渋野日向子の強さを表すときに盛んに使われるのが「バウンスバック」という言葉。メンタルの強さを表すデータとしてよく使われるが、これが渋野の強さの秘密だという。アマチュアにとってもこのバウンスバック力を高めることがスコアメークに欠かせない。
画像: 【解説】二見悠嗣プロ 上智大学で心理学を学び、卒業後の23歳からゴルフを始めて脱サラしPGAティーチングプロ資格を取得した異色プロ。メンタル面を重視したコーチングを得意とする

【解説】二見悠嗣プロ
上智大学で心理学を学び、卒業後の23歳からゴルフを始めて脱サラしPGAティーチングプロ資格を取得した異色プロ。メンタル面を重視したコーチングを得意とする

バウンスバック力とは
ミスした後の切り替えがすぐにできるメンタルの強さを表すデータ!

バウンスバック力の必須項目は?

渋野日向子が「スマイリング・シンデレラ」として、世界中に旋風を巻き起こした全英女子オープンの中継などで度々登場したのが「バウンスバック」というフレーズ。

ツアースタッツのひとつで、「ボギー以上を叩いた次のホールをバーディ以下で上がる確率」のデータだ。

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このデータは、切り替えの早さ、つまり、メンタルの強さを表す指標として用いられることが多い。

熱心なゴルフファンであれば、タイガー・ウッズの全盛期によく耳にしたことを覚えているはずだ。ボギーを打っても、すぐにバーディを取り返してくるアグレッシブなタイガーのプレースタイルとメンタルの強さの代名詞として、このバウンスバックという言葉が使われていた。

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実際、全米オープン、全英オープン、全米プロとメジャー3連勝(翌年のマスターズも含めると4連勝)を飾り、タイガーのピークと言われる2000年のデータを見ると、このバウンスバック率でタイガーは驚異的な36%超という数値で1位になっている。

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歴代のバウンスバック1位を振り返ってみても、トッププロの名前がズラリと並ぶ。D・デュバル、J・デーリー、M・ミケルソン、L・ドナルドから最近では、J・デイ、B・ケプカ、D・ジョンソンと、メジャーチャンプと世界ランク1位に輝いた強者ばかり。

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これを見れば、バウンスバックは強くなるためには必須の項目であることがわかるはずだ。

本当のバウンスバック力とは

渋野やタイガーなど、トッププロの強さの代名詞とも言えるバウンスバック力。これを高めるにはどうすればいいのか。

二見 アマチュアの視点で考えれば、ミスした後の切り替えができているか、ということだと思います。まずは、過去のスコアカードを振り返って、ダボやトリを打った直後のホールの自分のスコアを確認してみましょう。腕前にもよりますが、ダボやトリを打った直後にボギー以内で抑えられていれば、それほどミスを引きずってはいないと考えていいと思います。でも大叩きが続いていることが多いのであれば、ミスを引きずっている、つまりバウンスバック力は低いということになります。

ではミスを引きずる傾向がある人は、どうすればいいのか。

二見 気持ちを切り替えるためのいちばん簡単な方法は、『切り替えスイッチ』を作ることです。ミスした後、大叩きをした後に、たとえばドリンクを飲むという決め事を作る。これは、アンカリングという方法で、多くのプロが取り入れている手法です。

【スイッチを作ろう】ラウンド中のお菓子は切り替えに有効だ!
気持ちを切り替えるには、切り替えスイッチを作ることが有効と二見プロは言う。「ミスした後はドリンクを飲む、あるいはグローブを外すという決め事を作ることが大事。渋野選手のようにお菓子を食べるというのも有効です」

画像1: 本当のバウンスバック力とは
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渋野がラウンド中にお菓子を食べるのが話題になったが、これも切り替えスイッチとしては、とても有効なこと、と二見プロ。このアンカリングは、ミスした後に気持ち切り替えるためには有効な方法だが、さらにバウンスバック力を高めるには、ミスする前からの取り組みが必要と二見プロは言う。

二見 ミスを引きずる、気持ちの切り替えができないというのは、ミスを受け入れられないことが原因です。つまり、受け入れられるミスであれば引きずることはない。では、受け入れられるミスとはどういうことかというと、決断した上でのミス、つまり戦略に基づいたミスということです。

