今季のジャンボはプレスインタビューを断り続けてきた。一昨年の日本シリーズ以来、1年9カ月未勝利という極度の不振がジャンボを沈黙させてきたのだが、豪打の復活とともにやってきた貴重な勝利が、ようやくその唇を開かせた。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

ジャンボ尾崎が語る「復活」の裏側

これまでがあまりに悪すぎたので、この大会くらいから、と言いきかせてきたんだが、3日目はショットの内容としてはよくなかった。しかし、よくないなりにミスを最小限にくいとめようと努力したんだ。

今まではどこからでも攻めてたんだが、ピンを狙えない時はアプローチしやすいところへ持っていく。杉原さんのゴルフみたいにね。久しぶりに、こういう考え方になれた。

これは、コースのおかげが50パーセントある。こういう難しいコースだと、自分のゴルフに締まりが出てくる。絶対に手を抜けない。こういう緊張の連続がいいんだ。どんなコースででも100パーセント、自分の力だけで、こういう「我慢のゴルフ」が出来れば本物なんだが。

明日? アンダー(優勝スコア)にしたいけど、「する」とは今は言えない。それよりももう少し手前を歩いている状態なんだから。どうしてもスウィングが気になるんだ。今日もA、B、C、Dといろいろスウィングを使い分けながらやってたんでね。

(3日目、73のベストスコアで通算2オーバーで小林富士夫と並んでトップになった後のインタビューで)

「第二の尾崎」の自覚を持ってやりたい

全体的にドライバーがよくなった。実は、思いあたることがあって、昨日も練習し、今朝も練習して、いいフィーリングがあったんだ。コースでもそうだったね。アウトのティショットほとんど全部満足のいく球だった。自分のミスといえば9番のセカンド、この一発だけだ。(2、4、6番とバーディで1アンダーまでスコアを伸ばした後、9番でフェアウェイ中央から2打でグリーン右の木に当て、ラフからバンカーと渡ってボギー)

誰かが出てくるとは思ったけど羽川(豊)が追ってきているのは10番に行く途中で知った。11、12番とボギーを連発した時が一番苦しかったけれど、13、14番と我慢して15番のバーディ(2打目サンドウェッジで左3メートル)で、一息つけた。16、17番が難しいので大勝負と思ったが、16番はティショットがよくて、なんなくバーディ。17番(パー3)は左に外してボギーにして1打差になったど、最後はロングだしノーOBなのでプレッシャーはなかったね。曲げてもアイアンで出せばいいんだし、ショットがいいから18番のフェアウェイが、こ~んなに広く見えた。

画像: 最終日にジャンボを追い上げ、1打差の2位に入った羽川豊

最終日にジャンボを追い上げ、1打差の2位に入った羽川豊

優勝もうなずけられるショットの内容があったということ。復活の兆しありだね。

ショット復活のポイントはちょっとしたこと。クラブをタテに振るということなんだ。昨日はクラブが(フォローで)立たなかったんだが、今日はできるだけ立てるようにした。朝の練習でもいいフィーリングで打てたし、コースに出てからもずっとよかった。クラブの重みでトーンと打てるんだ。グリップにヘッドの重みを感じられてね。普段なら、最終日となるとガチガチにグリップを握っちゃって、ヘッドの重みが感じられなくものだけど。

タテに振る。簡単なワンポイントだけど、それを自分の理論に結びつけようとしても、今までは、なかなかその答えが出なかったんだ。先週あたりからようやく、その答えが出始めてきたんだ。

ウン、戸田(藤一郎)さんにも教わった。教わったというより、戸田さんのアドバイスを受けて、その内容を自分なりに研究したということだ。プロというのは最終的には自分のものを造らなければいけないんだからね。

それにしても、一生懸命やれた。この気持ちとイコールのコースコンディションだったのが、よかったんだ。(シビアなコースとの)根くらべに勝った。やり通したということだね。

1年9カ月ぶりの勝利だけど、長かったなんてことはない。一生のうちの1年9カ月なんて短いもんだよ。

それよりも、この1勝だけでなく、これからも勝ち続けられる、そういう実質のあるゴルフをこれから造り上げていかなくちゃいけない。今日の優勝でパァーッとならず、これを第一歩として、技術、体調と、すべてのことを慎重に、第二の尾崎の自覚をもってやりたい。

