若くして初優勝を挙げ、注目を浴びるようになった芹澤プロ。国内外の大物選手と同組で回る機会も多かったという。芹澤プロがそこから学んだゴルフ哲学について語ってくれた。
【通勤GD】通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
芹澤信雄プロ
1959年生まれ。ジャンボ尾崎に「世界一パーパットが上手い」と評されたパットの名手。1987~2000年にツアー5勝。その後シニア1勝。飛距離優先時代をショットの質で生き抜く。チーム芹澤ゴルフアカデミー主宰。
数ヤードを欲張って曲げたら意味がない
若いころは、パットの返しのことなんか考えたことなかった。どんなに速いグリーンでもガンガン打てたんです。トム・ワトソンをして「(太平洋御殿場の)この速いグリーンでこれだけ打てるやつはいない」なんて言わしめたくらいですからね。
でも若いころはガンガン打てても、いろんな経験を積んで「失敗の記憶」が積み重なることで、打てなくなってしまうんです。嫌なイメージが少しずつ蓄積されて、どこかでふと気づいた瞬間から打てなくなる。
僕の場合、ジャンボ尾崎さんに「パーパットが世界一上手い」なんて褒められたのがそのきっかけでした。そんなコメントが電波に乗って広がったものだから、雑誌やテレビの取材が来るようになったんです。
そして「どうやって打っているんですか?」って聞かれる。それまで、「どうやって打つか」なんて考えたこともなかったのに、「体重は左右どっちにかかっているの?」とか「右手、左手どっちが主導?」とか聞かれて、それに答えているうちに、自分の発した言葉を自分で意識してしまうようになったんです。
だからふとした瞬間に「あれ、なんか右手が強いな」とか「左に体重がかかりすぎているな」とか思うと気持ち悪くなって、自分で自分の動きを悪くしてしまう。
こういう積み重ねが、心を蝕んで、打てなくなってしまうんです。それでも、シニアの試合に行くと「おお、芹澤は打つなぁ!」なんて言われるんですからね(笑)。
若いころからすごい選手を間近で見てきたことは、僕にとって身の程を思い知らされることでもありました。
特に飛距離面での絶対的な差は、研修生時代から「お前は飛ばない」といわれ続けてきた僕にとって、「この人たちと同じ土俵で勝負しても勝ち目はない」ということをさらに強く印象づけられました。
だからこそ僕は、先輩たちの「曲げるな」という教えを忠実に守りました。飛ばないのならば、精度で勝負するしかない。特にアイアンショットは徹底的に磨いたので、精度には自信があります。相手より遠くから、先にグリーンに乗せてしまえば、プレッシャーをかけられます。
日本マッチプレーに勝てたのも、そういうプレースタイルが幸いしたのだと思います。大事なのは自分のプレースタイルを自分で理解して、身の丈にあったゴルフをすること。飛ばない人は、数ヤードを欲張って曲げるよりも、徹底的に曲げないことを意識するべきだと思います。
【通勤GD・今日のポイント】飛ばないなら、精度重視で勝負
【ポイント①】ドライバーは払って打てば曲がらない
ドライバーショットを曲げないためには、レベルブローでボールを横からとらえることが大事。アッパーブローの方が飛距離は出るが、曲がるリスクも大きい。腰を水平回転させるイメージで、ダウンスウィングでタメすぎないことがポイントだ。
【ポイント②】アイアンはラインを出して低い球で狙う
アイアンショットの精度を高めるには、常に低い球でライン出して狙うイメージが大事。ハンドファーストにボールをとらえたら、手元を低く抑え、アイアンのトウを立てるように、クラブを縦方向に振り抜いていく。ボールをこする上げるようなイメージだ
月刊GDより