【解説】永井延宏コーチ
論理的なレッスンに定評があり、新旧クラブの造詣も深い。
06年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
全米オープン、全米プロ優勝。 ブルックス・ケプカの14本
ドライバーはM3、ウェッジはボーケイSM7「人気クラブのオールスター」セッティング
2018年の全米オープン、全米プロ選手権のメジャー2冠を果たしたブルックス・ケプカは、2016年までナイキゴルフの契約プロ。
「ナイキのクラブ・ボール事業からの撤退により、契約フリーを余儀なくされたが、無理に契約を焦らなかったことがプラスに働いたようです」(永井)
「フェースをシャットに使うタイプなので、ドライバーは重心が深め、3番ウッドはつかまりと球の高さを確保している。アイアンとウェッジはフィーリングのつながりがいい」
1W テーラーメイドM3(9.5度)
3W テーラーメイドM2 TOUR HL(16.5度)
3I ナイキ ベイパーFLYプロ
4I~PW ミズノJPX-900 TOUR
WEDGE ボーケイSM7(52、56、60度)
「契約フリーの最大のメリットは、自分のゲームプランに欠かせない数本のキークラブを、メーカーの制約なく選べる点にあります」(永井)
「仮にセッティングをサッカーのチーム編成にたとえるとドライバーがフォワードのエースで、パターがゴールキーパー、その間の中盤やディフェンスをどう構成するかでプレースタイルが決まります」
「契約フリーなら各ポジションにスター選手を配置して、オールスターチームを作ることも可能です」
マスターズ優勝 パトリック・リード
性格の違う2本のFWを選択
「身体能力ではなく、クラブに仕事をさせる印象のセッティングです。ドライバーのロフトは10度で無理のない設定です」(永井)
「注目は、性格の違う2本のウッドで長い距離をカバーする。全体としては飛距離重視のセッティング」
M3の3番ウッドは、打点ブレに強く、直進性に長けるモデル。XRプロは直進性能に加えて、小ぶりヘッドでボールを拾いやすく、上がりやすいモデルだ。
1W ピンG400(10度)
3W テーラーメイドM3(15度)
5W キャロウェイXRプロ(18度)
2I タイトリストT-MB
4I キャロウェイXフォージド
5I~PW キャロウェイMB-1
WEDGE ArtISAN(51、56、60度)
全英オープン優勝 フランチェスコ・モリナリ
テーラーメイドで統一して重心特性を揃えている
「"M3"の3Wは割とハードですが、それでも飛ばせるパワーがあります。長い番手は飛距離重視。短い番手はウェッジのロフト間隔が広いですが、テクニックでカバーしています。全体的に重心特性を統一して、リピータブルなスウィングのしやすさを重視していると考えられます」(永井)
1W テーラーメイドM4(8.5度)
3W テーラーメイドM3(13度)
5W テーライメイドM4TOUR(18度)
4I テーラーメイドP-790 UDI
5I~PW テーラーメイドP-750
WEDGE テーラーメイドミルドグラインド(50、56度)HI-TOE(60度)
「クラブ契約フリー」日本男子ツアーではどうなのか?
日本のツアーでのクラブ契約は、内容によっては「14本」すべてのクラブを使用しなくてもいいのだが、ドライバーだけは必ず使用しなければならないケースが一般的。クラブ契約フリーで今シーズンに優勝した選手に聞いた。
関西オープン優勝 時松隆光
低スピンすぎないこと、やさしいことを重視
ドライバーはミズノのMP、3番ウッドはエピック、5番ウッドはローグ、2本のUTはAグラインド……。ウッドとUTだけを見ても、契約フリーの申し子のようだ。
「できるだけやさしいものを選んでいます。低スピンすぎず、コントロールしやすいいのがいい。無理をしなくてもいいクラブです」(時松)
1W ミズノMPtype-2(9.5度)
3W キャロウェイGBBエピック(15度)
5W キャロウェイ ローグ(18度)
3U 4U A-GRIND DST(21、24度)
5I~PW ミズノMP-66
WEGDE フォーティーンRM22(52度)、RM(58度)
日本ゴルフツアー選手権優勝 市原弘大
中古ショップや通販で買って揃えたセッティング
「契約フリーでも、メーカーの方からクラブを提供していただけることもあるのですが、それをすると試合で使わないと失礼だと思うので、中古ショップや通販で買っています」(市原)
1W キャロウェイ ローグ サブゼロ(9度)
3W キャロウェイ スティールヘッドXR(13.5度)
2U 3U 4U キャロウェイ エピック(18、20、23度)
4I~PW キャロウェイ Xフォージド
WEDGE フォーティーンRM22(52度)、RMカスタム(58度)
永井コーチは契約フリーを好む選手がいる理由として、「最近は、メーカーが新モデル発売するたびに、クラブのコンセプトを変更するケースも多いです。契約プロだとなんとか使わなければなりませんが、契約フリーならそのリスクは回避できます」
「契約フリーのプロの間では、ピンのドライバーが人気ですが、それは一貫して重めヘッドで高慣性モーメントというコンセプトが、モデルチェンジしてもあまり変わらないことに起因しているのではないかと思います」とも分析する。
契約フリーには、ある種のリスクヘッジが含まれているということだ。
週刊GD2018年9月18日号より