秀なコーチ、システム、環境が必要ですが、一朝一夕にはいきません。
そこで期待したのが、秋のZOZO選手権。この大会が注目を浴び、話題を集めることで欧州ツアーなど、さらに海外とのタイアップ大会が増えることでツアーが盛り上がると思います。
これからの男子ツアーは海外とのリンクが欠かせません。そもそも海外の選手には日本好きが多い。みんな日本の食事、清潔さ、そしておもてなしに引かれています。
海外ツアー活性化の取り組み(PGAツアーの場合)
1、スタジアムコースの造成
PGAツアーではトーナメントの開催を前提に、「スタジアムコース」をコンセプトにデザインした「TPC」というコースがある。1980年にTPCソーグラスがオープンしたのを皮切りに、現在、その数は30を超える。
2、レギュラーツアーのQT廃止
PGAツアーではQTを廃止し、出場権を得るには、まずは下部ツアーで1年間プレーしなければならない。これは選手の実力を評価するには6日間よりも1年間のほうがいいという判断で、ツアーのレベル向上のための策だ。
3、プレーオフ戦の導入
米国ではメジャーリーグもバスケットボールもアメリカンフットボールもプレーオフがいちばん盛り上がる。それをゴルフにも導入した。さらに下部ツアーとの入れ替え戦も導入し、シーズン終盤にクライマックスを設定した。
子供が憧れるのは世界で活躍する選手
プロ野球引退後に、プロゴルファーに転身し大会にも出場する、“デーブ”こと、大久保博元氏。野球界もゴルフ界も知る大久保氏に男子ツアー再生のアイデアを聞いた。
大久保 まぐれかもしれないけど、QTを通ってセカンドに行ったことで、プロゴルファーになりました。主催者推薦で大会にも出られるようになった。それで実際に大会にも出ているわけだけど、批判的な声が耳に入ってくることもあります。
なんで80を叩くやつが試合に出てるんだって。でも、ちょっと待ってくれと思う。確かに賞金ランとかの資格ではなく、推薦で出場しているんだけど、その推薦って何なんだと考えると、主催者の人からは、「デーブが出ると試合が盛り上がるし、ギャラリーも入る」って。
自分は今でも320ヤードは飛ぶ。それでギャラリーが付いてくれる。つまり、お客さんを呼べなければプロじゃないってこと。それは野球もゴルフも同じだと思う。ゴルフって選手が打つときに音を立てると、プレーを止めてそのお客さんをにらむ人がいる。
そんなことされたら、「もう行かない」ってなると思う。じゃ、無観客でやれってね。でも野球の時は「こらっデーブ!」ってやじられながらプレーしてたから。でもゴルフのそういうところって負の遺産だと思う。
選手も先輩がやるのを見れば後輩もやる。現役の野球選手だった時代に学んだことだけど、球場ではなくゴルフ場でサインを頼まれたらどうするか。そこでサインをすれば、その人が家に帰って話をすると5人家族なら4人に広まる。
つまり、倍々ゲームのように広まるってこと。この話の課題は、「巨人軍は紳士たれ」だったんだけど(笑)。
あと今のファンは「世界でどの程度なんだ?」ということに敏感だと思う。国内で結果を出していても世界に出たら予選落ちじゃ、評価してもらえない。それは野球も同じ。
メジャーでダルビッシュとか年棒20億円でしょ。でも、日本のプロゴルファーは日本で上位にいるとそのポジションで満足している人が多いと思う。でも子供が憧れるのは、野球ではもうメジャーリーガーになっている。
トップの選手たちが世界でどれだけ活躍できるかが、競技人口の未来を占う上では大事だと思う。ゴルフもそう。世界で活躍しないと子供が憧れる選手にはなれない。そこを目指してほしいですね。
海外ツアー活性化の取り組み(欧州ツアーの場合)
1、アジアなど欧州以外で開催
欧州ツアーでは、トーナメントの開催地を欧州だけに限定せず、アジアやアフリカ、オセアニアなど、米国を除く世界各地で開催している。最終戦もドバイで開催されており、欧州というよりも「ワールドツアー」といえるほど、世界へ進出している。
2、新しいフォーマットの開発
キース・ペリーが会長に就任して以降、様々な改革を進める欧州ツアー。6ホールの国別対抗ダブルスの大会を開催するなど、新しい競技フォーマットを開発し積極的に採用。さらに若者の取り込みにも熱心で、選手の登場曲を流したり、SNSも活用している。
読者に聞いた男子ツアー再生のためのアイデア
1位 男子プロの態度の改善
2位 ネット中継や弾道表示などトーナメント中継の改善
3位 女子ツアーとの共同開催
4位 サイン会やレッスン会などファンサービスの充実
5位 団体戦やダブルスなど協議方式の多様化
週刊GD2019年8月13日号より
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