夏のグリーンまわりは、逆目のラフに悩まされる。ヘッドがうまく抜けなくて、2度打ちにもなりかねない。そんなときは、「ろうそくの火を消すように振るんです」と言うのは、あの林由郎の孫、林由寿プロだ。果たしてそのやり方とは?
画像: 【解説】林由寿プロ 1973年生まれ、千葉県出身。林由郎を祖父に持つ3代目プロ。ジャンボや青木にも教えた由郎のワザを令和に伝える。年間200回のラウンドレッスンをこなすティーチング界の鉄人

【解説】林由寿プロ
1973年生まれ、千葉県出身。林由郎を祖父に持つ3代目プロ。ジャンボや青木にも教えた由郎のワザを令和に伝える。年間200回のラウンドレッスンをこなすティーチング界の鉄人

グリーンまわりには
逆目の箇所がある

傾斜や太陽の向きだけでなく、プレーヤーの動線や芝刈りの方向などによって、ラフにもカラーにも逆目の箇所ができる。

画像1: グリーンまわりには 逆目の箇所がある

こういうときは、「ろうそくを消すように打つ」のが正解!

画像2: グリーンまわりには 逆目の箇所がある

目玉のバンカーと
同じように打つ

GD 逆目のラフのアプローチって、すぐザックリしちゃいますよね。

 逆目だと、ボールとフェースの間に必ず芝が挟まるので、ヘッドが抜けにくいんです。

GD 場合によっては、2度打ちになってしまうことも……。

 抜けないヘッドをムリに抜こうとするから、ミスになるんです。ここは、林流のあのワザがいちばんですね。

GD それが、ろうそくの火を消す、という打ち方ですか?

 そうです。祖父の林由郎が目玉のバンカーでやっていた、インパクトでヘッドをピタッと止める打ち方です。ピンがすぐ近くで、距離を出したくないときはインパクトしてからヘッドを戻すこともやっていました。

画像: 林由郎が得意としていたショット。インパクトでヘッドをピタッと止めて、目玉のバンカーからピンに寄せてみせた

林由郎が得意としていたショット。インパクトでヘッドをピタッと止めて、目玉のバンカーからピンに寄せてみせた

画像1: 目玉のバンカーと 同じように打つ

GD それ、テレビで観たことあります。でも、どうしてボールを打ち出せるんですか?

 インパクトで手元を止めると、シャフトがしなり戻って、ボールの下にヘッドがスパッと入る。だから、ボールがポーンと上がってくれるんです。

GD なるほど。

 目玉のバンカーの砂の抵抗と逆目のラフの芝の抵抗はだいたい同じくらいなので、バンカーのように“インパクト止め”で打つのが、いちばん安全で確実なんですよ。

画像2: 目玉のバンカーと 同じように打つ
画像: これが林流SW“インパクト止め”

これが林流SW“インパクト止め”

【ポイント】
逆目のラフの抵抗は目玉のバンカーと同じ

「逆目のラフの芝の抵抗は、ハーフ目玉のバンカーの砂の抵抗とほぼ同じと考えてOK。どちらもSWのフェースを少し開いた構えから、“インパクト止め”で打てば、安全確実に脱出できます」(林)

画像3: 目玉のバンカーと 同じように打つ

なぜ“インパクト止め”がいいのか?

逆目のラフにエッジが引っかかってヘッドが抜けない

画像1: なぜ“インパクト止め”がいいのか?

ムリにヘッドを抜こうとするとミスショットになる

画像2: なぜ“インパクト止め”がいいのか?

“インパクト止め”なら、うまく打ち出せる

画像3: なぜ“インパクト止め”がいいのか?

ハンマーで
杭を打ち込む感じ

GD 林流の“インパクト止め”は、ろうそくの火を消す動きなんですね。

 そうです。腕を棒のように固めて振ると、うまく風を起こせませんよね。火に向かってピンポイントに風を送るために、ひじや手首をやわらかく使うところが同じです。あとは、キャンプなどでテントを張るときに地面に杭を打つ、あの感じが似ていますね。ただし、打ち込む方向は横方向。クラブの軌道でいうと、ゆるやかなダウンブローです。

画像1: ハンマーで 杭を打ち込む感じ

GD なるほど。横向きに杭を打つ感じですか。

 手元を止めることで、SWのヘッドがビュン! と走って、杭を打ち込むようにボールを打つわけですが、大切なのは、そのヘッドが走る感覚です。

GD ヘッドが走る感覚は、どうすれば身につきますか。

 この感覚は、実際にラフでボールを打たなくても体感できます。水を入れたペットボトルを振ったり、インパクトバッグを叩いたり、家のパターマットでボールを打っても感じることができますよ。

【ポイント①】
ハンマーで杭を打つ感覚と同じ

「ハンマーで、テントの杭を地面に横向きに打ち込むのと同じ感覚です。このとき、腕と上体から力を抜いて、手首とひじをやわらかく使っているはずです。ハンマーの重さを利用して、杭をトントンと打ち込む、あの感覚です」(林)

