【ニック・ファルド】プロコーチと作り上げた「スウィングプレーン&ボディターン」
1980年代半ばから後半、ビデオカメラの普及によってゴルフ界は新しい時代へ突入していきます。
多くのプロコーチが名手のスウィングを分析し、クラブがどのような動きをすれば、ボールを思い通りにコントロールできるのかを研究、発表し合うようになったのです。
その結果、シャフトプレーンに沿ってクラブが下りてくれば、ボールは真っすぐ飛ぶということがわかりいました。その軌道を描くためには手先の動きを抑えて、体主体の動きでスウィングする必要があるということ。
これが「スウィングプレーン&ボディターン時代」の始まりです。
この時代の申し子と言えるのが、ニック・ファルド。彼のスウィングプレーンはデビュー当時からなかなかよかったのですが、デビッド・レッドベターのもとでスウィングチェンジに着手。
スウィングをコンパクトにしてゆるみを取り、脚の動きを抑えて、フィニッシュはI字型に収まる。スウィングプレーンと再現性に磨きをかけた結果、ツアー通算43勝、うちメジャー6勝という素晴らしい成績を挙げ、名手の仲間入りを果たしたのです。
ファルド同様、レッドベターの指導を受けて活躍したのがニック・プライスとアーニー・エルスです。このあたりはスチールシャフトからカーボン。パーシモンからメタル、チタンへと道具が大きく変化した時代でもあります。その中で活躍できたのも、理にかなったスウィングをしていたからこそでしょう。
ファルドとエルスは柔らかな2軸スウィング、プライスはキレのある1軸スウィング。エルスはフェースローテーションが多めでしたが、ファルドとプライスは100点満点。現代でも通用するし、どこを真似しても構わないスウィングと言えます。
【タイガー・ウッズ】完成された神様のスウィング。パワーゴルフの時代が始まった
96年のプロ転向からわずか1年足らずの間に、マスターズを含む7勝を挙げ、世界ランク1位にのぼりつめたタイガー・ウッズ。そのデビューは衝撃的なものでした。
圧倒的な飛距離、抜群のパッティング、バランス力、集中力、カリスマ性。勝利を重ねるタイガーに、多くの選手が「タイガーには勝てない」と音を上げたのです。
しかし、そんなタイガーに対抗すべく、選手たちは肉体改造と技術向上に努めました。結果、時代はパワーゴルフの時代へと移り変わっていきます。
タイガーは97年のマスターズを2位に12打差で勝った翌日、「このスウィングのままじゃダメだ」とプロコーチのブッチ・ハーモンとともにスウィング改造に踏み切ります。世界一の大会をぶっちぎりで勝った直後の決断。それだけでもアスリートとしての意識の高さ、覚悟の大きさがわかります。
タイガーはプロ入り後、4人のコーチのもとでビッグチェンジに取り組み、その後にすべてツアー優勝を果たしています。ただ、個人的にはブッチ・ハーモンに始動を受けていた2002年が一番好きなスウィングでした。
セベの柔らかさ、ノーマンの強さ、二クラスの左サイド、プライスのキレ、ファルドのリズム感とタッチ。それらがすべて見て取れる最高のスウィングだったと思いますし、全盛期のタイガーのスウィングはある意味で完成形だったのではないでしょうか。
2002年 ブッチ・ハーモン時代のスウィング
過去の名プレーヤーのいいところを取り入れ、無駄を省いて昇華させた。神様のスウィングだったと思うのです。
2005年 ハンク・ヘイニー時代のスウィング
2010年 ショーン・フォーリー時代のスウィング
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