「トップは高いほうが重力を使えて飛ぶ」という定説がある。これを信じて高く大きく手を振りかぶった結果、オーバースウィングやシャフトクロス(トップでクラブが目標の右を指す)に嵌まるゴルファーは少なくない。今回、登場のティーチングプロ、伊澤秀憲プロいわく「無理に高くするよりも低いトップのメリットもたくさんあります。小さなトップはいけませんが、低いトップは問題ナシ」と提言する。そういえば、2018年シーズンのPGAツアー王者に輝いたジャスティン・ローズは高いトップから、あえて低いトップに変えていって結果を残したという。低いトップでボールをしっかりとらえるコツ、伊澤プロに聞いてみた。
画像: 【解説/伊澤秀憲プロ】 いざわひでのり。1991年生まれ神奈川県出身。体の仕組みから考えた自然な動きのスウィングを推奨。叔父は伊澤利光プロ

【解説/伊澤秀憲プロ】
いざわひでのり。1991年生まれ神奈川県出身。体の仕組みから考えた自然な動きのスウィングを推奨。叔父は伊澤利光プロ

高いトップから低いトップに変えて大躍進。2018PGAツアー王者 J・ローズのスウィング変遷

画像: 2005年スウィング。 手の位置が頭よりもはるかに高いトップ。平均飛距離294.1Yでツアー51位。フェアウェイキープ率は63.6%でツアー85位

2005年スウィング。手の位置が頭よりもはるかに高いトップ。平均飛距離294.1Yでツアー51位。フェアウェイキープ率は63.6%でツアー85位

画像: 2010年スウィング。 この頃から低いトップに着手していった。4年後の2014年は295.1Yでツアー49位

2010年スウィング。この頃から低いトップに着手していった。4年後の2014年は295.1Yでツアー49位

画像: 2018年スウィング。 平均飛距離303.7Yでツアー32位、フェアウェイキープ率は64.9%で43位。2005年と比較すると飛距離が約10Y伸びたうえに、方向性も向上。世界一にもなった

2018年スウィング。平均飛距離303.7Yでツアー32位、フェアウェイキープ率は64.9%で43位。2005年と比較すると飛距離が約10Y伸びたうえに、方向性も向上。世界一にもなった

【低いトップは大型ヘッドとの相性もいい】
ギアの潮流に詳しい永井信宏プロに聞くと「大型ヘッドになって重心距離が長くなるとトウダウンが起きやすくなる。高いトップだとそれを助長する傾向があるため、低いトップが大型ヘッド向きとも言えます」。J・ローズも大型ヘッドをいち早く味方に付けての躍進とも言えそうだ

低いトップはいいことだらけです! by伊澤プロ

伊澤秀憲プロは、低いトップのメリットを「最短距離でボールを叩けるからです」と集約する。

伊澤 トップを低くするとアドレスから最短距離でクラブを上げることができるのです。パワーロスが起きにくいうえ、トップで力をしっかり溜めることができれば低いトップのほうがミート率が上がります。それはダウンスウィングも同様で、最短距離でクラブを下ろせるからこそ、溜めた力を効率よくボールに伝えることができます。具体的な利点を見ていきましょう。

【メリット①】クラブが手元の近くを通る

画像: 「低いトップは手元が体から離れにくい利点があります」

「低いトップは手元が体から離れにくい利点があります」

伊澤 腕が体から離れにくくなるのでパワーが逃げにくくなります。インパクトでは、体でボールを押し込めるようになるので、飛距離だけでなく方向性アップに繋がります。

【メリット②】インサイドからクラブが入る

伊澤 低いトップは腕と体が一体化して動きやすくクラブは自然とインサイドから入ります。ボールがナチュラルにつかまるので、強く重い球質にもなります。手先でクラブを動かさないから反復性が高く、実戦に強いスウィングだと考えています。

【メリット③】“遊び”がないからヘッド軌道が安定する

伊澤 メリット2とも連動しますが、体とクラブが一体化して動くことで、トップでの「ゆるみ」「遊び」がなくなります。無駄な動きが削ぎ落とされ、クラブの動きが安定します。結果、ミート率がアップし、平均的に飛距離が伸びるのです

画像: 「手を高くあげる分だけ、『遊び』がうまれやすいんです」

「手を高くあげる分だけ、『遊び』がうまれやすいんです」

【メリット④】シャフトのしなり戻りを使いやすい

画像: 「体の正面からクラブが外れにくいため、シャフトのしなり戻りが活かせるようになります」

「体の正面からクラブが外れにくいため、シャフトのしなり戻りが活かせるようになります」

伊澤 クラブがつねに体の正面にある状態でスウィングできるようになるので、振り遅れや手先でヘッドを走らせる動きがなくなります。体の正面からクラブが外れないことで、インパクトでシャフトのしなり戻りが起こり、効率のいいインパクトが実現できます

「低いトップ」と「小さいトップ」は別ものです! by伊澤プロ

── では、パワーの溜まった低いトップの作り方を教えてください。

伊澤 まずは始動です。ヘッドから動かさずに、手元から動かします。すると、その反動で自然にヘッドが動き出して、トップが低く収まります。もっともやってはいけないのが手先で上げること。形だけ低くしても意味がありません。

