ふっくら炊きあがったお米に出汁の効いた味噌汁、おかずは焼き魚といくつかの副菜。朝食を摂らない人もパ ンで済ませる人も、ちょっと早くゴルフ場に着いた時や旅先でふと頭に浮かぶ朝食の王道とは、そんな組み合わせだろう。

ゴルフ場メシ向上委員会は「高くて」「マズい」と何かと不評の多いゴルフ場の「味改革」に役立つヒントを探しながら、誰もが食べて旨いと感じる味覚の標準値を探ります。「旨いの基準」は本家本元、本流の味を提供し続ける伝統店、人気店のメニューを考察し、多くの人に支持される味の秘密に迫るものです

一汁三菜に香の物 米がなければ始まらない

ユネスコの世界遺産にも登録さ れている「和食」の基本と言えば、 お米に汁物、3つのおかずを合わ せた〝一汁三菜〞。米からはエネル ギー源である炭水化物を、味噌汁からは水分や植物性たんぱく質、 アミノ酸やミネラルを補給し、それらで不足している栄養分を三菜で補うという、日本の伝統的 な食生活に対する考え方だ。

「朝食は体や脳にエネルギーを 与え、寝ている間の発汗により失われた水分を補給するだけでなく、 下がった体温を上げることで基礎代謝も高めてくれます。特に動物性脂肪や砂糖、塩分を抑え、ビタ ミンやミネラルを多く含む〝和朝食〞は、栄養バランスが良いだけでなく、腹持ちも良いので、ハーフターンまで体も脳もスタミナ切れ を起こしにくいのも良いですね」とは、管理栄養士の丹羽美智子さん。

和食は栄養学的に優れていることにくわえ、四季の変化があり、 南北に長い国土を持つ日本列島な らではの多様な食材がもたらす料 理の数々は目にも舌にも楽しい。 一説によれば平安時代に端を発したと言われる「お米と一汁一菜の組み合わせ」は、今や世界中に知られる日本の代表的文化とまで言われるに至った。

ニッポンの朝食がいかに受け入れられているか? 地元民のみならず世界中から観光客が集う浅草の老舗定食屋「浅草ときわ食堂」で見てみることにした。

雷門からほど近くにあるこの店 は、明治20年代に隆盛を極めた料亭「常盤花壇」の食堂部門であっ た〝ときわ食堂〞 の暖簾分けとして大正11年に生まれた由緒ある食堂。

「ときわ食堂は東京都指定食堂なので創業当初から『安い価格で提供する』というコンセプトは変わっていません。うちは特に魚に力を入れていますね」とは4代目店主の牧信真さん。

全ての店舗が同じメニューを出すチェーン店ではなく、ひとつのコンセプトのもと、それぞれ特徴を持っている。ちなみに東京都指定食堂は終戦後の食糧難の時代、都民へ安価で栄養価の高い食事を提供することを目的とした組合として、戦後の東京で食の安定に貢献をしたそうだ。

画像: 銀だら定食。生卵をご飯に掛けたらパーフェクト朝食

銀だら定食。生卵をご飯に掛けたらパーフェクト朝食

店内を見渡すと、年代や性別だけでなく国籍もばらばら。器用に箸で骨を取り除くアメリカ人の後ろ では、レンタル着物でドレスアップした日本人の女性観光客が刺身をつまんでいる。あらゆる客層が一様に箸で魚をつついている光景がいかにも浅草らしい。ここのユニークなところが、単品の主菜を何でも定食にできるところ。

450円で副菜二皿とお新香 が付いてくる。足立市場から毎日仕入れるという魚はいずれも「新鮮で値段に合わないほどウマい」と評判だが、中でも一番人気という銀だらの照り焼きを定食にし、 生たまごを追加した。

10分ほどして来た一汁三菜はどれも旨く、米がどんどんなくなる。せっかくの栄養バランスを壊さないよう「お代わり」という言葉を呑み込みながら一気に平らげると、体にエネルギーが 満ちていくのを感じる。やっぱりこれが「ニッポンの朝メシ」だ。

大定番!一番人気「卵がゆ」

画像1: 一汁三菜に香の物 米がなければ始まらない

11時までの限定メニュー。体にやさしい「卵がゆ」は、胃に優しく体が暖まる。副菜が2点とお新香がついて450円という破格値。創業当初から受け継がれる思いが窺い知れる。これに一品追加する常連も多いという。

画像: さば塩焼き定食(480円)

さば塩焼き定食(480円)

世界中から客が訪れる浅草の老舗「ときわ食堂」
お店は人でごった返すメインストリート雷門通り沿いにある。お 昼休みなしの通し営業にもかかわら ず常に客でごった返す。●東京都台東区浅草1-3-3 ●℡03-3847-8845 ●営9:00~22:30 ●水曜定休。東京メトロ浅草駅から徒歩2分

画像2: 一汁三菜に香の物 米がなければ始まらない

月刊GD2019年3月号より

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