3日目、2位と3打差の10アンダーとして優勝に王手をかけたブライアン・ジョーンズの楽勝かと思われた最終日、3アンダーからスタートした伏兵・ジャンボ尾崎がバーディラッシュ。最終ホールでチップインイーグルを決め、プレーオフにもつれ込んだ。プレーオフは18番556ヤードの長いパー5。こうなれば勝ちは決まったようなもの。ジャンボはこのホールを楽々とバーディとして、今季5勝目。圧倒的な強さを見せた。その裏にはウォッチャー後藤修の大きなヒントがあったのだ。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

日本オープンの疲れか、尾崎の狙いが「太く」なっている

画像: 「ポラロイド杯ゴルフダイジェストトーナメント」最終日 ジャンボ尾崎のティショット

「ポラロイド杯ゴルフダイジェストトーナメント」最終日 ジャンボ尾崎のティショット

巨人軍の原選手だったか長島さんだったか、以前、「選挙(開票速報)はオモシロいですね」といっていたことがある。

それと似て、この時期に来ると、プロゴルファーのシード権争いがオモシロい。

たしかに、このゴルフダイジェストの試合は、昨年は河野和重が2位に入って「当選確実」をきめ、一昨年は船渡川が2位に入って当確をきめたと記憶する。

ソウル五輪のマラソンでは、4位だった中山選手が「優勝でなければ4位でもビリでも同じ」と言ったが、この時期、トーナメントは「2位に入ること」が大変な値打ちものになっていると思う。

まあそんなワケで、今週私(ジプシー後藤)が興味深く眺めたいのは、新人の当確者と、元議(?)でカムバックした者。そして「現」「元」「新」で、もっか60位以内を狙って、善戦したり苦戦したりしているプロ達等々だ。

で、土曜日にコース入りした私は、この試合の予選通過者を出来るだけ沢山を見られるように、クラブハウス前のイン10番202ヤード、パー3のティグラウンド後方スタンドに陣取って、各プロのショットを一発ずつ拝見することにした。

後藤修(1934年-)
プロ野球選手でありながら日本アマチュアゴルフに優勝した新田恭一に師事。新田が松竹ロビンズの監督に就任したことで、プロ野球界入りを果たす。1952年から1963年の9年間で、大洋、東映、大映、巨人、近鉄、南海、西鉄の8球団を渡り歩いたことで「ジプシー後藤」と呼ばれるようになる。引退後、ゴルフコーチに転身。ジャンボ尾崎、中嶋常幸の軍師として話題となる。自身の理論「スクェア打法」を提唱し、「後藤塾」を開講した。

この飛球線直後からのウォッチングを私は最も得意とする。一発見ただけでも、各プロの好不調が大体分かるのだ。

まず、今年は十何年ぶりのトップ当選(賞金王)と、得票数の新記録(一億円突破)を狙うジャンボ尾崎が来たので、彼から見よう。

本日このホールは、ピンの位置が右奥。

従って尾崎は、このところ各ショットがフェードづいていることとピン位置からして、当然得意のオープンスタンスからフェード狙い(結果スライス過多で右へミス)。

先週の日本オープン(優勝)の疲れからか、やや狙いが粗い(太い)。

「太い」というのは、このホールをフェードで打ったとして、左へまっすぐ行っちゃったとしてもグリーンの真ん中。フェードがかかりすぎたとしても右エッジの中へ球が残ってくれれば、「まあ良し」だ。

画像: 戦いの舞台は東名カントリークラブ(静岡県)

戦いの舞台は東名カントリークラブ(静岡県)

続いて、ジュンクラシックの1勝で「終身議員」の資格を得た中村通が来て、ややフェード気味のスタンスからストレートにピンを狙ってナイスショットした。

中村通の調子がようやく上がって来たか。

しかし、今からでは尾崎に(賞金レース)追いつくのはムリだろう。

追いつくと言えば、この試合は倉本もD・イシイも予選落ちとは驚いたが…。

「当確」ぐらいは当たり前、上位当選でないとカッコがつかない青木功は、やはりオープンのスタ
ンスから、もしかするとドロー狙い(?)で左へミス(フック)させた。

このもしかするとドロー狙いには、2つの意味がある。

1つ目は、今週は「お休み」で、臨時テレビ解説者の中嶋常幸が、たまたま私の横へ来たので、このホールを彼ならどう打つか聞いてみた。

中嶋、「絶好調の時なら、アイアンでピン左1メートルからストレートフェードで狙います。調子が悪い時なら、右のエッジへ境界線を考え、そこからグリーンの中へフック気味になるように打ちます」

