島田崇さんは大事な試合の1ヵ月前に右肩負傷のアクシデント。力みたくても力めない『7割スウィング』と『距離感重視のパット』を貫き、さらに『曲がるクラブは入れない』13本セッティングでミッドシニアで頂点に輝いた!
画像: 島田崇さん(67歳)。 HC+1 富山市内でゴルフ練習場「古沢ゴルフクラブ」を夫婦で経営。2009年、2010年には富山県シニアゴルフ選手権を連覇

島田崇さん(67歳)。 HC+1 富山市内でゴルフ練習場「古沢ゴルフクラブ」を夫婦で経営。2009年、2010年には富山県シニアゴルフ選手権を連覇

右肩を痛めてスウィングが変わった。「7割」で振れば飛んで曲がらない!

まさに“ケガの功名”

シニアアマの頂点、2017年全日本ミッドシニア選手権のチャンピオンである島田崇さんをアクシデントが襲ったのは全国大会決勝の約1カ月前。

「ラウンド中に足を滑らせて転倒しちゃって。右肩を打撲してしまったんです。痛みがなかなか引かなくて、しばらくはクラブも振れない状態でした」

まともに練習もできないまま時間だけが過ぎていく。試合まで1週間を切って、島田さんは右肩の状態を確かめるため、ラウンドに出掛けた。

「これでまともにボールが打てなかったら、出場を辞退するつもりでいたんですが、思ったほどは痛みもなくて、そこそこ打てたんです。これならなんとかなるかなって」

2017年全日本ミッドシニアアマチュアゴルファーズ選手権(10月11・12日)65歳以上の男子ゴルファーが対象。東日本地区・中部日本地区・西日本地区の予選を経て、コート・ベール福島ゴルフクラブで決勝が行われた。

フルショットはムリだが、70 %ぐらいの力加減なら痛みはない。「コースは以前に試合でラウンドしたことがあったし、悪い印象も ありませんでした。スコアは 77 で トップと3打差の5位タイで初日を終えることができたんです」。島田さんのゴルフに、これまでとは違う〝変化〞が起きていた。

力を使わなくても、ボールは真っすぐ飛んでくれる

「70%の力でしか振れないから、飛距離は出ない。その代わり普段は 30 %ぐらいのフェアウェイキープ率が60〜70%までア ップしたんです」

画像: 1.右手は3本でしっかり握る。飛ばそうとする意識が強いと、腕や肩に力みが生まれて、それが曲がる原因に。右手の親指と人差し指は力を抜いて、やさしく握るんです

1.右手は3本でしっかり握る。飛ばそうとする意識が強いと、腕や肩に力みが生まれて、それが曲がる原因に。右手の親指と人差し指は力を抜いて、やさしく握るんです

画像: 2.トップでのひじはやわらかく。以前に左肩もケガしたことがあり、左ひじを無理に伸ばさないスウィングに変えました。このほうが体に負担がかからず、上体も力まないのでスムーズに振れます

2.トップでのひじはやわらかく。以前に左肩もケガしたことがあり、左ひじを無理に伸ばさないスウィングに変えました。このほうが体に負担がかからず、上体も力まないのでスムーズに振れます

画像: 3.ヘッドの重みだけでリストワーク。インパクトゾーンではフェースターンを使って、しっかりボールをつかまえる。右足の前あたりでヘッドを返すイメージで、ちょうどスクエアに当たる。腕はリラックスさせます

3.ヘッドの重みだけでリストワーク。インパクトゾーンではフェースターンを使って、しっかりボールをつかまえる。右足の前あたりでヘッドを返すイメージで、ちょうどスクエアに当たる。腕はリラックスさせます

画像: 4.ねん転よりも"回転"を重視。以前は下半身を止めて、状態をねじり上げていましたが、これも体への負担が大きい。上と下を一緒に回せば、肩もしっかり入るし、飛距離も落ちません

4.ねん転よりも"回転"を重視。以前は下半身を止めて、状態をねじり上げていましたが、これも体への負担が大きい。上と下を一緒に回せば、肩もしっかり入るし、飛距離も落ちません

