冬のアプローチ、エントリークラブはこの4本
「転がしといえば僕」
転がしといえばPWや9Iというのが定番。普通に打ってもランが出てくれる
「低く打ち出して転がしてね」
アプローチは“AW1本派”という人は割と多く、転がすときもAWで低めに打っていく
「意外と役に立ちますよ」
UTを使う人はあまり見ないけど、実はチッパーのように打てることからエントリー
「カラーからなら私の出番ね」
とにかくアプローチが苦手という人は、どんな場所からでもパターで転がしてくる
どのクラブが最も簡単に寄せられるのか、バンカー越え以外のグリーン周りの“よくある状況”5か所で4本のクラブによる“転がし5番勝負”を行った。
【検証方法】各箇所から4本のクラブで各3球テスト
グリーン周りでよく遭遇する状況を5箇所選び、プロに4本のクラブで3球ずつ打ってもらった。プロだからどのクラブも寄るが、「アマチュアにとって簡単なのは」という視点で勝敗を判断してもらった。
【勝負①】ピンまで12㍎の花道
まずは王道の花道から。パターはかなり強く打たないといけないし、グリーンに乗るまでの芝の影響が読めないから難しくピッタリとは寄らなかった。9Iだとグリーン手前に2クッションくらいさせる必要があり、どうキックするかをイメージできれば寄る状況。
プロは2球目にピッタリ寄った。AWならグリーンに落として転がせるから、距離感は合いやすくプロは難なく寄せていた。
UTの勝ち!
プロなら迷わずAWを選択する状況だけど、アマはザックリやトップというリスクがある。9Iはグリーン手前のクッションで球の勢いが殺される。UTはしっかり転がって寄った。
【勝負②】ピンまで45㍎でカラーの外側
ほとんどグリーンを転がすと考えるとパターを選びたくなるが、45ヤード打つには相当大きく振って打たないといけないため、パターでもミスヒットしやすい。UTなら大きく振らなくても転がる。
UTの勝ち!
【勝負③】カップまで6㍎の下りのカラー
カラーからでもカップまで距離があったり上りのラインで強く打たないといけない場合はUTという選択肢もあるけど、下りならやっぱりパターが無難。UTだとオーバーしてしまう。
パターの勝ち!
【勝負④】ピンまで10㍎上りのラフ
花道の横の少し上りのラフとなるとそもそも転がしという発想がなくウェッジで球を上げようとして失敗する人が多い。UTならラフでもソールが滑って球を拾えるから、花道と同じように転がせ寄せられる。
UTの勝ち!
【勝負⑤】ピンまで7㍎“ピン近”ラフ
ピンが近くてしかも下りとなると、AWしか選択肢はない。チョコンと打ってカラーに落としてトロトロ転がると寄っていく。
AWの勝ち!
誰でもミスなく寄る。5戦3勝でユーティリティに軍配
ただし、アマチュアはザックリやトップのリスクがあるから簡単ではない。そのリスクを負わずに転がせるのがUTで、出球が強くクッションさせてもしっかりと転がるから距離も合わせやすい。終わってみればUTの5戦3勝という結果だった。
反発力の強さで芝の抵抗が小さくなる
── 予想をくつがえして3勝を挙げたUT。その勝因は?
岩崎 まずはUTはソールが広くて芝の上を滑ってくれるので、横から払い打てば打点のミスがないということが大きいですね。プロならAWで打つような場面でも、アマチュアはクリーンヒットできないかもという不安があります。それがなくなるし、UTは振り幅が小さくていいという点も大きなメリットです。
岩崎 パターで打つと相当大きく振らないといけなくて芯を外しそうな場面でも、UTなら小さく振れるから芯で打てるんです。
── 転がしでも芯で打つことが大事ということ?
岩崎 例えばパターでも芯を外せば転がりが悪くなって距離が合わなくなります。芯で打つことが寄せワンに繋がる条件です。
── でもUTでどれくらい転がるのかわからない……。
岩崎 UTはフェースの反発力が高いので、思ったよりも強い球が出ます。出球の勢いを知っておけば、どれくらいの強さで打てば寄るのかイメージできるようになりますよ。それに球が強いからクッションさせてもあまり影響を受けずに転がって、距離が合わせやすいんです。
【UT有利な理由①】フェースが薄いから反発で出球が強くなる
ヘッドの構造上、ほかの3本よりも反発力が高くて強い球が出る。グリーン手前にクッションさせても影響が少ない。
【UT有利な理由②】ほかのクラブより振り幅が小さい
球が強く出るぶん、振り幅は小さくていい。大きく振るとザックリやトップなどのミスヒットのリスクがあるけど、UTはいつも芯で打てる。
【UT有利な理由③】少しキャリーするからライの影響が少ない
例えばカラーの外にあるときにちょっとキャリーしてカラーを越えてくれる。ラフからでもキャリーでラフを飛び越えて転がせる。ライを選ばずに打てる万能クラブなのだ。
【UT有利な理由④】ソールが広く滑るから打点ミスがない
ロフトを立ててきっちり当てないといけないAWと違い、広いソールを横から滑らせて打てばいい。打ち方が簡単というのはアマチュアにとって最大のメリットだ。
UTアプローチ、みんなの疑問Q&A
【Q1】どう構えるの?