なるほど、今の中嶋なら多分、後者だろう。

いや、このホールは左がバンカーとOBで、右はサブグリーンと浅いラフだけ。

かつて大不調時代の尾崎が、左からフェード狙いの左OBというのをやった記憶もあるので、右からドローでも決して悪くはない。

さて2つ目。結局この日は、このホールで30人以上のプロのショットを見たが、ストレートやドローで打ったプロは何人かいたが、何とクローズドスタンスで打ったプロはナシだった。

現在の日本は3強がそろって「ややオープン」のスタンスですべてのショットを打つので、ややオープンが正統派でクローズドスタンスは変則という考えが、プロの中に行きわたったらしい。

その変則(失礼)を期待して待っていたら、日本で唯2人のクローズド打法の高橋勝成とブライアン・ジョーンズも、この日はなぜか、皆と同じ、ややオープンのスタンスだった。

画像: オープンスタンス全盛の中、スクェアからややクローズを基本にしていた高橋勝成

オープンスタンス全盛の中、スクェアからややクローズを基本にしていた高橋勝成

唯1人、新井規矩雄のスタンスがピンへまっすぐだった。

足のラインがピンへまっすぐだと、球のラインは、それと平行、即ちサブグリーンへ向く。(その通りに新井は右へプッシュした)

画像: (左)新井規矩雄 (右)青木功

(左)新井規矩雄 (右)青木功

今年、彼が大苦戦している原因の1つは、このへんにあるのではないだろうか?

それ以上に悪戦(?)している河野和重「現」は、アドレスはいいけど、スタートを持ち変え(作り変え)てテークバックし、ダウンスウィングで上下動していた。

オープン気味スタンスが基本と決定したとして、これからは、その次が大事という時代に入っていくのだろう。

無名ながら善戦中の室田淳「新」が、上から下まで、バランスのとれたスタンス(アドレス)から、
ゆっくりめのスウィングで、いいストレート系ショットを打っていた。彼は今年「当選」すると見た。

画像: ウォッチャー後藤氏いわく「バランスのとれたアドレスから、ゆっくりめのスウィング、室田淳」

ウォッチャー後藤氏いわく「バランスのとれたアドレスから、ゆっくりめのスウィング、室田淳」

すでに当選を決めた復活、羽川豊「元」は、アドレスはいまいちだった。大復活へは、まだだろう。

その点、アドレスは見事にストレートフェードで上から下まで出来上がっている湯原は、体がカタい故か、球ばなれが早くて右へスライスした。

アドレスが良ければすべて良しではないと言うことらしい。

続いて午後は、10番ホールで見られなかったプロ達が練習場へ来るのを待ってウォッチしたが、ここで私は先の問題の続きを考えさせられた。

尾崎軍団の東聡「現」のアドレスが、湯原並みにいい。

しかし、彼は今、羽川に抜かれて、当落スレスレで苦戦している。

かつての賞金王、前田新作も、アドレス良し、テークバック良し、両足のフットワークなどは見事と言える程いい。

しかし彼は今年、何度かギリギリで再当選程度だ。

それは即ち、こういうことではないだろうか。

アドレスが上から下まで素晴らしく、スウィングもかなりスクェア打法になっているプロは、「大器」「大モノ」「大型」スクェア打法のうちのどれかの言葉をアテはめられる。

しかし、これらの大型選手の者が、一部不十分だと変則打法にやられてしまうと先に書いたが、早速来た変則派のジョーンズは、大変に人柄がいいらしいので、悪役的イメージで呼びたくないのだ。

そこへ練習グリーンから尾崎のお呼びが入った。(助け舟?)

