陳清波プロが68歳のころ、初めてラウンドを一緒にし、ショットの精度、美しさに魅了され、今や陳清波研究の第一人者となった森守洋プロ。通勤GD「ダウン&ブロー」の第5話は森プロによる解説です。

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【語り】森守洋
1995年から4年間、サンディエゴでゴルフを学び、帰国後、陳清波の技術に感銘を受けた。現在、複数のツアープロのコーチを務める。東京ゴルフスタジオ主宰

【陳清波】
昭和6年生まれの88歳。ワールドカップ11回連続、マスターズ6回連続出場など60年代に大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くの陳清波ファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

前回のお話し

僕(森プロ)が、ゴルフ留学先のサンディエゴから帰国した少し後に、陳清波プロ(当時68歳前後)と初めてラウンドをご一緒させて頂きました。

正直、度肝を抜かれました。こんなうまい人いるの? これが世界の技? 糸を引くように飛ぶってこれ? 感動しました。完全にボールを操っていました。陳プロの技術を追求し始めたきっかけでした。

超高速カメラと同じ眼を持つ

他の選手とすり合わせてみることで、自分の見える世界が違ってくると直感し、少しずつ教えて頂きました。(森プロ)

最新データで見えているのと同じことを、著書「近代ゴルフ(1960年発行)」で、すでにおっしゃっています。今は超高速カメラの時代ですが、軌道の最下点より手前で打つことも、きちんと言葉になっていない時代でに、です。

球がくっついているうちにフェースが回りスクェアになって球が飛び出す、という話。恐るべしですね。元巨人・川上哲治さんの「球が止まって見えた」と同次元でしょうか。

Dプレーンという新飛球法則(弾道測定器トラックマンのヨーゲンセン博士によって提唱された弾道分析論。DとはDescribe/説明する)が登場し、陳プロの説は証明されています。

ドローボールは開いたフェースの方向に飛び出すもので、陳プロは球が曲がるそのメカニズムを、丸々説明していました。

画像: 軌道の最下点の前に打つことを実直に伝えようとした

軌道の最下点の前に打つことを実直に伝えようとした

スウィングにはループが必要

インサイドから入れると話すダウンスウィングの初期動作も先進的です。スウィングの実態はループであり、一瞬シャフトが寝る「見えない動き」を、今の世界のトップはみんな取り入れています。(森プロ)

クラブヘッドが高速でスウィングプレーンに乗ってくる物理法則があるのです。その物理運動の中で、ご自身はフェースを閉める感覚でしょうけど、手元をたぐりこむように打っています。(写真下)

多くの選手は無意識にやっていて、不調の選手は、ダイナミックなたぐり込みが消えていることがあります。一方陳プロは、明確に技術として行ってきました。ロフトを立てることにもつながるハンドワークです。

画像: 左への腰のスライドが行われたあとインパクトへ。左肩の上昇や腰のキレも連動して生まれる手の動き、クラブの動きを感じ取ろう

左への腰のスライドが行われたあとインパクトへ。左肩の上昇や腰のキレも連動して生まれる手の動き、クラブの動きを感じ取ろう

スウィング研究オタク的な、このような切り取り方を、陳プロは望まないかもしれません。

しかし、そうしたパーフェクトな連動があって、とても長いインパクトゾーンのなか、フェースで球を真っすぐ押す時間ができている、とみています。

ロフトを立てる技術がある

「クラブフェースをターンさせずに打っている」と話す選手がいます。陳清波プロは、クラブヘッドを回すという。しかし僕には、同じことをやっているように見えます。

どちらにしても、ロフトを立てる動きがはあります。前者の選手は、ダウンスウィング途中のその動きに、すっかり慣れてしまい、インパクトでは何もしていない感覚なのでしょう。

しかし、いったんフェースを立て始めれば、球を打ち抜く際にも実際には行われているんですね。

画像: ロフトを立てる技術がある

上の写真は某ツアープロがドローを打った時のインパクト。クラブフェースがコンタクトすると球はつぶれ、その間にフェースが閉じ、その後、球が飛びます。まさに陳清波プロが言った通り。同時に注目すべきはロフトが立っていく様子。ほとんどのアマチュアが想像していなかったであろうインパクト術。

プロたちのアイアンが飛ぶ理由もここにあります。ボディターンだけで打つといった話は、感覚表現です。翻って陳プロは、その現象を完全に把握し、積極的に行うのだと言葉にしました。ボールコントロールの真実です。

メジャーで何勝もしているジョーダン・スピースは、左ひじの抜きに目を奪われがちですが、フェース使いは陳プロのメカニズムとそっくりだと見てます。

むしろ、左ひじを曲げることで、たぐり込むようなハンドワークを行いやすいから、ああなったのかもしれません。怪物と化したケプカも、ロフトを立てる動きが顕著。速くて見えませんけどね(笑)。

スクェアグリップの“掌屈”

「そんな感覚はない」と陳プロがおっしゃったら、ごめんなさい(笑)ですが、ぼくはシャフトを少しだけ回すのだと思っています。スクェアグリップで行うと、体の正面からインパクト姿勢を見た時、左手首の逆くの字に出っ張って見えます。

我々の世界では“掌屈”といいますが、クラブの重みでテンションがかかるほど、はっきりと出てきます。陳プロが表現した、ヘッドを回す、フェースを立てる、ハンドファーストにとらえる、などが集まると、左手甲はこんもりと盛り上がり、右手首にはしわが出ます。

世界の選手は、そうやって打っています。陳プロの時代と、ゴルフの技術は何ら変わりません。僕らは今、かなり精度の高い映像を手にし、選手とコーチの間でもコミュニケーションがとりやすくなっています。

しかし、陳プロは、自分の感覚を見つめて、実直に言葉に変えてきた。語れる武術家の凄みを感じます。

画像: スクェアグリップの“掌屈”

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月刊GD2020年1月号より

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