伊澤 正しい低いトップは「低くても深い」ということ。手先で低い形を作ろうとすると「浅い」トップになります。それを防ぐためにも手元から動かすことが重要になります。

ヘッドではなく手首から動かす。「重いものを動かすイメージです」

画像: 「手元から先に動かすと、反動でクラブヘッドが自然に動き出します」。クラブのソールで地面を擦るぐらい低く長く引くことを意識してみよう。重いものを動かすように手元と下半身から動き出す。軽いものを上げるように手を使うとパワーは溜まらない

「手元から先に動かすと、反動でクラブヘッドが自然に動き出します」。クラブのソールで地面を擦るぐらい低く長く引くことを意識してみよう。重いものを動かすように手元と下半身から動き出す。軽いものを上げるように手を使うとパワーは溜まらない

画像: 「ヘッドを先に動かしても、体は連動してくれません」

「ヘッドを先に動かしても、体は連動してくれません」

伊澤 体を使って上げない限り、トップは低くなりません。そのためには構え方が重要で、下半身を使う意識を持ってください。すると手元から動かしやすくなります。

すねにテンションをかけて立つと、上体の力みが消える

画像: 「つま先に体重をかけることが正解だというのは勘違い。つま先に体重を乗せた時点で、下半身は使えなくなり、力みが出ます。『すね』にテンションをかけて立つとで力みが抜けます」

「つま先に体重をかけることが正解だというのは勘違い。つま先に体重を乗せた時点で、下半身は使えなくなり、力みが出ます。『すね』にテンションをかけて立つとで力みが抜けます」

肩甲骨を「下げて」構える

画像: 「肩甲骨を下げて腕の自由度を上げておくことも大切です」

「肩甲骨を下げて腕の自由度を上げておくことも大切です」

伊澤 腕を強く締めると肩甲骨が上がって、肩の回転が損なわれます。結果、力みが発生し、手でクラブを持ち上げることになりゆるんだトップになります。

スプリットハンドで「ヘッドが前」の意識を強める

トップが低く収まっても、そこからどう動けば「ヘッドがボールまで最短距離」に動くのだろうか? 「ヘッドの動きがさらに良くなる方法があります」とレッスンを続けた。

伊澤 本来、トップが低くなると、その反動でダウンスウィングからシャフトは立って下りてくるのですが、「手が前に出る」とクラブが寝てしまいます。要するに、ボールに当てにいこうとする動きが入ると手が前に出て、クラブは寝やすくなります。

伊澤 そこで大事なのは「ヘッドが前になる」体遣いです。体の回転に対してヘッドはどうしても遅れるものですが、それを遅れさせないようにする。そのためにはスプリットハンドで素振りするのが効果的です。

画像: 「ヘッドが前」のダウンスウィング(左)。「手が前」のダウンスウィング(右)

「ヘッドが前」のダウンスウィング(左)。「手が前」のダウンスウィング(右)

左右の手を離す「スプリット」で振ってみよう

画像: 伊澤プロが薦めるスプリットハンド練習。「ヘッドが先行して動くイメージが湧きます」

伊澤プロが薦めるスプリットハンド練習。「ヘッドが先行して動くイメージが湧きます」

画像: 「ヘッドがつねに体の前にある。体とクラブの関係性を体現できるのがスプリットハンド。体の回転に沿ってヘッドが返っていくのがわかります」。ヘッドが先行すると手が体から離れないため、シャフトが寝ることはない

「ヘッドがつねに体の前にある。体とクラブの関係性を体現できるのがスプリットハンド。体の回転に沿ってヘッドが返っていくのがわかります」。ヘッドが先行すると手が体から離れないため、シャフトが寝ることはない

画像: 「手で当てにいくと、手は前に出ます」

「手で当てにいくと、手は前に出ます」

手で下ろさず、クラブが下りる「間」を生む

伊澤 トップが低い位置に収まると、その「反動」で今度は重力に沿ってクラブヘッドが下りようとします。この「反動」を利用するとヘッドが勝手に先行します。切り返しでは手で打ちにいかず、一瞬我慢して「間」をつくると「反動」が生まれます。

画像: 「切り返しで打ち急いでしまうと反動が使えなくなる。切り返しで我慢して一瞬の『間』を発生させます」

「切り返しで打ち急いでしまうと反動が使えなくなる。切り返しで我慢して一瞬の『間』を発生させます」

「歩きながら打ち」できるかな? 低いトップの点検

「クラブに重みがある以上、低いトップが自然なのは、実は当たり前です。自然な位置に上がっているかを体感するにはステップ打ちがいいですよ」と伊澤プロが続ける。

伊澤 少しボールから離れた位置で歩きながら素振りをして、そのまま打つ練習法です。意識が下半身にいくので上半身はリラックスした状態になります。

伊澤 球に当たらなくてもいいので、歩きながらクラブを振ってみると反動で振ることと、遠心力を感じられるはず。それが実はトップが低くなっている証拠なんです。みなさまもぜひ試してみてください。

伊澤プロのお手本スウィング

画像: 低いトップは「ゆるみにくく、手が低いところを通る。だからミート率が上がるのです」(伊澤)

低いトップは「ゆるみにくく、手が低いところを通る。だからミート率が上がるのです」(伊澤)

PHOTO/Shinji Osawa、TEXT/Masato Ideshima

週刊GD2018年11月6日号より

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