ブライソン・デシャンボー(Bryson DeChambeau)1993年生まれ。米国出身。2015年全米アマ優勝、2016マスターズローアマなどアマ時代から注目をあびる。プロ転向後、ウェブドットコム1勝。PGAツアー4勝(今季3勝)
50年前のスウィング科学理論「ゴルフィングマシーン」を体現
デシャンボーのスウィングは、コーチのマイク・シャイと自身の研究によって作られました。マイク・シャイは「ゴルフィングマシーン」の信奉者で、会場で何度か話をしたことがありますがゴルフィングマシーンについての話をし始めると止まらないほどのマニアです。
最先端の奇人、変人、と言われていますが、デシャンボーのスウィングは約50年前に発表されたゴルフィングマシーン、そして1929年生まれで2004年に他界した伝説の名手、モー・ノーマンのスウィング理論がベースとなっています。
そういったスウィング理論を知っていないと彼が何をしたいと思っているのかが理解できません。それによって奇人・変人と言われるのですが、私はロジックのある理にかなった取り組みだと思います。
ゴルフィングマシーンのライセンスを取得するために、昨年渡米して、8日間×10時間のカリキュラムを習ってきた私も変人だからそう思うのかもしれませんが……。
スウィングについてざっくり言うと、正確性は高くなりますが、飛距離が出る打ち方ではありません。非力なアマチュアには難易度やや高めです。
アドレス(正面アングル)を見ると、左腕とクラブが一直線になっている点が特徴です。ゴルフィングマシーンでは左肩を支点とし、左腕とクラブを一直線に使うことがセオリーです。そのためクラブはパームで握り一体感を高めています。
テークバックではノーコックで上げていきます。手首を使わないことで左腕とクラブの角度を極力変えないようにしています。また、頭の位置を変えないのがゴルフィングマシーンの特徴です。
頭の位置を変えずに回転によってバックスウィングを行います。この時下半身は右かかとに体重が乗って右腰が少し引けているようなっていますが、(反力打法の指導者)クォン教授がデシャンボーのスウィング分析を行った時には実際に左サイドに体重が乗っていました。左右の移動を少なくして、回転運動をしやすくするための体遣いです。
ダウンスウィングでは(アドレスでできた左腕とクラブが作った面)シングルプレーンに戻すことを意識していると思います。
インパクトでは左腕とクラブが一直線になっています。ゴルフィングマシーンでは必須の「フラットレフトリスト」が行われ、左手の甲が平らに伸びています。
これは左肩支点にした半径を長くするために必要な動きです。途中で手首が曲がった場合、そこにレバーができ半径が短くなりますのでロスが生じます。
フォローでも手首を使わずにクラブと左腕を一体化させて振り抜きます。
後方からのアングルを見ると、伝説の名手、モー・ノーマンのシングルプレーンのセットアップとそっくりなのがわかるでしょう。
クラブと腕を一直線にして構えています。繰り返しになりますが、これは腕とクラブを一体化させるため。腕をクラブの一部として使うことでスウィングをシンプルにし、再現性を高めています。
左腕とクラブが描く「一枚の面の上」をなぞるだけ
クラブと腕でできた最初のプレーンに沿ってクラブを動かします。バックスウィングからダウンスウィングまでこのワンプレーン上をクラブヘッドが動くことでシンプルなスイングを行おうとしています。
頭の位置は多少上下するものの首の位置は変わりません。前傾角度もほとんど変わらず回転運動をメインとしたスウィングモデルだと言えます。このスウィングモデルでは上下・前後・横の体の移動は少ないほうが、再現性が高まります。
多少のトゥダウンはあるもののインパクトで手の位置とクラブの角度が揃っています。インパクトで毎回同じシャフトアングル、同じフェースの向き、同じインパクトにするためにワンレングスアイアンを使っているので、このインパクトの再現性は非常に重要な部分です。
「人間の動作を機械にする」。それがデシャンボーのコンセプトなのでしょう。
【解説】吉田洋一郎プロ
週刊GD連載「Dr.クォンの反力打法」でおなじみ。D・レッドベターをはじめ、世界の名コーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。探求・研究に余念がないスウィング構築のスペシャリスト。トータルゴルフフィットネスでレッスンを展開
デシャンボーの教科書「ゴルフィングマシーン」とは!?記事はこちら