アマチュアが苦労する状況のひとつが‟風”だ。風に負けない打ち方をしようとする人に対して、湯原は「風に対して小細工するのはやめたほうがいい」と指摘。そして「打ち方よりも3カ所の風を予想する」と言う。

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

前回のお話し↓

追い風、向かい風によって
ボールの回転数は自然に変わる

GD 春一番が吹く季節になりましたね。今回は風について伺います。アマチュアの場合、向かい風や追い風はある程度認識できても、横風は単純にどちらに流されるかしか考えません。しかし、プロはもっと厳密に計算しているという話を聞いたことがありますが、どうでしょうか?

湯原 “打ち出す方向によって風から受ける影響が違う”ということをプロは考えているのです。ボールの回転軸の傾きの違いで、風から受ける影響も違ってきます。右からの風で、左に流されるのを計算して右に打ち出すと、最初はボールの勢いが強いので曲がらずに直進し、最後は球の勢いがなくなって左に流されますが、思っていたほど左に曲がらないということもあります。右からの風に対してスライスで左へ打ち出すと、最初は追い風なのであまり曲がりませんが、右に曲がり始めると向かい風に変わって飛距離が落ちます。

GD 打ち出した直後は、ボールに勢いがあるから風の影響はあまり受けない。球速が落ち始めたときにどんな影響を受けるのかを考えるべきなんですね。

湯原 基本的に、向かい風では飛距離が落ちて、追い風では飛距離が伸びるというのは常識です。もうひとつ頭に入れておいてほしいのは、向かい風と追い風では、ボールの回転に与える影響がまったく違うということです。向かい風のなかを飛んでいくボールの回転は、風によって増幅されて、より回転数が多くなるので、曲がり輻も大きくなります。それに対して、追い風の場合は回転数が減らされて曲がりが小さくなります。

GD アプローチで、向かい風は止まりやすくて追い風は止まりづらいというのは、単に風の抵抗だけではなく、バックスピン量が向かい風では多くなって、追い風では減るからなんですね。

画像: アプローチも風の影響でバックスピン量も変わる

アプローチも風の影響でバックスピン量も変わる

右からの風、フック系は飛距離が伸び
スライス系は飛距離が落ちるが止まりやすい

湯原 そういうことです。もちろん、グリーンの硬さや傾きも考慮しなければなりませんけどね。アプローチでも風が強いときほど、どの方向から、どんな風が吹いているのか判断して、球質と落としどころを考えなければなりません。

GD そうすると、右からの風に対して右に打ち出す、つまりフックとかドローの場合、最初は向かい風の抵抗で左への曲がりが強くなるけれど、左カーブすると追い風になるから、スピン量が減って、どちらかというとストレートに近い飛び方になるということですね。逆にスライスとかフェードを打った場合は、打ち出しはあまり曲がらず、右に曲がりだしたところで曲がり具合が向かい風で増幅されて、より止まりやすくなるんですね。

自分の地点、飛んでいく途中
落とし場所、3地点の風を見る

湯原 風は、強さや方向が一定ではなく、呼吸するように変化します。その予測は大変難しいですが、地形からある程度は読むことができるのです。具体的にいうと、自分のいる場所ボールが飛んでいく途中、最後に落ちる場所(ランディングエリア)の3カ所の風を予想するのです。それを私は“風が見える”と表現しています。

GD もう少し詳しく教えてください。

湯原 簡単な状況で説明しましょう。自分が高台にいて、ランディング場所が低くて林に囲まれている場合。その場では強い風を感じていても、ボールの落ち際は風の影響をあまり受けないと読むことができます。

湯原 山や谷、林があると、風がどう変化するのか予想しやすいですね。風はさまざまな要素で強さも方向も変化します。基本的には高いところから低いところへ向かって吹きます。

湯原 また、日当たりのいい暖かいところへ、日陰の冷たいところから風が流れる現象も起きます。暖かい空気は軽くなって上昇して、そこに冷たい重い空気が流れ込みます。池越えなど、水面に近い空気は湿っていて、上空と比べると重くて抵抗が大きくなります。そういう読みの差が、1㍎、2㍎の勝負で現れてくるのです。

画像: 沖縄の強い海風が吹きつける大京オープン(1992年)でのプレー。「3カ所の風を読むときは、山や谷、林など周りの地形を考慮して、風がどう変化するのかを予想するのです」

沖縄の強い海風が吹きつける大京オープン(1992年)でのプレー。「3カ所の風を読むときは、山や谷、林など周りの地形を考慮して、風がどう変化するのかを予想するのです」

思い切った番手選びが
風のゴルフでは大切

GD 風を読むときに気をつけておくべきことは何ですか?

