2019年11月に発表された11代目ゼクシオ。初代発表から20年、つねに市場をリードし続けてきたヒット作の開発者を直撃して、開発の裏側とヒット作ならではの重圧について話を聞いた。
画像: (左)企画担当の井口甲太郎さん (右)開発担当の中村拓尊さん

(左)企画担当の井口甲太郎さん (右)開発担当の中村拓尊さん

(左)井口甲太郎さん 企画担当
住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部ゴルフビジネス部商品企画グループ課長。1992年に入社以来、一貫してゴルフ事業のマーケティングに従事。広告宣伝担当として初代ゼクシオに携わり、2002年からは米国、2012年からは中国に各3年間駐在。11代目ゼクシオにはゴルフクラブの商品企画統括/北米の販売企画という立場で携わる

(右)中村拓尊さん開発担当
住友ゴム工業(株)スポーツ事業本部商品開発部クラブ技術グループ課長。2006年にSRIスポーツ(当時)入社。ゴルフボールの開発を経て、ゼクシオブランドのフェアウェイウッド、シャフトの開発に従事。2017年秋より同部技術企画グループにて11代目ゼクシオの開発統括を担当。今年7月から現職となりクラブに関する新技術の開発を手掛ける

「若い世代にもゼクシオを使ってほしかったので2つのモデルを用意した」

── 11代目は、ゼクシオ発売から20周年の記念モデルですが、開発にあたって最初にどんなことを考えましたか?

井口さん(以下、井口) ゼクシオをもっと好きになってもらいたい。そして、これまで使ったことがない人にも手に取ってもらいたい。その思いが強かったですね。

中村さん(以下、中村) ヒット商品なので愛用者も増えていますから、守るべきものがある。一方でニーズは多様になっている。そこが難しいと思いました。

── ヒット商品ということで、たとえばトヨタのクラウンは長い間売れていますが、ユーザーの平均年齢が高くなってしまった。その点でゼクシオはどうですか?

井口 もちろんゼクシオも同じです。発売から20年が経ち、私たちが歳を重ねたように、お客様も歳を重ねてこられた。先ほど、これまで使ったことがない人と言いましたが、若い世代にも使っていただきたいということで、今回2つのモデルを用意したのです。

画像: 11代目ゼクシオは、これまでのモデルの正統後継モデル「イレブン」(写真左)に加えて、より若い世代をターゲットにした「エックス」(写真右)の2モデルをラインアップした

11代目ゼクシオは、これまでのモデルの正統後継モデル「イレブン」(写真左)に加えて、より若い世代をターゲットにした「エックス」(写真右)の2モデルをラインアップした

中村 ゴルフクラブは人が使う道具ですから、求めるものは人それぞれという部分がある。でも多くの人、多くの世代が使えるものにもしたい。その難しい問題の答えが2つのモデルを作るということ。もちろん開発側としては大変でした。

井口 モデルは2つになっても、ものづくりのコンセプトは20年間変わりません。

「1球目からナイスショット」がコンセプト

── 「飛距離」「振りやすさ」「爽快な打球音」ですね。打球音でいうと、初代のゼクシオの心地よさが11代目でも変わらず受け継がれていますね。

中村 ゼクシオには「1球目からナイスショット」というコンセプトもあるのですが、それを感じていただくためにも、打球音は大事だと思っています。さらに心地よい打球音は、より自然な動きに導いてくれるというメリットもある。より飛んで、より振りやすく、よりいい音に、というのは歴代のゼクシオが取り組んできたことで、守るべきものだと思っています。

── さらに今回は「ウェート・プラス・テクノロジー」という新しい要素が加わりました。

中村 もちろん基本コンセプトを進化させることは必要ですが、新しいモデルを作るときには「プラスアルファ」も必要になります。

── 反発係数の上限がルールで設定され、ヘッド体積も上限の460ccに行きついたなかで、毎回プラスアルファを加えるのは大変ですよね。

中村 そうですね。だからいつも次のことで頭がいっぱいです。

井口 その点でいうと、うちはヘッドだけを開発しているわけではないので、シャフトや今回はグリップですが、クラブをトータルで考えられます。

中村 ヘッドだけの場合は、基本的には物理的なアプローチになるのですが、クラブ全体で考えると、人の動きまで考えないといけないわけです。今回はゴルファーのスウィングをモーションキャプチャーし、データを分析した結果、トップのバラつきという点に着目したことが「ウェート・プラス・テクノロジー」のきっかけになりました。

