成田美寿々
なりたみすず。92年生まれ千葉県出身。ジュニア時代から井上透に師事し、12年からツアー参戦。その年に初勝利を挙げる。ツアー通算11勝 2018年賞金ランク4位(11/18時点)
フェースを開かず上げて、体のターンで打ち抜くシンプル打法
まず見ていただきたいのが、1枚の板をなぞるようにクラブが上がって下りるワンピースのスウィングプレーンです。このシンプルなプレーンはジュニア時代からやってきた「曲げない」と「飛ばす」を両立させる様々な練習の結果です。
このプレーンに対して、彼女はフェースをシャットに(閉じて)使ってスウィングしています。トップにおいてフェースが空を向いているのはフィースを閉じている証拠。
この状態をキープしたまま、体のキレ(回転)を使ってボールをとらえているのです。この動作はⅮ・ジョンソンやB・ケプカなどのスウィングにも通じるものですが、重心距離が長い現代のクラブをシンプルに振るための技術だと考えてください。
筋力トレーニングで、デビュー時より安定感が高まり、強みが増した
デビュー当時と比べると、スウィング中の上下動、左右動が抑えられ、体の‟暴れ”は相当減りました。これは年齢的な影響以上に、筋力トレーニングによる体の締まりが可能にしたものだと言えるでしょう。
パワーがアップしたことによって、同じ飛距離を出すのに大きなモーションを必要としなくなりました。その結果、安定感、再現性がアップしたことが彼女の強みにつながっているのです。
美寿々のスウィングを見て、ルックアップの動き(ダウンからフォローにかけて顔が上がる動き)が気になる人がいるかもしれませんが、これはジュニア時代、フックに悩んだ名残です。
頭を残しすぎれば球はつかまりすぎます。これをダウンからフォローにかけて顔を上げることで防ぎ、回転スピードを落とさずに振り抜いているのです。
この動きについては。さまざまな意見があるかもしれませんが、私は直そうとしたことはありません。たとえ顔が上がろうと、軸がブレず、傾かず、ヘッド・ビハインド・ザ・ボールがキープされていれば問題はないからです。
ただ、この動きを後から取り入れて成功した例はないので、みなさんが彼女のスウィングを参考にする場合は注意していただきたいと思います。
【解説】井上透
プロコーチ、東大ゴルフ部監督。日本におけるプロコーチの草分け的存在。現在、成田美寿々、穴井詩、川岸史果らのコーチを務める
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Kazuo Iwamura
週刊GD2018年11月27日号より