湯原 メインとなる風の流れを基本にして、それを目の前の地形と合わせて読むことです。上空の風の流れと、自分の位置を確認しておけば、地形による風の変化は比較的把握しやすいから。

GD その風の読み方ですが、経験するしかないのでしょうか?

湯原 経験は必要ですが、気をつけていれば日常生活でも訓練できますよ。風が強い日に街中を歩いていて、大きなビルの前では風が止むのに、ビルとビルの間に入ると強風になるというのは、誰しも経験しているはず。そういう景色とゴルフ場の景色を重ねればいいのです。

画像: 思い切った番手選びが 風のゴルフでは大切

たとえば、手前から奥に向かって風が吹いているなら、正面のビルに当たって風は上下左右に向きを変える。右側の高いビルに当たった風は、左奥へと吹き抜けていく。
「ゴルフは経験が大切。でも、日常生活のなかでも経験を積み重ねることはできるんです」

向かい風は大きな番手で
軽く打つとスピンが減る

GD 風が強いとき、番手選びに何か基準のようなものはあるのでしょうか。

湯原 うーん……、風がめちゃくちゃ強く吹いているときは、勘に頼るだけです(笑)。

湯原 風で何がいちばん難しいかといえば、風が息をするところなのです。風速20㍍が、突然3㍍になったりする。そうなると、風を読んで計算できる範囲を超えてしまうわけで、そんなとき頼れるのは勘だけ。そういう不公平が生まれるのもまた、ゴルフの面白いところでもある。

湯原 イギリスのゴルファーは、風が吹くと喜んでコースへ出かけるそうです。いいスコアを出すことよりも、自然と戦うのが好きなのでしょう。

GD 何だか、サーファーが台風が来ると喜んで海に出るのと似ていますね。風を読み切ってグリーンに乗せるというのは、長いパットのラインを読み切ってカップインさせる達成感と同じような気がします。

湯原 上昇気流を見つけて、それを利用して攻めるということもプ口はやっています。

GD プロのように、横風に乗せるとか、横風とケンカさせるといった攻め方は、アマチュアにはなかなかできません。そうなると、番手を替えるくらいしかありません。

湯原 プロと比べると練習量は圧倒的に少ないですから、できなくて当然ですよ。向かい風で低い球を打ったり、追い風で高い球を打ったりという小細工も止めたほうがいいと思います。

湯原 レッスンで、向かい風ではボールを右に置いて、低く打ち出す指導がありますが、ボールが右にあればヘッドは鋭角に入ってきてスピン量が多くなってしまいます。

画像: 自分の技量に合った番手選びが大事

自分の技量に合った番手選びが大事

GD 向かい風に対してスピン量が多い球を打てば、スピン量が増えて吹き上がってしまいますね。

湯原 ビューンと高く上がって、ポトリと落ちます。当然、考えていた飛距離は出ません。向かい風なのだから、できるだけ回転数の少ない球を打ってコントロールしたいところです。

湯原 そういう時に、簡単なのは“思い切って番手を2つでも3つでも上げる”ことです。どういうわけか多くのアマチュアに、届くギリギリの番手を持ちたがります。たとえば、無風状態なら9Iで届く距離で、強い向かい風が吹いても、8Iにしか上げない人が多い。しかも、それでは届かないかと思って強振して、余計にスピン量を増やしてしまうのです。

湯原 7Iや6Iまで上げて軽く打てば、スピン量も減るし、弾道も低くなります。風の強さによっては5Iでもいいと思います。

GD 大胆に番手選びしてみる、ということですね。

週刊GDより

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