【指導/伊澤利光】
いざわとしみつ。1968年生まれ、神奈川県出身。89年プロ転向。ツアー16勝。01年、03年と2度の賞金王。高弾道の美しいフェードボールで、アーノルド・パーマーに「キング・オブ・スウィング」と称賛された逸話を持つ
フェードとスライスは「軌道」と「フェース向き」が違う
スライスはヘッドがアウトサイドイン軌道で入り、フェースが開いた状態でインパクト。
スライスボール…へろへろっと力なく右に曲がる
ヘッドがややインサイドに入ってきて、少しだけフェースが開いた状態でインパクトするのがフェード。
フェードボール…ぐーんと飛んでいきスッと右に切れる
伊澤 同じ右曲がりでも、ヘッド軌道とフェースの開き具合に大きな違いがあるんです。
クラブの進化でフェードの打ち方も変わった
かつて“世界一美しいスウィング”と称賛された、伊澤利光の持ち球といえば、言わずと知れたパワーフェード。でも、全盛期と現在では、フェードボールの打ち方が変わったという。
伊澤 今のドライバーは大型ヘッドで重心距離が長く、慣性モーメントが大きくなっています。つまり、ヘッドがターンしにくくなっているから、昔みたいにフェースの開閉を使った打ち方はできません。テークバックでフェースをシャット(閉じ気味)に上げていくのが、今どきのフェードボールの打ち方の、最大の特徴だと思います。
── テークバックをシャットに上げるためのポイントは?
伊澤 下半身を止めたまま、腕だけでクラブを上げると、バックスウィングでフェースが開いてしまう。下半身からテークバックを始動して、上半身もそれに連動して、同じスピードで回転させていきます。
── 下半身を止めて、上体をねじるのではなく、その場で一緒に回すイメージ?
伊澤 上半身が起き上がって、前傾姿勢が崩れてしまうと、手や腕に頼ったバックスウィングになりやすいから、注意が必要ですね。おへそを右に向けるイメージで、下半身をしっかり回転させていく。この時、左手の甲は地面に向けたまま。これでフェースが開かず、シャットに上げることができます。
【ポイント①】下半身の動きと上半身の動きは連動
伊澤 昔は下半身を固めて、上半身をねじり上げるイメージだったけど、今は下半身と上半身の動きを同調させ、回転で上げていくのが正解。下半身の動きが止まると手打ちになって、アウトサイドイン軌道のスライスしか出ません。
【ポイント②】左手の甲が地面を指したまま上げていく
伊澤 今のドライバーは一旦フェースが開いてしまうと、スクェアに戻すのに時間がかかるから、フェース開閉を極力抑えて打つのが基本。テークバックでは左手の甲をずっと地面に向けたまま、フェースをシャットに上げていきましょう。
肩と腰を一緒に回してインからインに振る
フェードでいちばん大切なのは、ヘッド軌道だと伊澤プロ。
伊澤 フェースの開閉を使わずにややインサイドからボールにコンタクトして、インに振り抜いていく。これが今どきフェードの絶対条件。インからクラブを下ろすには、手元を体から離さずに、体の正面にキープする意識が大事。
切り返し以降の動きも、以前とは変わったという。
伊澤 昔は切り返しでタメを作って飛ばしていたけど、今のクラブでは振り遅れて、ボールが右に飛び出してしまう。腰と肩を一緒に回して、インからインにクラブを振り抜いていく。フィニッシュでは腰が完全に目標を向いて、左足1本で2秒ぐらい静止できるのが理想です。
【ポイント①】手元がシャフトプレーンをなぞるように下ろす
伊澤 ダウンスウィングで手元が体から離れると、クラブはアウトサイドからカット軌道で下りてきます。右ひじを体に引きつけ、手元がシャフトプレーンをなぞるように下りてくれば、クラブをインから下ろせます。
【ポイント②】腰が目標方向を向くまで振り切る
伊澤 腕を体の正面にキープしたまま、腰の回転を止めずに振り抜きます。フィニッシュでは腰が目標を向くのが正解。腕が体の正面から外れると、インパクトでフェースが開いて当たるので、プッシュスライスのミスになります。
【ポイント③】タメを作って飛ばす意識は捨てよう
伊澤 昔はダウンスウィングで胸を右に向けたまま、腰を先に回してタメを作っていたけど、今のクラブでは振り遅れてしまう。左腰と左肩を一緒に回して、あまり深いタメを作らず、シャフトが体に巻き付くイメージで振ります。
伊澤プロのフェードスウィング
週刊GD2019年3月19日号より