ジャック・二クラスのプロデビューから今年で60年。その間、クラブやボールの進化、プレーヤーたちの技術革新によって、スウィングは大きく変化した。プロコーチによる研究が形になって現われ出した1980~90年代。そして、タイガーの登場でパワーゴルフ時代へ進み始める。江連忠プロが振り返る。その第三回。

【ニック・ファルド】プロコーチと作り上げた「スウィングプレーン&ボディターン」

画像: 【ニック・ファルド】プロコーチと作り上げた「スウィングプレーン&ボディターン」

1980年代半ばから後半、ビデオカメラの普及によってゴルフ界は新しい時代へ突入していきます。

多くのプロコーチが名手のスウィングを分析し、クラブがどのような動きをすれば、ボールを思い通りにコントロールできるのかを研究、発表し合うようになったのです。

その結果、シャフトプレーンに沿ってクラブが下りてくれば、ボールは真っすぐ飛ぶということがわかりいました。その軌道を描くためには手先の動きを抑えて、体主体の動きでスウィングする必要があるということ。

これが「スウィングプレーン&ボディターン時代」の始まりです。

この時代の申し子と言えるのが、ニック・ファルド。彼のスウィングプレーンはデビュー当時からなかなかよかったのですが、デビッド・レッドベターのもとでスウィングチェンジに着手。

画像: 「86年のスウィングにはまだ逆C字型のなごりがあるが、97年(マスターズでノーマンを破った翌年)には手の動きを抑えI字型のフィニッシュに変化していることがわかります」

「86年のスウィングにはまだ逆C字型のなごりがあるが、97年(マスターズでノーマンを破った翌年)には手の動きを抑えI字型のフィニッシュに変化していることがわかります」

スウィングをコンパクトにしてゆるみを取り、脚の動きを抑えて、フィニッシュはI字型に収まる。スウィングプレーンと再現性に磨きをかけた結果、ツアー通算43勝、うちメジャー6勝という素晴らしい成績を挙げ、名手の仲間入りを果たしたのです。

ファルド同様、レッドベターの指導を受けて活躍したのがニック・プライスとアーニー・エルスです。このあたりはスチールシャフトからカーボン。パーシモンからメタル、チタンへと道具が大きく変化した時代でもあります。その中で活躍できたのも、理にかなったスウィングをしていたからこそでしょう。

ファルドとエルスは柔らかな2軸スウィング、プライスはキレのある1軸スウィング。エルスはフェースローテーションが多めでしたが、ファルドとプライスは100点満点。現代でも通用するし、どこを真似しても構わないスウィングと言えます。

画像: ニック・プライスのスウィング(1994年)脚の動きが大きめのボディターン

ニック・プライスのスウィング(1994年)脚の動きが大きめのボディターン

画像: 「アーニー・エルスのスウィング(2002年)ややフェースローテーションが多めで。それが飛距離につながっています。ゆったりとしたリズム感を参考にしたいですね」

「アーニー・エルスのスウィング(2002年)ややフェースローテーションが多めで。それが飛距離につながっています。ゆったりとしたリズム感を参考にしたいですね」

【タイガー・ウッズ】完成された神様のスウィング。パワーゴルフの時代が始まった

画像: 【タイガー・ウッズ】完成された神様のスウィング。パワーゴルフの時代が始まった

96年のプロ転向からわずか1年足らずの間に、マスターズを含む7勝を挙げ、世界ランク1位にのぼりつめたタイガー・ウッズ。そのデビューは衝撃的なものでした。

圧倒的な飛距離、抜群のパッティング、バランス力、集中力、カリスマ性。勝利を重ねるタイガーに、多くの選手が「タイガーには勝てない」と音を上げたのです。

画像: 狭めのスタンスで球を右に置き、フィニッシュを抑えて低い球を打つ。「スティンガー(地対空ミサイル)」と呼ばれるショットはタイガーの得意技

狭めのスタンスで球を右に置き、フィニッシュを抑えて低い球を打つ。「スティンガー(地対空ミサイル)」と呼ばれるショットはタイガーの得意技

しかし、そんなタイガーに対抗すべく、選手たちは肉体改造と技術向上に努めました。結果、時代はパワーゴルフの時代へと移り変わっていきます。

タイガーは97年のマスターズを2位に12打差で勝った翌日、「このスウィングのままじゃダメだ」とプロコーチのブッチ・ハーモンとともにスウィング改造に踏み切ります。世界一の大会をぶっちぎりで勝った直後の決断。それだけでもアスリートとしての意識の高さ、覚悟の大きさがわかります。

タイガーはプロ入り後、4人のコーチのもとでビッグチェンジに取り組み、その後にすべてツアー優勝を果たしています。ただ、個人的にはブッチ・ハーモンに始動を受けていた2002年が一番好きなスウィングでした。

セベの柔らかさ、ノーマンの強さ、二クラスの左サイド、プライスのキレ、ファルドのリズム感とタッチ。それらがすべて見て取れる最高のスウィングだったと思いますし、全盛期のタイガーのスウィングはある意味で完成形だったのではないでしょうか。

2002年 ブッチ・ハーモン時代のスウィング

画像: 2002年のスウィング。この年、タイガーはマスターズ、全米オープンを制し、賞金王に輝く

2002年のスウィング。この年、タイガーはマスターズ、全米オープンを制し、賞金王に輝く

画像: 「優雅さと力強さを兼ね備えた最高のスウィングです」

「優雅さと力強さを兼ね備えた最高のスウィングです」

過去の名プレーヤーのいいところを取り入れ、無駄を省いて昇華させた。神様のスウィングだったと思うのです。

2005年 ハンク・ヘイニー時代のスウィング

画像: マスターズ、全英オープンに勝ち6度目の賞金王に輝いた2005年のスウィング。「ブッチ・ハーモンの基本路線を大きく外すことなくプレーンを安定させています。この年以降スウィングに硬さがでてきます」

マスターズ、全英オープンに勝ち6度目の賞金王に輝いた2005年のスウィング。「ブッチ・ハーモンの基本路線を大きく外すことなくプレーンを安定させています。この年以降スウィングに硬さがでてきます」

2010年 ショーン・フォーリー時代のスウィング

画像: 年間3勝を挙げるもメジャーは全英の3位タイが最奥。「スタック&チルト理論によって左1軸スウィングを目指していた時期。ハンドダウンで抑え込みすぎている点、各所にストレスが感じられる点が気になります。優雅さが消えてしまったのが残念です。」

年間3勝を挙げるもメジャーは全英の3位タイが最奥。「スタック&チルト理論によって左1軸スウィングを目指していた時期。ハンドダウンで抑え込みすぎている点、各所にストレスが感じられる点が気になります。優雅さが消えてしまったのが残念です。」

「スイング大進化論」以前の記事はこちら↓

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