バウンスバック力を高めるためには決断=戦略が必要と二見プロ。

二見 たとえば右サイドに池があるホールで、グリーンの左に外したとします。なんとなく打った人は、引っかけた、あるいは池が怖くて逃げちゃったということになります。でも『池に入るリスクを回避するためにグリーンの左サイドを狙う』という戦略を立てて打った人は、グリーンを外したとしても、池を回避する目的は達成しているので、そのショットは成功と言えます。

PDCAがあればミスを引きずらない!
Plan(戦略)「池を避けて左サイドを狙う」
Do(分析)「グリーンの左に外した」
Check(対応)「池を避けたから想定内」
Action(行動)「次のショットに集中しよう」

二見 これなら納得ずくですから結果を受け入れられます。ミスと思うか、成功と考えるか、これは本人次第。ラベリングするのはプレーヤー自身です。ビジネスではPDCAが大事と言われますが、ゴルフも同じです。戦略を持ってプレーしていれば、たとえスコアを落としても結果を受け入れられる。

【バウンスバック力の秘密】実はタイガーはマネジメントの鬼!

画像: タイガーは事前に戦略を立ててコースマネジメントを徹底することでも有名。2000年の全英オープンでは4日間、徹底してバンカーを避けてセントアンドリュースを攻略。2位に8打差をつける圧勝でキャリアグランドスラムを達成した

タイガーは事前に戦略を立ててコースマネジメントを徹底することでも有名。2000年の全英オープンでは4日間、徹底してバンカーを避けてセントアンドリュースを攻略。2位に8打差をつける圧勝でキャリアグランドスラムを達成した

二見 バウンスバック力とはスコアを取り返す力ではありません。取り返そうということ自体が過去を引きずっていることになりますし、過去は決して取り返せません。

二見 戦略もなく、ナイスショットを目標にラウンドするのでは練習場で打っているのと同じ。いかに戦略を持ってプレーするか。これが本当のバウンスバック力です。

逆バウンスバックに注意

戦略を立ててプレーすることがバウンスバック力の源ということだが…。

二見 戦略を立てるためには、自分の能力を冷静に判断することが必要です。たとえば、200ヤード先のグリーンを狙ってベタピンにつけようという戦略を立てる人はいないはず。自分の力量を冷静に判断した上で、できることをやるのがマネジメントです。

二見 つまり、戦略を立てることによって、自分に足りないところも見えてくる。戦略が実行できなかった場合も、成功しなかった原因が課題として浮かび上がってきます。さらに、クラブセッティングを見直すきっかけになることもあるでしょう。戦略を考えるだけで多くのメリットがあり、それが上達への道となるのです。

加えて、アマチュアは“逆バウンスバック”にも注意すべきと二見プロは言う。

二見 逆バウンスバックとは、バーディを獲った次のホールで大叩きをすることでです。せっかく滅多にないバーディを獲ったのに、その直後にスコアを崩してしまった経験や、お仲間を見たことがある人は多いと思います。

【逆バウンスバックの原因】バーディの後の大叩きはいつもと違う行動で起きる
滅多にないバーディを獲ると、嬉しい反面、慣れていない状況で落ち着かなくなる。人間の心理として、そういう状況ではいつもと違うことをやろうとしてしまう。それが逆バウンスバックの原因。いつもどおりプレーを心掛けよう。

二見 これは、人間の心理として、普段なかなかないことが起こると嬉しい反面、その状況に慣れていないことで落ち着かなくなるからです。そんなときはその違和感を失くすため、普段とは違ったことをあえてやってしまうことが多い。たとえば、急にティショットで普段は使わない3Wを握ったりしてしまう。

画像: ショット前と同様に、ショット後のルーティンも取り入れてみよう。いいショットも悪いショットもルーティンによって、その場ですべて「終える」ことが切り替えには必要だ

ショット前と同様に、ショット後のルーティンも取り入れてみよう。いいショットも悪いショットもルーティンによって、その場ですべて「終える」ことが切り替えには必要だ

二見 普段やっていないことをやろうとすれば、ミスする確率が上がるのは明らかです。調子が悪いときは何かを変える必要がありますが、調子がいいときは変えないのが鉄則。でも多くの人がその逆で、調子が悪いときには何も変えず、調子がいいときに限って変えようとしてしますので注意しましょう。バーディが獲れたのは調子がいい証拠です。自分を信じて、これまでどおりのプレーを続けることを心掛けましょう。

PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa

週刊GD2019年10月15日号より

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