60歳でシニアツアー賞金王、室田淳プロのアイアン体験談
「マッスルバックのアイアンはダウンブローに打ってスピンを掛けないとボールが上がりません。でも最近の簡単なアイアンは、上から打たなくても上がるし飛ぶから、打ち込むことをしなくなったんです。そうしたら、体の回転がスムーズに。インパクトも安定して成績も上昇しました」(室田)。
シニアツアーきってのショットメーカー・室田プロはダウンブローから脱却することで、シニアツアーで活躍できたと話し、「払い打つと、高い打ち出しで飛びます」と付け加えてくれた。スピン量は多少減っても、打ち出しが高いので高さで止まるという仕組みのようだ。
「払い打ち」は科学的にも正解! クラブ設計家が仕組みを説明
室田淳プロが大型ヘッドのやさしいアイアンに替えたら払い打ちに変わったという、この体験。クラブ設計の理論上から見ても理に適っているのか。21年間、「フォーティーン」でクラブ設計に携わってきた松吉宗之氏に聞いてみた。
松吉 室田プロのお話はとても興味深いですね。クラブの進化を体感している人だからわかることなのかもしれません。今のユーティリティに近いキャビティアイアンと、10年前のマッスルバックアイアンを比べると、重心距離が平均で約5ミリ長く、重心高さで約4ミリも低いんです。
松吉 これはフェースが開閉しづらくなった上に、芯が低い位置にあるということなんです。スウィングとしては、フェースをボールに向けたまま低く長く動かさないと、芯では捉えられません。だから室田プロが言う、払い打ちのような打ち方に変わっているのです。
松吉 打ち込んでしまうと、重心よりも上で当たることになり、スピン量が極度に減って、ボールがまったく上がらなくなるので気を付けてください。
【アイアンの重心位置 比較】
室田プロが言う「払い打ち」インパクト
従来の打ち込むインパクト
松吉氏が説明したとおり、今どきのやさしいアイアンはクラブの理論上も「払い打ち」が効率的で、クラブ本来の機能を生かすということだ。
払い打ちをマスターする①「右ひじを締める」by星野陸也プロ
【指導】星野陸也プロ
持ち前のドライバーの飛距離に加えて、アイアンのパーオン率も上昇、「フジサンケイクラシック2018」で初優勝を遂げた
星野 クラブを払い打つには、ダウンスウィングでの右ひじの締めが大事だと思います。この締めは「切り返し」の一瞬で決まります。
星野 ポイントは切り返し。左股関節の内側に体重を乗せる感じで、腰をアドレスの位置まで戻します(下記写真①)。腰は動いても上体は右を向けたままにします(下記写真②)。すると右わきに広いふところ(空間)ができて、そこに右ひじを締めて下ろせるのでです(下記写真③)。
星野プロが言う「右ひじの締め」とは、ひじが曲がったまま右腕を下ろすダウンスウィングのこと。右サイドの空間にクラブが下りていくので、ヘッドの入射角は自然とゆるやかになる。
星野 このとき、腰からではなく、いきなり上体を回してしまうと、ひじが伸びてふところが無くなってしまい、右ひじの締めができなくなってしまいます。腰をアドレスに位置に戻してから上体を回すようにしましょう。
目指すはこのダウンスウィング。上半身は開かない
星野陸也の払い打ちアイアンショット
払い打ちをマスターする②「右わき腹を縮めて打つ」by出水田プロ
【指導】出水田大二郎プロ
飛ばし屋として有名だが、小田孔明直伝のアイアンショットを学び、「KBCオーガスタ」で初優勝を挙げた
出水田 実は最近、アイアンのキレが良くなってきているんです。というのも、もともとちょっと強くヘッドを入れたい時とかに、突っ込んでしまうクセがあったんです。それが、右サイドで粘れるようになったのが大きいですね。
出水田 トップから左腰を切るときに、左かかと方向に斜めに『切り上げる』のがポイントです。これで体が流れず、腰も引けずに回れます。その動きに合わせて、肩をタテに動かしていく(前傾角度に沿って)と、右わき腹が縮んだまま、右サイドでボールに押し込んで打てます。インパクトで、右わき腹が縮んでいるというのが、安定した払い打ちの条件です。
【右わき腹を縮めてヒット】左のお尻を左かかとの上に乗せる
出水田 切り返しでは、左の尻を真っすぐ後ろに引くと同時に、かかと方向に体重をかけて回します。これにより、前傾角度を保ったまま回れるようになります。
【右わき腹を縮めてヒット】トップで胸を目標の反対に向ける
出水田 トップで胸をしっかりと右に向けるほど、そのあと、腰を左に回しやすくなります。ここで上体の回転が足りないと、切り返した時に、左に突っ込みやすくなるので注意してください。
【右わき腹を縮めてヒット】フォローでシャフトを立てる
出水田 肩をタテに動かす意識を持つことで、シャフトの動きもタテになります。フォロースルーではシャフトが立つようになるはずです。
出水田大二郎プロの払い打ちアイアンショット
星野プロの「右ひじを締める」、出水田プロの「右わき腹を縮める」動きで、ドライバーのような『払い打ちスウィング』に身につくというわけだ。ぜひ、試してみよう。
PHOTO/Hiroaki Arihara,Tadashi Anezaki,Kazuo Iwamura TEXT/Taisei Sugawara
月刊GD2018年12月号