ブライソン・デシャンボー(Bryson DeChambeau B)
1993年生まれ、米国出身。アマチュア時代に輝かしい成績を挙げ、16年プロ転向。独自のスウィング理論、ワンレングスアイアンなどで注目される。ツアー5勝。世界ランク5位(2018年11月5日現在)
ハンドアップして、背骨とクラブを直角にセットアップ
‟曲げない”ためのアドレス by中井学
デシャンボーのスウィングは一見すると変則に見えますが、実はとても合理的であることがわかります。例えば、彼のスウィングは、アドレスからインパクトまで前傾角度が変わらず、アドレス、ダウン、インパクトフォローのシャフトの角度が平行に収まっています。これは方向性の良いプレーヤーの特徴で、構えたところにクラブが戻る、再現性の高いスウィングプレーンの持ち主である証拠です。
この動きを実現するために、彼は腕とクラブをほぼ一直線にして構えています。基本的にスウィングをすれば必ずクラブはトウダウン(ヘッドのトウ側が下がる現象)を起こします。それを、腕とクラブを一直線にして手首の角度を消すことでトウダウンの度合いを抑え、スウィングプレーンを安定させているのです。このような点からも、彼が体の動きよりもクラブの動きを重視した、超合理的思考のプレーヤーであることがわかるのです。
ドライバーもライン出しのアイアン型スウィング
次は正面からスウィングを見ると、左足体重で右寄りにボールを置き、ハンドファーストに構えているのがわかります。このアドレスを見ただけでも、デシャンボーがアイアンを基準にスウィング構築していることがわかります。これは遠くに飛ばすことよりも、正確性とスコアメークを重視している証拠です。
また、ワンレングスアイアン(ウェッジからロングアイアンまで7番の長さに揃えたアイアンセット)を使用していることからも、「ひとつのスウィングですべてのクラブを打ってしまおう」という合理的思考が読み取れます。
体の動きでいえば、手首のコッキング、腕のローテーションをほとんど使わず、ボディローテーションだけでスウィングするのが彼の最大の特徴です。
クラブによって打ち方は変えない
コッキングと腕のローテーションを抑えることで、タイミングのずれによるミスを防ぎ、方向性、正確性を高めているのです。
このように「腕を振る・しならせる・走らせる」という動きを完全に排除すると、プレーヤーは「飛ばない」と感じるのですが、コッキングを使わないほうが体の幹部はしっかりと動き、ショルダーターンが大きくなるという効果があります。そのため、飛距離と方向性が両立がするのです。
アイアンのライン出しショット。デシャンボーはドライバーもこのイメージ
そういう意味で言うと、デシャンボーのスウィングは、読者の皆さんも試してみる価値が大いにあると思います。試すときには、グリップを太くして、ウイークグリップで握り、腕とクラブを一直線に近づけ、背骨とクラブが直角になるように構えるのがポイント。
とくに、手打ちで手首のコッキングや腕のローテーション過多の人、左ひじが曲がりすぎてしまう人などは、彼の動きを取り入れることで大きな飛距離&方向性アップにつながる可能性があるでしょう。
【解説/中井学】
プロコーチ。米国留学中から、独自に理論を構築。現在は自らツアーにも参戦しつつ、多くのプロ、アマチュアを指導する。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa
週刊GD2018年11月13日号より