ロフト25度の7番アイアンが登場するなど、アイアンのストロングロフト化が止まらない。果たしてストロングロフト化はアイアンに必要な性能なのか? いくらなんでもやりすぎでは? クラブに造詣の深い3人の有識者に聞いた!

ロフト25度は昔の4番アイアンなみ
今では同じ7番でも10度も差がある

同伴者が同じ距離を何番で打ったのか気になるのはゴルファーの性だが、2007年あたりに「激飛びアイアン」が登場しはじめて以降、単純に比較することはできなくなった。低重心化でボールが上がりやすい激飛びアイアンと、昔ながらマッスルバックでは、同じ7番でもロフトはまったく違うためだ。

画像: ロフト25度は昔の4番アイアンなみ 今では同じ7番でも10度も差がある

左は激飛びアイアンのパイオニアであり、飛び系アイアンのブームの火付け役でもある「egg PC」、右はツアープロのフィードバックを忠実に反映した軟鉄鍛造のマッスルバック「620MB」。現行モデルのアイアンは、同じ7番でも10度以上の差があるのが現実。現行モデルでは7番で30度前後のものが多い。

存在感を増し続けるストロングロフトの飛び系・超飛び系アイアンだが…。

「賛成」「心配」「選び方次第」3人の意見はわかれた

ストロングロフトに物申す
松尾好員(クラブデザイナー)

良い面と悪い面がある派
永井延宏プロ

ストログロフト大歓迎
鹿又芳典

画像: クラブデザイナーの松尾好員氏

クラブデザイナーの松尾好員氏

松尾氏はストロング化が今後も止まらない可能性を示唆しつつも、そのメリットには危険もはらんでいると言う。

「2000年代前半にキャロウェイのR・ヘルムステッター氏に『将来日本のアイアンは7番からになるかもしれない』と私から話したことを思い出します。彼も『そうかもね』と言っていましたが現実になりそうですね」(松尾)

「現在、PGAツアーのトップ選手が使うアイアンで7番が33度くらい。90年代から1番手立っている計算になります。さらにパワーアップもしているので7番で200ヤードくらいのキャリーがあるようです。1番手で15ヤードの飛距離差と考えるとPWで155ヤード。それ以下はウェッジのコントロールショットになります」

「だからトッププロに関してはこれ以上ロフトを立てる必要性はないと考えています。アマチュアにおいても深いラフなどライが悪い状況ではやっぱりダウンブローで打つ必要が出てくる。つまりスコアアップを望むならやはりハイロフトでダウンブローはベースになきゃいけないと思います」

画像: ストロングロフト化によって、ロフト40度台のウェッジが売れてきている

ストロングロフト化によって、ロフト40度台のウェッジが売れてきている

鹿又氏は、ストロングロフトのアイアンはアマチュアにとってこんな良いモノはないと言う。

「単純に誰にでもストロングロフトがいいということではなく、選択肢が広がったことが大きなメリットなんです」(鹿又)

「昔はマッスルバック、プロキャビ、チタンフェースの3カテゴリーだったのが、軟鉄のやさしいキャビティ、複合素材にポケットキャビティが加わり、アイアンは多様化してきました」

「今は、ポケットキャビティの中にも中空やチタンのポケットキャビティが増えて、6つから7つのカテゴリーがあります。だからストロングロフトがいいのか悪いのかの話ではなく、選択肢が広がったととらえるべきでしょう」

鹿又氏はカテゴリーごとのターゲット層は当然異なるため、ストロングロフトだからいいというわけではないとも加えた。

画像: 永井延宏プロ(左)、クラブフィッターの鹿又芳典氏

永井延宏プロ(左)、クラブフィッターの鹿又芳典氏

すくい打ちでも高弾道が打てる

ロフトが立っているという認識を深めて欲しいという点では永井プロも同意見だ。

「松尾さんの言うとおりライの悪い状況でソールの広い低重心のアイアンだと難しい面もあります。ゆえに今後はストロングロフト用のスウィングというものを考案する必要があるかもしれません。また、アイアンを打つ際に最も重要なのがインパクトロフトです」(永井)

「プロの7番のインパクトロフトは平均で20度くらい。ロフトが33度だったら13度も傾けてダウンブローに打っているわけです。13度も傾けられないアマチュアにとってロフトが立ったクラブで、適正なインパクトロフトを作るのは理にかなっていると言えます」