【A】グリップエンドがお腹につかないように左に逃がします
【構えのポイント①】シャフトを左に傾けてオープンスタンス
普通に構えるとグリップエンドが服に引っかかって邪魔になる。シャフトを左に傾けてグリップエンドを左側に逃がすようにして、さらにオープンスタンスで少し体を開いて立てば邪魔にならない。
【構えのポイント②】ヒールが少し浮くようにアップライトにする
なるべくアップライトに構えたいから、クラブは極力短く持ってボールの近くに立つ。ヒール側が少し浮くのが正しい構え。グリップは逆オーバーラッピングがおススメ。
【Q2】打ち方は?
【A】パターのつもりでストロークします
アップライトに立つのも逆オーバーラッピングで持つのも、パターのようにストロースするため。両腕と肩の三角形を保ったまま、ショルダーストロークのイメージだ。
【Q3】距離感はどう出す?
【A】出球の勢いを知っておくことが大事
小さい振り幅で打っても予想以上に強く飛び出すから、その勢いを知っておくことが大事。練習場でチョコンと打って体感しておくと、どれくらいの強さで打てば寄るかイメージできる。
【Q4】3Wじゃダメ?
【A】長くてフラットだから難しいです
タイガー・ウッズはときどきグリーン周りから3Wで転がすけど、UTよりもシャフトが長いしフラットだからちょっと難しくなる。UTのほうが簡単に打てる。
クラブ別 転がしカタログ
UTはライを選ばない転がしの万能クラブということはわかったけど、どうしてもUTでは球が強すぎてオーバーしてしまう状況もある。ほかの3本も使って臨機応変に対応することが“転がし名人”への道なのだ。
AWはラフでピンまで下りの状況などで使用。ボールを右足寄りに置いてロフトを立てることが大事。オープンに立って軌道はストレートに振ればスピンはかからず程よく転がってくれる。
9Iはクラグを短く持ってボールに近く立ったら、ヘッドを横から当てればいいから簡単。パターはグリーン上とは違いウェッジを打つようなイメージで右ひじを支点にパチンと打つといいですよ。
パターのグリップではなくオーバーラッピングで持ったほうが強く打ちやすいからおススメです。
各クラブの転がしの基本を覚えておけば、あとは状況の見極めさえ間違わなければ、ほとんどの場所から寄せられるようになりますよ。
【AW】ロフトを立てて打つ
【ポイント】オープンに立ってインサイドアウトに振る
ロフトを立てて打つためにボールは右足寄り。オープンスタンスでインサイドアウトに振ればスピンがかからずに程よく転がってくれる。
【9I】横から払い打ち
【9Iのポイント】なるべくボールに近く立って構える
クラブを長く持ってしまうと難しくなるから、なるべく短くもってボールに近く立つこと。とはノーコックでヘッドを横から当てればいい。
【パター】強くパチンと打つ
【パターのポイント】右ひじを支点にしてコックも使う
パターと思わずにウェッジを打つようなイメージで、右ひじを支点にしてパチンと強く当てること。右わきが開くと強く打てない。
片山晋呉プロはUTの転がしで“寄せワン”量産
アマチュア向けの技かと思いきや、UTの転がしを多用しているのが永久シードの片山晋呉プロだ。
片山 例えば砲台グリーンでピンが手前だと、SWでフワッと上げてカラーに落とすという難易度の高い技が求められます。ギリギリを狙うからキャリーが少し足りないと転がって元の場所に戻ってくることがある。PWで斜面にワンクッションさせる方法もあるけど、これも距離感が難しい。UTなら球が強いから斜面を転がり上がってくれるんです。
T・ハミルトンは全英オープンでUTで寄せて優勝
2004年の全英オープン、E・エルスとのプレーオフを戦っていたT・ハミルトンは、18番ホールのグリーン手前からUTの転がしでパーを取り優勝した。
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構成/Yumiko Shigetomi、PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Kazuo Iwamura
月刊GD2020年2月号より