2018年の「アジアアマ」を制し、今年の「マスターズ」と「全英オープン」の出場切符を手にいれた金谷拓実選手。最も注目される現役大学生プレーヤーの強さの秘密に、プロコーチ・石井忍が迫った。

金谷拓実
かなやたくみ。1998年5月生まれ。東北福祉大2年生。日本アマを17歳51日の史上最年少で制覇。17年の日本オープンで優勝争いをするなどして注目を集める。2019年はメジャー出場も決定。次世代を担うプレーヤーだ。

金谷選手のスウィングで特徴的なのは、切り返した瞬間に両ひざと股関節を屈曲させながら、両足の裏で地面へ踏み込んでいく動作です。

この動作は椅子に座るように見えることから「シットダウン」などと呼ばれるのですが、トップの上半身のポジションをキープしたまま重心を下方向に使うと、クラブは背中側に倒れ、ゆるやかな入射角度で下りるようになります。

画像: 両ひざと股関節を屈曲させて切り返し=椅子に座る(シットダウン)ような動作

両ひざと股関節を屈曲させて切り返し=椅子に座る(シットダウン)ような動作

この一連の動作は決して意識して行っているものではありません。けれども、この入射角のゆるやかなダウンによって、再現性の高いインパクトが実現されていることは間違いないでしょう。

次に、切り返し以降の動きを見ていくことにしましょう。まずは両脚の動きに注目してください。

地面を踏んで反力を活かす。両ひざを曲げて伸ばすエネルギーで飛ばす

切り返しのシットダウンの動きによって屈曲した両ひざが、インパクトからフォローにかけて伸ばされていることがわかります。これはいわゆる「地面反力」を使っている証拠。

両ひざを曲げて伸ばすエネルギーを、「体をタテ回転させる力に変換」することで、加速度を高め、飛距離につなげているのです。

もうひとつ注目してもらいたいのが、切り返し以降の左腕の動きです。ダウンからインパクトにかけては、左腕が左に回旋しながら下りてくるのですが、このとき、左腕と胸の感覚が広がっているのがわかるでしょうか。

基本的にバックスウィングからダウンスウィングへ切り返した瞬間、胸と左腕の間隔は最も狭くなります(左腕の内側が左胸に近づく)。

この間隔がインパクト、フォローにかけて広くなり、左腕がリリースされているわけです。

この左腕のリリースする動きは、両脚を曲げ伸ばす動き同様、ゴルフスウィングにおける大きなパワーソースと言えます。体が大きくパワーがある人は左腕のリリースが小さくても飛距離を出せるのですが、そうでない選手の場合は左腕のリリースが飛距離を得るための重要な要素となります。

身長170cm、体重62キロと決して大きくない金谷選手が、大型プレーヤーに負けない飛距離を出せるのは、この2つの動作によるものが大きいと言えるでしょう。

この左腕のリリースは、アマチュアの皆さんがスピードアップさせるときにも非常に効果的なので、飛距離を伸ばしたい方などは、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

【解説/石井忍】
プロコーチ。現在、薗田峻輔、安田彩乃らのコーチを務める。週刊GD誌にて「考えないショートゲーム」連載中

週刊GD2019年2月19日号より

PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/三井住友VISA太平洋マスターズ

画像: 【金谷拓実】2019年マスターズ出場。世界アマランクただいま6位のスウィングを観察。切り返しで椅子に座る体使い「シットダウンモーション」が強さの秘密

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