ジャンボの持論「プロはスコアだけでなく、球筋を見せなければならない」

画像: ジャンボの持論「プロはスコアだけでなく、球筋を見せなければならない」

完璧な技術でプロしか打てない完璧な球筋のボールを打ち、ギャラリーを圧倒する。これこそ、プロなのだ、と以前から尾崎は言い続けてきた。

しかし、この頃の尾崎は、眼高手低、有言不実行。掲げた理想と現実とのギャップの大きさが、尾崎を苦しめた。OBの連発、大叩き、その後の投げやりなプレーは、ギャラリーを圧倒するどころか、むしろその逆だった。が、しかし、この大会では、なにかが違っていた。

強風の中で始まった3日目、ジャンボがティショットを打つたびに、ギャラリーから「あーあっ」と嘆声が起きる。ボールが深く伸ばしたラフの草の中にもぐる。「そろそろ(大叩き)始まるゾ」というささやき声が出る。

しかし、ジャンボは最後までギャラリーの期待(?)を裏切った。73のベストスコアで、小林富士夫と並んでトップタイ。そして最終日、遂にジャンボの豪打が復活した。

クラブが鋭く振り抜かれると同時に、ボールがひしゃげ、そしてもの凄い勢いで空気を切り裂きながら、はるか彼方のフェアウェイに向かって飛翔し、落ち際に軽くフェードする。ジャンボにしか出せない猛烈なインパクトの音響と豪快、美しい球筋にギャラリーは目をみはり大きくどよめき続けた。

ギャラリーを圧倒するジャンボならではの「完璧な球筋」を、本当に久しぶりに、しかも十分堪能させて、ジャンボは1年9カ月ぶりに、見事な復活を遂げた。

ドライバーに自信が戻ればスコアは自然とまとまってくる

画像1: ドライバーに自信が戻ればスコアは自然とまとまってくる

ジャンボが1年9カ月ぶりに優勝した。その日の来ることを首を長くして待ち望んだ人は多い。後藤修さん(野球評論家)もそのひとりだ。「ジャンボが復活する日」を週刊ゴルフダイジェストで連載し、叱咤激励、歯に衣着せぬ直言を書き示してきた。その連載が終わったとたん、ジャンボが復活したのはなんとも皮肉な話だが…後藤さんは言う。

「ジャンボの低迷は本人の感じ方と実際とにギャップがあったことも原因のひとつ。体がしなやかな若い頃はスウィングのミスも体が本能的にカバーし切り抜けてこれた。それができない筋肉になっているのに本人は認めようとしない。理想と現実の隔たりに悩み、悩み抜いたところに今度の優勝が生まれたのだろう」

スウィングについて激論を何度か交わしたことがある。

「ボールが曲がるのはヨコ振りをしているからだ。自分はフェード打ちだからそれでいいんだと言い張って、なかなかタテ振りにしようとしなかった。それが戸田(藤一郎)さんの助言もあってタテ振りをついにやり出した。練習場でもそれだけをチェックして打っている。タテ振りにしてもハンドファーストに打っていけばフェードになることを体得したのだと思う」

最終日、ジャンボのティショットはフェアウェイから大きくそれることはなかった。ドライバーに自信が戻ってくればスコアは自然にまとまってくる。

「人の話を聞く素直な気持ちは失いたくない、いいものはどんどん吸収する、そんななかから自分の流儀にこなしていくことが大切だ」というジャンボ。後藤さんのアドバイスが自分の流儀にやっと消化されてきたのかも知れない。

画像2: ドライバーに自信が戻ればスコアは自然とまとまってくる

(週刊ゴルフダイジェスト1982年9月22日号)

1982年関東オープン最終結果
富士小山GC/6358メートル/パー72
1位 +2 尾崎将司(日東興業)
2位 +3 羽川豊(霞ヶ関)
3位 +6 磯崎功(都留) 
     小林富士夫(真名)
5位 +7 吉武恵治(程ヶ谷)
     菊地勝司(フリー)
     杉本英世(千成) 
     中嶋常幸(美津濃)

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画像: 富士山の眺めが美しい、富士小山GC

富士山の眺めが美しい、富士小山GC

富士小山ゴルフクラブ
静岡県駿東郡小山町大御神894-1
☎0550-78-0111
18H・7015Y・P72
コースレート73.3/スロープレート131
コースタイプ/丘陵コース
グリーン/ベントの2グリーン
設計/中村寅吉
開場/1962年
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