【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。ワンテーマを3回~6回のシリーズでお届け。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
フェースの素材で“距離感”は大きく変わる
パターのフェース面には様々な素材が使われています。ヘッドと同じ素材の「ステンレス」、あるいは「アルミ」や「銅」、「樹脂インサート」など。
これらの素材は硬さが違うのですが、ルール上「パターのフェース面に使えるのは“ショアA”硬度85以上」と決められているので、パットのヘッドスピード(毎秒1~3メートル)程度では、その反発力に大きな差はありません。
ショアA硬度とは
一般ゴムの硬さを計る規格で、表面に押針を押し込み変形させ、その深さを測定、0から100までに数値化。ルールではウレタンやその他「ソフト」なインサートがフェースにあるパターに関係する
よって、フェースの違いは「打感」の違いとして、プレーヤーにフィードバックされます。金属系は打った時の振動を吸収しにくい素材なので、打感がダイレクトに伝わり「硬く」感じ、樹脂系の振動を吸収しやすい素材なので“「ソフト」に感じる、という特性があります。
では、これがプレーヤーにどう影響するのでしょうか。
“溝”が打ち出しのミスを緩和する
まず、金属系のフェースを見てみることにしましょう。金属系はボールが“強く出る”感じがするため、次第にインパクトが弱くなる可能性があります。かつて、「ピン」のパターは、打つと“ピーン”という高い音がすることからそう名付けられたそうです。
しかし、昔の遅いグリーンだったら「音が鳴るぐらい打て」ということでもよかったかもしれませんが、現代の高速グリーンで使うにはちょっと怖い。これに対して樹脂系は、素材の特性によって打感が吸収されます。“減衰率”というのですが、これが高いと打ったときの“音”がしなくなってくるのです。
“音”と“打感”は密接に関係していますので、樹脂系の方が”しっかり打てる”ようになる、といえるでしょう。
以上を踏まえると、パットがショートしがちな人は、打感がソフトな樹脂系のフェース面のパターを使うとしっかり打てるようになり、逆に打ちすぎる人は金属系のフェースのものを使うことで、オーバーのミスが減る可能性が高い。このようにフェースの“素材”と“距離感”は切っても切れない関係にあるのです。
最近の金属系は、フェース面に溝が彫られていたり、“ミドル”といって細かな螺旋状の削りが入っているものが多い。これにより、極端に言えば“面”で当たっていたものが、“点”の集合で当たるようになります。
インパクト時のボールトフェース面の接触面積が減るために、例えばウレタンカバーのボールを打ったとしたら、ボールの感触が勝り、打感が柔らかくなるのです。
また、この溝やミルドには、“球持ち”が良くなる効果が期待できます。フェース面に削りを入れることで、僅かですが、フェース面がボールに食い込み、接触時間が長くなるのです。つまりインパクトでボールが一瞬つかまるようになれば、その誤差を緩和することができます。
また、先ほど触れたディンプルの影響を吸収することも期待できますし、さらに、オーバースピンをかけやすくなって転がりがよくなる効果もあるでしょう。
私はこの効果を樹脂系のインサートで実現しましたが、いずれにしても、フェースの素材や削りが、パットのパフォーマンスに影響することは間違いなく、これをパター選びの大きな基準にしてほしいと思います。
【通勤GD】ボールとの接点が少ないと打感は「ソフト」になる
【科学の広場】フェース素材の振動数がパターの打感を決める
パターの打感にはその物質が持っている“固有振動数”が関係します。この振動数が大きいものは高音を発し、“硬い”ということになり、小さいものは音が静かで“軟らかい”ということになります。
これを数字(横弾性係数)で表すと、例えばステンレスが70に対し、アルミ合金であれば26、それだけアルミの方が音がせず軟らかいということです。また、樹脂素材の場合、化合物によって様々ですが、おおよそ金属1/50~1/100といった値になるので、かなりソフトに感じるのです。
【即効ドリル】ボールの右半分を見ながらストロークしよう
オーバースピンのボールを打つことは、いいパットの大前提。フェース素材によって球持ちが異なることで順回転の量が左右されないように、打ち方でしっかり順回転をかけましょう。そのためには、ボールを左寄りに置き、ボールの右半分を見ながら打つ。この感覚で常に打てれば、素材に関わらずいい回転のパットになります。
Illust/Shigehisa Kitatani
月刊GDより