時松流10本握りは、右手も左手もフックに握る
左は手の甲が上、右は手のひらが上を向く
丸山 10フィンガーは昨年の6月から始めて、1年以上になります。最近、上手くなってきましたよ(笑) 左手親指の付け根をケガして、術後にプレーしなければならなかったとき、さてどうしたものかと。今までのグリップじゃ痛みがあって1ラウンドなんてもたないと思ったからね。そんなときに源ちゃん(時松プロの本名は源蔵)を見て、10フィンガーでツアーを戦ってる人がいるんだ、すごいなと。よしボクも「時松流グリップだな」って始めたのがきっかけなんだ。
時松 恐れ多いです(苦笑)。ボクは5歳でゴルフを始めたときから10フィンガーなので、逆にそれ以外のグリップは無理なんです。オーバーラッピングだと全部右に行き、飛びません。
丸山 もう10フィンガーじゃないと力が入らないんだろうね。ボクもね、ようやく10フィンガーでスウィングスピードが上がってきて、飛距離も出るようになってきたよ。それでも自分のいいときからしたら10%は飛距離が落ちている。だけどゴルフが楽しめることに今は感謝している。ところで源ちゃんは10フィンガー、どう握ってるの?
時松 右手フック、左手フックに握ってます。これも子どものときから変わりません。師匠の篠塚武久先生が、グリップはカタチから作るものではないと。自分が打ちやすく、自然に握るのがいいと教えてくださって。
丸山 右手フック&左手フックかぁ、ボクにはできない(笑)。体の構造の違いもあるからね。僕の場合は、右手はいままでの普通のグリップ。ただ小指を重ねないという感じかな。源ちゃんの球筋はフェード?
時松 はい。左を向いて構え、フェアウェイのセンターに戻ってくるイメージです。
丸山 そっか、左を向いて押し出し気味にフェードを打つプッシュフェードなんだね。ボクはまだつかまえようとしてるな。源ちゃんの出現はボクにとって希望。イチからの挑戦だと思って、いろいろ試させてもらうよ。
「まだ痛みがあるとき、ゴルフどころかシャツのボタンも留められなかった。しばらくして10フィンガーで打ってみたら、これならいけるかもと。最初は右にしか飛ばなかったけど、だいぶ上手くなった。ここまであきらめないで治療してよかった。10フィンガーによって、またゴルフが楽しめる。源ちゃんには感謝。ご飯をおごらないとね(笑)」
ローテーションなし。だから曲がらない!
自然で長続きするケガ知らずのグリップ
丸山 源ちゃんの連続写真を見てみると、10フィンガーという特殊なグリップなんだけど、スウィングが綺麗だよね。インパクトでトウダウンもしていないし、ポスチャーも崩れていない。全体的に静かに下りてきている印象がある。
時松 ボクはカタチはほとんど気にしていません。師匠の篠塚先生のレッスンは、左わきがあいているとか、肩が入りきっていないとか、そういうカタチのことは一切言われないんです。たとえば刀を見せてくれて、それを横に払って球を斬るように打ちなさい、とか。
丸山 すると、フェースローテーションはしないわけ?
時松 フェース面を変えず、シンプルに打ちなさいと。シャットに上げて、そのまま下ろしていく感じです。
丸山 なるほどね。それに、フットアクションが静かで、ほとんどないと言ってもいいくらい。だから安定感抜群で、いかにも曲がらない感じがするよね。それと長持ちしそうだよ。ケガをしなさそうな、そんな印象も受ける。
時松 篠塚先生ご自身も、丸山先輩と同じように左手親指付け根をケガされて、それなので自然で長続きするグリップということで長年かけて研究されたとうかがいました。
丸山 パターまでみんな10フィンガーなの? 徹底しているね。
時松 パターも利き手重視で、右の手のひらの感性を活かして、フェース面の角度を変えずに球に順回転をかけて転がしていくイメージです。篠塚先生が「ライジングパット」と名付けられました。
丸山 じゃあ、源ちゃんはすべて右手重視なんだね。ボクはショットを含めてやっぱり左重視。右に力を入れてスウィングしたら、どこへ飛ぶかわからないから、右手は添えているだけ。違いはあるけど、今は10フィンガーを徹底している。30ヤード以内は従来のグリップで、それ以外はバンカーまで10フィンガー。手袋も破れ方やマメのでき方も変わってきたよ。
時松プロが、寄せ名人の丸山プロに質問。「上げて寄せるコツ」
時松 せっかく丸山先輩にお会いできたので、アプローチを教えていただきたいです。転がして寄せるのは大丈夫なんですが、上げて寄せられないと海外では厳しい場面がありました。
丸山 源ちゃんはどういうイメージで上げようとしているの?
時松 フェースに球を長く乗せるような、ヘッドを押し出していく感じですかね……。
丸山 それじゃ、洋芝では球は上がらないよ。日本人選手にはそうやって寄せようとしている人を見かけるけど、アメリカでそうやっている選手を見た?
時松 いいえ(苦笑)
丸山 アプローチは基本的に、インパクト以降は腕で押し出すのではなく、体の回転に腕が連動するイメージ。洋芝で源ちゃんのような打ち方をしたら、二度打ちすることだってある。
時松 確かに怖さはありますね。
丸山 それに源ちゃんの打ち方だとフットアクションが必要。源ちゃんのスウィングはフットアクションが静かなのか強みなんだから、ロブショットだけ違うことをするなんてもったいない。インパクト以降は体の回転でヘッドを抜いてあげればいい。
時松 バンカーのエクスプロージョンのイメージですか?
丸山 エクスプロージョンも球を上げる動きでしょ。バンカーが上手い人はアプローチも上手いよね。最初はスライスがでるような気がするかもしれないけど、左わきを締めて、インパクト以降は体の回転と右手は同じ動きでいい。グリップエンドが同じところを指すようにね。
時松 手元を球の飛ぶ方へ押し出さず、体の回転とともに肩口へと抜けていく感じですね。
丸山 そう、ロブのイメージは右手で球を握り、アンダースローでポーンと宙に投げる感じ。球を上げたかったら、いかにゆっくりと、しかも等速に腕を振れるかが大切なんだよ。
「大先輩からは学ぶことだらけでした」(時松)
小柄なアジア人でも。世界で勝って夢を与えられるようになってほしい、という大先輩からのメッセージ。カッコよかったですし、感動しました。それにロブショットまで教えていただけて、ボクにとっては夢のような時間でした。いろんなことを学ばせていただき、ありがとうございました!
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【フック・引っかけ矯正】時松隆光プロがお手本のテンフィンガーです。大フックが出るのはナゼ?
週刊GD2018年10月9日号より