戦いの舞台「東名カントリークラブ」をチェック↓

最終日「62」のジャンボに大ヒントを与えた私

画像: ジャンボのパターと言えば、L字の「トミーアーマーIMG5」だった

ジャンボのパターと言えば、L字の「トミーアーマーIMG5」だった

尾崎、「今日はジョーンズで決まりだから、面白くないでしょう」

私、「ジョーンズは、ダメな時は全然ダメだけど、いい時は必ず勝つからね。スウィングは変則でもパットは抜群にいい」

尾崎、「巧い、巧い。今年の彼のパットはいつ見てもいい。左足重心の左手打法で、こうきちゃう(
尾崎得意のモノマネをする)」

私、「それだとランニングアプローチも巧いだろう?」

尾崎、「巧い、巧い。パターとまったく同じ打ち方なんだから」

よかった。左手打法とか、パターとアプローチの基本は同じというのはスクェア打法の重要要素の一つだから、ジョーンズはスクェア打法派の1人としよう!?

尾崎、「ところで、このパター打法はどう? これが昨年の打法で、これが今年の打法」

私、「言いたくない。ジャンボには、ショットがある、運がある。その上パターのことは言いたくない。まあしかし、打ち方としては今年の方がいい」

尾崎、「そうだと思った。よし、これで行こう」(結局パター談義)

画像: スタート前にクラブ談義(?)に花を咲かせる

スタート前にクラブ談義(?)に花を咲かせる

それで尾崎が最終日、圏外から猛攻撃を始めた。

私としては、人柄が良さそうで180センチ、しかもスクェア打法をやろうとしているプロが好きだから、長身大型新人の室田淳か、最近、フォームをスクェア系に直しているらしい草壁政治に、何とかスタート前に好ヒントを与え好暗示をかけて、この試合で「当確」をキメて欲しいのだ。

ただ途中で私は室田と草壁のショットが、やや弱い原因は、2人ともグリップがスクェアすぎるからだと気付いた。

完全にスクェアなスタンスやグリップを私は常日頃ペーパードライバーにちなんで、ペーパースクェアと呼ぶ。

人間の体には「遊び」があるのでスタンスは、わすかにオープン。グリップはわずかにフック気味でないと、本当のオールスクェア打法は出来ないのだ。

画像: 最終日の18番ホール(パー5)でアプローチ

最終日の18番ホール(パー5)でアプローチ

画像: 最終ホールのチップインイーグルでプレーオフに持ち込む

最終ホールのチップインイーグルでプレーオフに持ち込む

そのような問題は、尾崎とはこれまでに語りつくしてあるので、彼には試合会場で何かひとこと言っただけで、大アドバイスとしてプラス吸収されてしまうが、当選させたい新人や苦戦者には、こちらの思いが通じないのが歯がゆい。

画像: ブライアン・ジョーンズのホールアウトを待つ

ブライアン・ジョーンズのホールアウトを待つ

画像: 最終日「62」のジャンボに大ヒントを与えた私

(週刊ゴルフダイジェスト1988年11月1日号)

1988年ポラロイド杯ゴルフダイジェスト最終結果
東名CC/6770ヤード/パー71
1位 -12 尾崎将司
2位    ブライアン・ジョーンズ

―――プレーオフ―――

3位 -10 高橋勝成
4位 -8  芹澤信雄 
       長谷川勝治
6位 -7  イアン・ベーカーフィンチ 
      鈴木弘一
       青木功
9位 -6  中村通
      室田淳

東名カントリークラブ
住所:静岡県裾野市桃園300
☎055-992-3331
営業形態:メンバーシップ
開場:1968年9月23日
ホール数:27ホール
設計:竹村秀夫 改造:加藤俊輔
距離/パー/コースレート:6887ヤード(裾野・桃園)/パー72/72.6
             6936ヤード(桃園・愛鷹)/パー72/73.0
             6881ヤード(愛鷹・裾野)/パー72/72.6
アクセス:東名高速、裾野ICより9キロ
     新東名、長泉沼津ICより8キロ
     JR三島駅よりタクシーで約3000円(土日祝はクラブバス運行)
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