画像2: ハンマーで 杭を打ち込む感じ

【ポイント②】
手元を止めるとシャフトがしなり戻る

「インパクトで手元を止めると、シャフトのしなり戻りが起こって、ヘッドは逆に急加速します。シャフトがとても軟らかい練習用のウェッジを振るとわかりますが、イメージはこんな感じです」

画像3: ハンマーで 杭を打ち込む感じ

2つのドリル

【ドリル①】
ペットボトルを左右に振る

「水を半分くらい入れたペットボトルを横にして持ち、左右に振ります。インパクトで止めたとき、中の水が左側にギュッと集まればOK。これが、シャフトがしなり戻って、ヘッドが走る感覚です」

画像: 中の水が左に集まればOK

中の水が左に集まればOK

【ドリル②】
インパクトバッグをSWで叩く

「ハンマーで杭を打つ感覚は、SWでインパクトバッグを叩くことで体感することができます。インパクトに力を集中するように、ひじと手首をやわらかく使うのがコツです」

画像1: 2つのドリル

【おすすめ家練】
パターマットでボールを打つ

「カップに向かってアプローチします。UTから始め、6I、8I、PW、SWの順に打ちます。インパクトをゆるめずに、しっかり打ってちょうどカップに届かせることで、ごく小さい振りで飛ばす感覚を覚えます」

画像2: 2つのドリル

“芝の抵抗”を
素振りで確認

GD 打ち方はイメージできたんですが、距離感はどうやって出せばいいんでしょうか?

 普通は、ピンまでの距離に応じて、どのくらいの強さで打てばいいか、と考えそうですね。

GD そうです、そうです。

 でも、それだと距離感って、出ないんですよ。たとえば、ボールを投げるとき、腕を振るスピードや大きさを決めたりしませんよね。どんな速さで、どこにボールを投げるかをイメージして、そのイメージに体が自然に反応するわけです。アプローチの距離感も同じなんです。あらかじめラフの抵抗を確認しておいて、まずは打ち出すボールの弾道とスピードをイメージして、そのキャリーを出すならこのくらいの強さだな、と振るわけです。

GD 打つ強さではなく、ボールのスピードを考える、と。

 そうです。インパクトでゆるんだり、合わせたりということも起きにくいので、ある程度、ゴルフをやってきた人なら、そのほうが絶対うまくいきます。

【ポイント①】
スウィングの大きさは自然と変わる

「出球のスピードをイメージして、体の反応に応じて距離感を出すと、ピンまでの距離によって自然とバックスウィングの大きさやスウィングスピードは変わります。ただし、インパクト、即フィニッシュなので、どの距離もフィニッシュはほとんど同じです」

ピンまで5㍎

ピンまで10㍎

ピンまで20㍎

ピンまで30㍎

フィニッシュはどの距離も同じなのが分かる

【ポイント②】
体の反応にまかせて振る

「ピンまでの距離とグリーンの傾斜を見て、どれくらいのボールスピードで打ち出せば寄るかをイメージします。すると、体が自然に反応して、そのボールスピードに必要なスウィングの大きさ、強さで振れるはずです。これが距離感です」(林)

画像: ボールのスピードをイメージするんです

ボールのスピードをイメージするんです

【ポイント③】
逆目の抵抗を素振りで確認する

「距離感を出すには、芝の抵抗をあらかじめ素振りで確認しておくことが大切です。逆目のラフは芝を刈り取るイメージ、逆目のカラーならソールを滑らせるイメージを持つといいですよ」

画像1: “芝の抵抗”を 素振りで確認
画像2: “芝の抵抗”を 素振りで確認

誰にでも効果のある
リラックス法

GD 打つときの注意点はありますか。

 “インパクト止め”は、少しアウトに上げて、少しインから下ろすループに振ると、うまく打てます。というか、ひじと手首をやわらかく使うと、ヘッドが遅れて動くため、自然とループ軌道を描くんです。そのため、タテに動かすコックの動きとヨコに動かすヒンジの動きを確認できる“タテタテ・ヨコヨコ素振り”が、成功のためのルーティンなんです。

【ポイント①】
ひじと手首をリラックスさせる

「縦に2回クラブを上げて、地面をトントン。アウトに上げるイメージを確認します。次に、少しだけアウトに上げて、インから下ろすループ素振りを2回、芝をザッザッ。これで準備完了です」

画像1: 誰にでも効果のある リラックス法

【ポイント②】
タテ2回、ヨコ2回でループ軌道を確認

「腕を棒のように固めると、“インパクト止め”は絶対に打てません。腕と上体の力を抜いて、ひじと手首をリラックスさせておく必要があります」(林)

画像: 火を消すように横からブン!

火を消すように横からブン!

PHOTO/Yasuo Masuda

週刊GD9月8日号より

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画像2: 誰にでも効果のある リラックス法

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