キャロウェイのボール事業を軌道に乗せた男
デイブ・バーテルズ(Dave Bartels)
デイブ・バーテルズ
(Dave Bartels)
カリフォルニア大でエンジニアの勉強後、97年にキャロウェイゴルフ入社。以来ボール担当として活躍。2015年のクロムソフト誕生に関わり、現在はボール開発責任者。アメリカ市場でシェア2番手にまで押し上げた。HC11
もっと初速を上げたい!
その挑戦は軟らかさの脱却から始まった
── 「クロムソフト」はマイナーチェンジ、でも「クロムソフトX」は大幅に変えたそうですが。
デイブ 2017年にツアーモデルとして「X」を出しましたけど、ツアープレーヤーの反応は「評価はするけど実戦投入はしない」というのがほとんどでした。プロたちが求めているのは、実は打感よりも初速。今は計測器があるから、その点は以前よりだいぶシビアなんです。そこで新しい「X」は、どのメーカーよりも速いボール初速が出るということを至上命題にしたんです。
デイブ ブランド名が「クロムソフト」だから、ソフトなフィーリングは「維持しなければいけない」という空気がありましたけど、そのバリアも打ち破って、初速を上げることに成功したんです。
── ソフトな打感のための技術である「デュアルコア」をやめたのもそのためですね。
デイブ そうです。実際に使うプロたちが、ソフトさをそこまで求めていないなら、シングルコアのほうが硬さ(=初速)を出せますからね。その代わり中間層を2層構造にしたり、カバーを15%薄くしたりすることで、初速以外の性能も向上させているんです。特に中間層は、テストでボクたちの事前の予測を上回る性能を発揮することがわかって、とても興奮しているんです。今までのどのボールのときよりも、個人的にはワクワク感が大きいですね。
デュアルコアからシングルコアへ。それは発送の転換だった
内側が軟らかい2層構造のコアをやめ、より硬い単体コアで、ツアーレベルの高初速を実現。「ソフトな打感」に固執しない冒険がそこにはあった
この男抜きでは進化は語れない
プロの意思をつむぐ影の立役者、
ニック・ヨンツ(Nick Yontz)
ニック・ヨンツ
(Nick Yontz)
キャロウェイゴルフに入って3年。ツアープロのフィードバックを開発に伝える重要な役目。前職はナイキでボール開発に携わり、タイガー・ウッズの担当でもあった。HC6
機械では測れない性能差を具現化する
── プロの意見を取り入れて、「クロムソフトX」は硬めの打感で高初速になったと聞きました。
ニック 「X」の2020年モデル開発に向けて、いちばんやり取りを重ねたフィル(ミケルソン)から、どうしてももっと飛距離が欲しい、とにかく飛ばしたいという要望があったんです。
ニック それに応えようとする過程で、シングルコアのプロトタイプがすごく初速が出て、それが市販モデルの原型になりました。実は機械計測だとボールの硬さは、前モデルの「X」とそれほど差があるわけじゃない。でもフィーリングのしっかり感は確かにある。この微妙な差が、プロが使った場合に数値以上の性能の差になるのは間違いないんです。
── 具体的には?
ニック 面白いのは、シングルコアのほうが「フェースに長くくっついている感覚があって、ボールを思い通りにコントロールできる」と、フィルが言っていること。他の選手も同じようなことを言っているんですが、機械計測だとデュアルコアもシングルコアもフェースから離れる時間に差はない。でも、選手が感じるということは、そこに何かがあるということだから、それが何なのか解き明かしていかなきゃいけない。新しい計測方法を試しながら、毎回分析を続けていくしかないんです。そこが次の開発のヒントになります。
── 今回、ディンプルパターンも変更していますね。
ニック そこはザンダー(シャウフェレ)の要望です。芯を微妙に外したときに、球が弱くなるのを抑える効果を狙っています。プロからのフィードバックはどれもすべて貴重なんです。
ミケルソンもお気に入り
正確に構えやすい「トリプル・トラック」
ボールに描き入れる補助線が3本になると、より直線の向きのズレを認識しやすくなるという科学的データがある。それがボールにデザイン化されている。
月刊ゴルフダイジェスト2020年5月号より
歴代 名器のヘッドデータが比較できる、キャロウェイ ドライバー図鑑はこちら↓