「そもそもアマチュアがアイアン、特にロングアイアンが打てない要因はヘッドスピード不足にあります。技術力以前にヘッドスピードの問題があることの認識は必要ですね」

ストロングロフトだから飛ぶわけではない

松尾氏もロフトが立っていることの認識は重要で、しかもアマチュアが効果を得られるロフトには限界があると話す。

「ヘッドスピードが40m/s前後のゴルファーが、最大キャリーを出せるロフトは29度が限度です。これは以前行った実験結果。例えばバンカー越えのセカンドショットが残って、超えるか不安で1番手上の25度のアイアンを持っても、よほどのナイスショットをしない限りバンカーにつかまる可能性が高いということです」(松尾)

永井プロもストロングロフトだからやさしくなるわけではなく、長さがあるぶん難度もそれなりに高くなると話している。だからこそ鹿又氏が言うように、いろいろなカテゴリーのアイアンから自分に必要なタイプを見極める必要がある。

画像: 「激飛び系が難しいという人の多くの原因はシャフトの長さです」(永井)

「激飛び系が難しいという人の多くの原因はシャフトの長さです」(永井)

永井プロはさらに付け加えた。

「例えばパーオン率3割以下くらいの人なら飛ぶアイアンを使ったほうがゲームが組み立てやすくなる。それを考えればストロングロフトがふさわしい人もいるし、そうでない人もいるでしょう。今後は膨大な種類の中から自分に合ったアイアンを見つけ出すのが楽しくなるはずです」

「ゴルフ場の身体検査」はこちら↓

画像1: golfdigest-play.jp
golfdigest-play.jp

識者10人に聞いた未来のアイアンはどうなる?

ストロングロフト化がまだまだ進みそうな雰囲気もありながら、有識者たちはどのような展望を持っているのだろうか?

画像: 永井延宏(プロゴルファー)

永井延宏(プロゴルファー)

いまはドライバーが一番簡単なクラブになった。だからドライバーをベースにスウィングを作ることが一般的になり、アイアンもドライバーの形状に近づいていくかもしれません

画像: 増田雄二(クラブデザイナー)

増田雄二(クラブデザイナー)

「ゴルファーを育てるアイアン」と「ゴルファーが楽しめるアイアン」両方がいまは大事。なので今後は操作性に重きを置いたアイアンも加速していくと思います

画像: 鹿又芳典(クラブフィッター)

鹿又芳典(クラブフィッター)

アイアンのロフトはこれからも立っていくと思う。すると激飛び系は7番から、なんてこともある。そうなればアイアンは単品売り、ウェッジはセット販売という逆転現象が起きても不思議ではない

画像: 和田博(トップアマ)

和田博(トップアマ)

アイアンは飛距離ではなく球が落ちてどう転がるかが大事。キャリーの階段が重要なのでストロングロフトは必要な人だけが使うアイアンで、今後は淘汰される可能性も

画像: 松吉宗之(クラブデザイナー)

松吉宗之(クラブデザイナー)

ロフト表記のほうがシンプルだし、ゴルファーにはわかりやすいので番手という概念がなくなるかのしれません。そもそも大昔は番手というのがなかったわけだから。ある意味原点回帰

画像: 横田英治(プロゴルファー)

横田英治(プロゴルファー)

否定派でしたが、ここまでストロングロフトが増えて、しかも高く上がって止まるとなるとそれを踏まえてレッスンする必要がある。さすがにこれ以上ロフトは立ってこないはず

画像: 松尾好員(クラブデザイナー)

松尾好員(クラブデザイナー)

ひと昔前は3番や4番からのセット売りだったのが、今後は7番アイアンからのセットがスタンダードになる可能性もある。ただロフトの効果を得られる限界点もあるので、これ以上は……

画像: 水上晃男(トップアマ)

水上晃男(トップアマ)

自分も年齢による飛距離のダウンで飛ぶヘッドとシャフトをカーボンに替えました。見た目の形状の好みも重要だから、形のバリエーションが増えそう

画像: 高梨祥明(ゴルフライター)

高梨祥明(ゴルフライター)

これ以上ロフトは立っていかないと思う。ロフトやヘッド形状は頭打ちで、これからは振りやすいアイアンにシフトしていくような気がします

みなさんはどうお考えでしょうか。なにはともあれアイアンの未来から目が離せませんね。

月刊GD2019年12月号より

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