画像: グリップの端にウェートを埋め込むことで、クラブを理想的なトップポジションへ導く「ウェート・プラス・テクノロジー」。自動化された生産工程に組み込むために試行錯誤が重ねられた

グリップの端にウェートを埋め込むことで、クラブを理想的なトップポジションへ導く「ウェート・プラス・テクノロジー」。自動化された生産工程に組み込むために試行錯誤が重ねられた

ゼクシオイレブンをいち早く投入したプロ、青木瀬令奈

中村 それを実現するには今ある技術をどう組み合わせるかということなんですが、これは地道な研究の積み重ねなんですね。

── そうしたアイデアは企画側、開発側、どちらから提案するのですか?

中村 それは両方ですね。こちらから提案する場合もありますし、企画側からアイデアが提示されることもある。もちろん、現在の製法レベルや材料、コスト面などで難しいということもありますが、将来のこともあるのでアイデアはつぶさずに研究は継続します。

中村 工場のレベルも材料も日々進歩しているので、何らかのブレークスルーがあれば実現できる準備はしています。もちろん11代目では今できることは出し切っています。

── ゼクシオは市場をリードしていることで、他メーカーはゼクシオを研究していると思います。これも自動車メーカーの話ですが、他社の車は全部バラして研究していると言います。

井口 それは我々も同じです。

中村 全部バラします。

井口 実際に打って社内アンケートすることもあります。

── もう何年も前ですが、他社のドライバーがクラウンをカーボンにした商品がヒットしたとき、当時のゼクシオの開発の方が「自分たちもゼクシオのクラウンをカーボンにした試作品を作った」と言われていましたが、そうしたことはつねに研究されているのですね。

中村 もちろんです。そこで学ぶこともありますから。

画像: 11代目ゼクシオのデザインスケッチ。「デザインと実際の性能の整合性を煮詰めるのも開発の大切な作業です」(井口)

11代目ゼクシオのデザインスケッチ。「デザインと実際の性能の整合性を煮詰めるのも開発の大切な作業です」(井口)

ゼクシオ「イレブン」と「エックス」の試打レポートはこちら↓

印象は変えないで、モノとしては進化していく。それが信頼されるブランド

── ゼクシオというヒット商品の次期モデルを作ることにプレッシャーはありませんでしたか?

中村 もちろんありました。社内的なプレッシャーも感じますし、世間的なプレッシャーも感じます。でも、お客様にどう喜んでもらおうとか、どう気持ちよく打ってもらおうかというワクワク感のほうが強かったです。

画像: SLEルールには反発係数と特性時間値の2つの期待があるが、その両立を図ることでフェース全体の反発係数を引き上げている。「派手さはないが革新的な技術です」(中村)

SLEルールには反発係数と特性時間値の2つの期待があるが、その両立を図ることでフェース全体の反発係数を引き上げている。「派手さはないが革新的な技術です」(中村)

井口 ヒット商品であれば変えるのも勇気、変えないのも勇気がいるわけです。よくお客様から「ゼクシオは変わらないね」と言われます。もちろんいい意味でおっしゃっていただいた言葉なんですが、20年を振り返ってみると確実に変わっているわけです。

井口 モノとしては着実に進化し変わっているのですが、印象としては変わらない。これが長く愛されるブランドに共通することなのかもしれないなと思っています。

── では最後に今後の目指すところを教えてください。

井口 ゼクシオは今回「ゴルフライフサポートアプリ」を11代目と一緒に発表しましたが、ゼクシオとしてクラブだけではないところもサポートしていきたいと思っています。

ゼクシオエックスのヘッドデータはこちら↓

中村 私は今後のゼクシオに2つのイメージがあり、ひとつは日本刀。名刀というのはほとんど形を変えませんが、そのなかでいかに少しずつ良くしていくかという未来像。もひとつは技術革新によってガラッと変わる未来像。以前は後者のイメージだったのですが、昨今の変わることが正しいという価値観にあらがう自分もいるんです。

週刊GD2019年12月3日号より

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