ツアー本格参戦1年目からいきなり優勝を遂げた稲見萌寧。パワーフェードを操るそのスウィングに、プロコーチ・井上透が迫る。

稲見萌寧
1999年7月生まれ。166cm、58kg。東京都出身。昨年のプロテストに合格すると、今季前半から頭角を現し、センチュリー21レディスにてツアー初優勝を挙げる。

頭が動かないから再現性が高まる

バックスウィングにおいて特徴的なのは、右への移動量が小さいところです。骨盤は右に移動しても、頭はアドレスの位置からほとんど動いていません。

また、バックスウィングの早い段階で手首のコッキング動作を入れているところにも注目してください。このように手首をコッキングさせると、体を大きく動かすことなくバックスウィングすることができます。つまり、それだけ左右の移動量が少ない動きがしやすくなるのです。

この頭(軸)の左右動の少なさが、彼女のショット再現力を高めているのですが、これに対して、骨盤の移動量はかなり大きいことがわかります。

ダウンスウィングからインパクトにかけて両脚が伸び切っているのは、左脚の伸展によって、骨盤の回転スピードをアップさせた結果。これらの要素によって、飛距離と方向性の両立が図られているのです。

左脚を踏んで伸ばして骨盤を高速回転させる。強いフェードの秘密

画像: パーオン率は78.6232%でツアー1位(9月5日時点)

パーオン率は78.6232%でツアー1位(9月5日時点)

ダウンからインパクトにかけて左脚を伸展させ、地面反力を利用してスピードに変える。これは、近年ツアーで流行しているフットワークですが、彼女の場合、その力をタテ方向(上)に使うのではなく、骨盤の回転方向(後ろ)に使っているのがわかります。

ダウンスウィングでは、骨盤を左へスライドさせる動きはほとんど見られず、左のお尻を後方(背
中側)に引くようにして、ダウンに入った瞬間、骨盤を素早く回転させているのです。

また、ダウンスウィングのクラブの軌道を見ると、比較的高いポジションからクラブを下ろしていることがわかります。この(アップライトな)ダウン軌道と、左サイドの「さばき」は、フェードを打つための意識の表れと言えるでしょう。

稲見プロは、元々ドローボールが持ち球でした。これをフェードに修正していくなかで、このような動作が定着してきたのだと思われます。ゴルフスウィングは天秤のようなもの。飛距離を武器にする選手は天秤が飛距離に傾き、方向性を重視する選手は天秤が方向性に傾きます。

しかし、どちらかに大きく傾けば、ツアーで結果を出すことはできません。その点において、稲見選手は飛距離と方向性のバランスが非常に高いプレーヤーだと、私は感じます。そのバランスの高さが彼女の魅力であり、高いパーオン率を支えているのではないでしょうか。

【解説】井上透
いのうえとおる。プロコーチ。東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩、川岸史果らのコーチを務める

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週刊GD2019年9月17日号より

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