器用な右手で球をコントロール
津野 球筋の打ち分けは、右手の使い方がポイントになります。
── 右手ですか!? 右手は使うな、左手リードで、と言われることが多いですが……。
津野 右利きの人は、右手のほうがスムーズに動かせますよね。ならば、右手を使って振ったほうが球をコントロールしやすい。大切なのは“正しく”使うこと。右手が悪さをするのは、正しく動かせていないからです。
── 正しい右手の動きとは?
津野 実は、野球の投球動作とまったく同じなんです。具体的には、右腕を内側にねじる動作。投球なら、これが腕を振り下ろす動きになり、スウィングならトップからインパクトまでの腕の動きになります。
── 真っすぐ投げるときも、腕を内側にねじるんですか? ねじらずに右手を振ってストレートを投げるのかと思っていました。
津野 腕の回旋を使ったほうが腕を早く振れるし、パワーが出せます。スウィングに置き換えても、右腕をねじった(回旋)ほうが速く力強く振れるわけです。右腕のローテーションを覚えてしまえば、後はとても簡単。スウィング軌道やグリップを変えず、右腕をねじるタイミングを変えるだけで球筋を操ることも可能です。
基本動作のポイント
手先だけはNG 右腕全体でねじる
そもそも なぜ右手のひらが重要なの?
①フェース面と連動しているから
津野 スクェアに握ると、「右手のひら」と「フェース面」が同じ方向を向きます。つまり、フェース面と手のひらが連動するため、フェースの動きを把握しやすくなり、球筋をコントロールできるんです。
②フェースよりも体に近く意識しやすいから
津野 体から最も遠い場所にあるクラブヘッドの動きをコントロールしようとするとイメージしづらいもの。フェース面と連動している右手のひらは、体の一部なので感覚のズレが少ないのです。
「右手のひら」を活かしてドローを打ってみよう!
── 腕全体をねじりながら下ろすという動きでフェースの向きが管理できることはわかりました。例えば、ドローを打つためにはどうすればいいでしょう?
津野 ねじるタイミングを早くします。つまり、ダウンスウィングの早い段階で手のひらを返すこと。ただし、その前に気をつけたいポイントがあります。
── 何でしょうか?
津野 バックスウィングで右腕全体を外側に回すこと。ドローを打つときはとくに、ダウンスウィングでインサイドにクラブを下ろさなければいけません。そのためにも、右腕を外側に回す動きが必要なんです。
── では、右手のひらを早いタイミングで返すというのは、具体的にいつですか?
津野 切り返しと同時にパタンと返してください。右手が腰の高さに下りたときは、手のひらがボールを向いているのが正解。右手のひらの“目”でボールを見続けるイメージです。
ドローは、切り返しと同時に右腕を内側へねじる
右手のひらがボールを見ているイメージ
【アドレス】フェースは目標、体はややクローズ
津野 スタンスを目標方向に真っすぐ構えると、ただ左に引っかける球になってしまう。そうならないために、フェース面は目標を向け、体は右に向ける。出球か右になり、左に戻ってくるドローが打てます。
【ポイント①】バックスウィングで右腕を外側に回す
津野 バックスウィングでは右腕の付け根から腕を外側に回すことが大切です。しっかり外側に回しておくことで、ダウンスウィングで内側にねじりやすくなる。手先だけで腕を回旋させるとアウトサイドイン軌道になりやすいので注意しましょう。
【ポイント②】腕全体を使ってねじる
津野 腕をねじるときは、手先だけで動かすのではく腕全体を使うことが大切。右腕の付け根からねじることで、右わきを締めたまま下ろすことができます。手先だけで腕を回旋させるのはミスの原因です。
注意! 左に飛びすぎる人は右足の前で返すくらいでいい
津野 右腕を回す力が強い人は、切り返しで手のひらを返すと左に曲がり過ぎてしまう。その場合は、手のひらを倒すタイミングを若干遅らせること。右足の前で返す意識を持tちましょう。自分の腕の回旋スピードに合うタイミングを見つけることが大切です。
右手がうまく使えれば簡単に球を操れる!
フェードを打とう! 右腰の高さまで「手のひら」は上を向く
── 続いて、フェードの打ち方を教えてください。「右腕のローテーションのタイミングを変えるだけ」で球筋を変えられるということは、右手のひらを返すタイミングを遅らせればいいんですよね?
津野 そのとおりです。
── ドローでは切り返しと同時でしたが、フェードはどのタイミングですか?
津野 左足の前まで返さないように我慢してください。
── そんなに遅らせていいんですね!?
津野 トップから右腰の高さあたりまでは、右手のひらが上を向いている状態をキープしましょう。手のひらにぬいぐるみを乗せているとしたら、右腰までは落とさずに腕を下ろす感覚です。そこからインパクトに向かって手のひらを返していきます。
── ひとつ気になる点があります。左足の前でフェースが返るということは、インパクトではフェースが開いている状態ですよね? 球が弱くなりませんか?
津野 いいところに気づきましたね。右手のひらを甲側に折って、手のひらの付け根で押し込む感覚を持ってください。すると、ロフトが立って強い球になりますよ。
強いフェードを打つ「右手のひら」ポイント
【アドレス】ただのスライスにならないために
津野 アドレスでは目標方向ではなく、肩、腰、スタンスは左を向く。目標に対して軌道がアウトサイドインの軌道になり、出球が左になります。フェースがやや開いて当たるぶん右に戻ってくるフェードが打てます。
【ポイント①】左足の前で返すイメージ
津野 右腰のあたりから手のひらが返りはじめて、手元が左足前にきた時に完全に返す意識で振ります。フェースが開いた状態でインパクトを迎えますが、アドレスで目標方向よりも左を向いているため、球筋はフェードになります。
【ポイント②】インパクトで右手を押し込む
津野 左足の前で手のひら(フェース)が返るということは、インパクトではフェースが開いている状態になります。右手を甲側に曲げ、手のひらの付け根で球を押し込む意識を持つと、ロフトが立って強い球が打てます。
【ドリル】両つま先前に置いてボールを打つ
右腕の回旋、右手のひらの動きを覚えやすい
津野 アームローテーションのタイミングを覚えるドリルがこちらです。フェードを打つ際は左足前に球をセットし、手のひらを上に向けたままダウンスウィング。一方、ドローを打つときは右足前に球を置き、切り返しのタイミングで手のひらを返します。
【右足前はドロー】
切り返しと同時に手のひらをパタンと倒し、右足前の球を打つ。ストレートからドローが出ればOK。タイミングが遅れるとスライスが出る。
【左脚前はフェード】
手のひらを上に向けたままダウンスウィング。左足前まで手のひらが返らないように意識しよう。ストレートからフェードが出ればOKだ
腕の使い方を覚える! 右手一本打ち
津野 スウィングの基本動作である右腕を内側に回す動きをマスターします。腰の高さにクラブを上げ、右腕全体を内側にねじりながらダウンスウィング。右わきを開けずに下ろすことを意識しましょう。
週刊GD2019年3月12日より