ドライバーで初速スピードを追及した「M5」「M6」。アイアンもその思想を貫き、ボール初速アップを図っているモデルだ。ドライバーは「フェース面」に飛ばしの仕組みがあったが、アイアンは「バックフェース」を上下に渡す「斜めのライン」にその秘密があるようだ。テーラーメイドの「M」らしい、新テクノロジーを検証していった。

【試打・解説/平野義裕】
スウィング碑文谷内の「クールクラブス」で日夜フィッティングに従事。数多くのヘッドとシャフト性能を知り尽くす

薄いフェースをカバーする、バックフェース「斜めの橋」

「M5」「M6」アイアンで共通するのが、バックフェースに橋を架けたようなブリッジ形状のデザインだ。

通常、フェースを薄くすれば反発力が高まるが、その反面、ヘッド剛性は弱まっていく。薄くするといっても限界があった。ところが「M5」「M6」は、この斜めのブリッジによってヘッド剛性を高めながらフェースを薄くして、初速アップを実現させたという。呼び名も、まさに「スピードブリッジ」。

フェースを薄くするともうひとつデメリットが生じる。それは「打感・打音」が損なわれること。これをクリアするために「ハイブラーダンパー」という振動を減衰させる素材を取り入れたヘッド構造となった。

まずは分解ヘッドで、初速アップ、剛性力、打感、打音の性能を確認。

画像: 薄いフェースをカバーする、バックフェース「斜めの橋」

A. フェースを薄くし反発力アップ
スピードブリッジの効果でフェースを薄肉化。反発力が上がり、ボール初速アップに貢献している。

B. 新素材が打感と大音を最適化
新テクノロジー「ハイブラーダンパー」。薄いフェース等の振動や音の響きを抑え、心地よい打音・打感を生み出す。

C. ホーゼルを削り重量配分を最適化
M5は180度、M6は360度ホーゼルを削り軽量化。ここでの余剰重量を最適な箇所に振り分けている。

D. 360度アンダーカットで外周の反発力アップ
フェース外周を取り囲むように削られた「360度アンダーカット」でフェース外周の反発力と余剰重量を生む。

E. エネルギーを効率よく伝える「スピードブリッジ」
フェースの剛性を高め、ねじれを抑制する 新テクノロジー。フェースの薄肉化や貫通型のスピードポケットを実現させ、ボール初速をアップさせている。

画像: 【スピードブリッジ&衝撃吸収材なし】高音(赤い部分)が発生し、かつ音の響きも長い

【スピードブリッジ&衝撃吸収材なし】高音(赤い部分)が発生し、かつ音の響きも長い

画像: 【スピードブリッジ&衝撃吸収材あり】高音が抑えられてフェース面上でバラつきがない。音の響きも短い

【スピードブリッジ&衝撃吸収材あり】高音が抑えられてフェース面上でバラつきがない。音の響きも短い

F. 余剰重量をソールに集め低重心に
深いキャビティやホーゼルの軽量化による余剰重量をソールに集めることで、ストロングロフトの飛距離と球の上がりやすさを両立。

G. 貫通型スピードポケットで芯を広く
フェース下部の反発力を向上させたことで、アマチュアに多いフェース下寄り打点でも安定して飛ばせる。

【M6アイアン】グースネックでつかまりよし。やさしく飛ばしたい人へ

7Iのロフト:28.5度

画像1: 【M6アイアン】グースネックでつかまりよし。やさしく飛ばしたい人へ
画像: 余剰重量をソールに集中させているので、ストロングロフトながら低重心でビッグボールが打ちやすい

余剰重量をソールに集中させているので、ストロングロフトながら低重心でビッグボールが打ちやすい

ロフトは7番で28.5度と激飛び系ほどではないがストログロフト。グースネック、厚いトップブレード、幅広ソール、大型ヘッドとやさしさ満点だが、「ハイブラーダンパー」により打感と打音の良さも追及。レディスモデルもある。

画像: ボールが上がりやすい「低重心」にこだわっている

ボールが上がりやすい「低重心」にこだわっている

画像2: 【M6アイアン】グースネックでつかまりよし。やさしく飛ばしたい人へ

試打をした平野氏によると、「ヘッドが長いので、構えたときの安心感が大きいです。打ってみるとやさしいし響きもいい。UTを打っているような感覚ですね。ロフトは立っているけど球は良く上がる。これならグリーンでもしっかり止まります」との評価。

【M5アイアン】センター重心でコントロール性能よし。狙い打ちができる

7Iのロフト:30度

画像1: 【M5アイアン】センター重心でコントロール性能よし。狙い打ちができる

ロフトは7番で30度と現在のアイアンとしては標準的。本格派アイアンの雰囲気を醸し出すルックスでありながら、幅広い腕前のゴルファーが使える。「DG」と「NSプロ950GH」2種類のシャフトがある。

画像: センター重心でコントロール性能が高い。スピンが適度に入る

センター重心でコントロール性能が高い。スピンが適度に入る

画像: スウィートスポットはセンターで、打ち込んでも払い打ってもしっかりコントロールして飛ばせる

スウィートスポットはセンターで、打ち込んでも払い打ってもしっかりコントロールして飛ばせる

画像2: 【M5アイアン】センター重心でコントロール性能よし。狙い打ちができる

「最初に感じたのはボール初速の速さ。音は非常に抑えられているのに、弾きがいいんです。トウ側にタングステンが入っているせいか、ヘッドの直進性もすこぶる高いですね。ヘッドの形もきれいで、これなら違和感なく上級者も使えます」(平野)

画像: 「M5は真っすぐ、M6高く上がる」と平野氏。特にM5の直進性には感心した様子

「M5は真っすぐ、M6高く上がる」と平野氏。特にM5の直進性には感心した様子

画像: 「UTや中空モデルのような弾き感」と、スピードブリッジの初速性能を実感

「UTや中空モデルのような弾き感」と、スピードブリッジの初速性能を実感

画像: 超複合ヘッドなのに打感がソフト。「振動吸収材のおかげか、打感もフィーリングも抜群にいいです」

超複合ヘッドなのに打感がソフト。「振動吸収材のおかげか、打感もフィーリングも抜群にいいです」

画像: 「M6はヘッドが大きいけど、ぽってりしていなくて構えやすい。M5、M6ともに弾き感があって飛距離は申し分ありません」

「M6はヘッドが大きいけど、ぽってりしていなくて構えやすい。M5、M6ともに弾き感があって飛距離は申し分ありません」

【平野氏による7I試打データ】

画像3: 【M5アイアン】センター重心でコントロール性能よし。狙い打ちができる
画像4: 【M5アイアン】センター重心でコントロール性能よし。狙い打ちができる

「飛距離はどちらも申しぶんなし。共通のテクノロジーが使われていても『M5』と『M6』では、それぞれ個性が全く違います。『M6』はやさしく飛ばしたいアベレージにいいです。『M5』は直進力を活かしてスコアメークしたい中上級者へ」と平野氏の総評だ。

月刊GD2019年4月号より

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