コンパクトなトップは先を使っていない証拠
非常にクセの少ない、教科書のようなスウィングです。近年は、重心の上下動を使い、地面反力を利用して飛距離を得る動きが注目されていますが、古江選手は上下動を抑えて下半身を静かに使い、捻転差を大きくすることでエネルギーを作り出すタイプと言えるでしょう。
トップで背中が目標を向くほど大きく捻転しているのに、シャフトが水平よりもコンパクトに収まっているところに注目してください。これは手先の動きを一切排除し、体の捻転でバックスウィングしている証拠です。
女子選手の場合、肩甲骨などの可動域が大きいためにオーバースウィングになりやすいのですが、古江選手はそのゆるみを取ることで、大きな捻転差を実現し、パワーを生み出しているのです。
さらに、スウィング中の両ひざの間隔がほとんど変わらず、手元とクラブが常に体の正面に維持されているので、再現性はいかにも高そうです。調子に左右されず、年間を通して安定した成績を残せそうな印象を受けます。
前傾角度が崩れないだから曲がらない
身長が低く、スパインアングル(前傾角度)の浅い選手ほど、ダウンでは体が起き上がりやすく、クラブが寝て下りる傾向があります。古江選手のように、体の大きくないプレーヤーがスパインアングルを維持するのは、決してやさしくないのです。
【スパインアングルとは】
脊椎(spine)が傾いた角度(angle)のこと。ゴルフスウィングの場合は、前傾角度を指す。
しかし、彼女の場合、スパインアングルが見事に保たれ、ダウンに入った瞬間、クラブがプレーンに乗っているのがわかります。この動きを可能にしているのが、体の裏側の筋肉(背中やお尻など)を主体にしたスウィングと、右手首の動きです。
スパインアングルを保つためには、トップからインパクトまで、右手首のヒンジ角(手首を甲側に折った角度)を変えないことが絶対条件。古江選手は、これができているから、体が起き上がらないのです。
これによって、クラブはスウィングプレーンに乗りやすくなります。プレ・インパクト(クラブが腰の高さまで下りてきたポジション)で、右ひじとシャフトが重なっているのは、オンプレーンの証拠。
この時点でスクェアインパクトが保証されていると言っても過言ではありません。インパクトの静かさは秀逸で、左腕とクラブが1本にラインナップしたままフォローへ抜けていくところは男子プロを思わせます。
アマチュア優勝もフロックではなく、技術的にも裏付けされた勝利だったと言えるでしょう。
【解説】中井学
なかいがく。プロコーチ。米国留学中から、独自に理論を構築。現在は、自らツアーに参戦しつつ、多くのプロ、アマチュアを指導する。
PHOTO/Shinji Osawa、 Hiroyuki Okazawa
週刊GD12月3日号より
古江選手の出身地「兵庫県」のゴルフツアーはゴルフダイジェストツアーセンターで
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