画像: 5.素振りはまーるく振る要領です。手元とクラブが体から離れないように、体の回転でクラブを振ります。体重移動は使わず、その場で回転するイメージです

5.素振りはまーるく振る要領です。手元とクラブが体から離れないように、体の回転でクラブを振ります。体重移動は使わず、その場で回転するイメージです

優勝を狙える位置でスタートした2日目最終日も、島田さんの快進撃は止まらない。

「前半で1アンダーが出たんです。でも、こんな状態のスウィングで、そんなマグレがいつまでも続くわけないと。だから、優勝争いをしているプレッシャーは、まったく感じなかったんです」

終わってみれば、2位に1打差をつけての逆転優勝。

「試合を戦いながら、以前にある先輩トップアマから言われた言葉を思い出しました。“ゴルフはフェアウェイから勝負するゲームだよ”って。どんなに遠くに飛ばしても、グリーンを狙えない場所にいったら意味がない。少しぐらい距離が残っても、フェアウェイにボールを置くことが大事だということを、改めてこの試合で学びました」

100Y以内でもピンを狙わない!

徹底してリスクを避け、しぶとくパーを拾う。これが島田さんのスタイルだ。その徹底ぶりは突出している。

「たとえ残り100Yでも、私が狙うのは花道の方向で、エッジとグリーンの境目です。そこにキャリーで落とすことだけを考えます。ピンがどこに立っていようと、そこを狙うと決めているんです」

狙いどおりエッジとグリーンの境目に落とせれば、少し転がってグリーン手前に乗る。思ったより飛んでしまっても、グリーン奥まで行くことはないし、ショートしても花道からのやさしいアプローチが残る。当然、パーをセーブできる確率はアップする。

画像: ジャストタッチが最高のストローク。グリップは以前からクロスハンド。左手の人差し指を伸ばすと、手首が余計な動きをしないのでストロークが安定するんです。

ジャストタッチが最高のストローク。グリップは以前からクロスハンド。左手の人差し指を伸ばすと、手首が余計な動きをしないのでストロークが安定するんです。

画像: アプローチ同様インパクトでポン!振り幅は左右対称にせず、テークバックよりもフォローを小さく抑えています。このほうが方向性も距離も合わせやすいんです

アプローチ同様インパクトでポン!振り幅は左右対称にせず、テークバックよりもフォローを小さく抑えています。このほうが方向性も距離も合わせやすいんです

グリーン上のパッティングでは、 絶対にカップをオーバーさせず、ジャストタッチで打っていく。

「カップ手前の淵でボールが止まったりすると、みんな悔しがるじゃないですか。でも、私はヨシッと思うんです。グリーンに乗ったら、絶対に3パットを避けて、 確実に2パットで収める。これもスコアを崩さないコツなんです」

カップに入れば100点で、淵に止まったら 99 点。こんな考え方で、全日本ミッドシニア最終日のパット数は 21 。これも日本一のタイトル奪取の要因になった。

「この年齢になって、ゴルフというゲームの本質が、少しだけ分かってきた気がするんです

島田さんの13本。きついし、曲がるから、3Wも5Iも入れないんです

画像: 島田さんのキャディバッグにはクラブが13本しか入っていない。「もともとアイアンが得意でウッドは苦手だから抜いちゃいました。パワーも落ちてきて、5IもキツイからUTに変更。使わないものを入れても仕方ないから、13本でいいんですよ」

島田さんのキャディバッグにはクラブが13本しか入っていない。「もともとアイアンが得意でウッドは苦手だから抜いちゃいました。パワーも落ちてきて、5IもキツイからUTに変更。使わないものを入れても仕方ないから、13本でいいんですよ」

TEXT/Toshiyuki Funayama、PHOTO/Yasuo Masuda、THANKS/呉羽カントリークラブ、古沢ゴルフクラブ (※島田さんはボランティアとして協力していただきました)

月刊GD2018年8月号より

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