【解説/阿河 徹コーチ】
あがとおる。藤本佳則や塩見好輝を指導する傍ら、井山ゴルフ練習場(東京・世田谷)で多くのアマチュアをレッスン。
【フェードの持ち主/塩見好輝プロ】
しおみこうき。1990年生まれ、大阪出身。2018 AbemaTVツアー成績により、19年はレギュラーツアー参戦。持ち球フェード。国際スポーツ振興協会所属。
本物フェードは「インからイン」
ターゲットラインに真っすぐ飛び出して、落ち際にスーッと右に切れる。これがインサイドイン軌道でとらえた本物のフェードだ。
阿河 塩見プロのトラックマンのデータは、まさに理想的なインサイドイン軌道といえます。ボールに対して、ヘッドがゆるやかにインから入ってきて、インに抜けています。
【本物】これが極上フェードのインサイドイン
同じインサイドイン軌道でも、極端にヘッドがインから入ってくるのはダメだという。
阿河 インから入れようとして、ダウンスウィングの途中からシャフトが寝て下りてくるのが原因。インパクトでフェースが開くので、プッシュスライスになります。左を向いてこれを打てば、見た目はフェードですが偽物。データを計測すると、クラブパスが極端なプラス数値になります。チーピンのミスも出やすい人は、その可能性が高いですね。
【偽物インサイドイン】プッシュスライス&チーピンになる
阿河 アウトサイドイン軌道でスライスを打っている人が、インからヘッドを入れようとすると、ダウンでシャフトが寝てしまい、極端なインサイドイン軌道になりやすい。開いたフェースを無理に返せばチーピン。プッシュスライスとチーピンのどちらも出る人は注意。
【注意!】どスライスになるアウトサイドイン
阿河 ボールがターゲットラインよりも左に飛び出して、右に戻ってくるのは、たとえ曲がり幅が小さくてもスライスです。アウトサイドイン軌道でヘッドが鋭角に入るので、バックスピン量が多くなり飛びません。
体を使って左肩を深く入れる
ゆるやかな軌道でクラブをインから下ろすには、トップでのフェース向きが大事。
阿河 極端にインサイドからクラブが下りたり、逆にアウトサイドイン軌道になってしまう人の多くは、トップでフェースが開いています。トップではフェース面が空を向くのが理想です。
シャフトを倒しながら背中側から下ろす
手先や腕でクラブを上げてしまうと、トップでフェースが開きやすいという塩見プロ。
塩見 バックスウィングでは右足の前(上)にくるまで、左肩を深く入れる意識を持っています。手先で上げると左肩の入りが浅くなりやすいので、しっかり体を使って上げていきます。
トップからの切り返しも、インから下ろすための重要なポイントだと阿河コーチ。
阿河 切り返しでシャフトを後ろに倒し、背中側からクラブを下ろしてくるイメージがあるといいでしょう。右手のひらを上に向けたまま、体の回転でダウンスウィング。右手一本の素振りで、その感覚をつかんでください。
【ドリル】右手1本で素振りをしてみよう
阿河 バックスウィングをシャットに上げ、切り返しでループを描くようにシャフトを後ろに倒します。ダウンスウィングでは体にクラブが巻きつくようなイメージで、背中側から下ろしましょう。右手1本で素振りをすると、感覚がつかみやすいですよ。
これまでの説明からアウトサイドイン軌道で打つスライスと、インサイドイン軌道で打つフェードはまったく別物であることがわかった。
実は同じインサイドイン軌道で打つドローは兄弟とも言える間柄で、ダウンスウィングの「胸の向き」で打ち分けるのだという。切り返し以降の動きを解説。
阿河 スライスはアウトサイドイン軌道ですが、フェードはインサイドイン。インパクトでフェースが少しオープンならフェード、スクェアか少しクローズならドローになります。
胸の向きが曲がりを決める
阿河 そして、フェースの向きをコントロールするのが胸の向きなんです。
【フェード】胸が一緒に回っていく
塩見 フェードを打つときは、左肩と左腰の動きを同調させるので、胸も一緒に回っていきます。インパクトでは腰が45度左を向いて、胸はちょうど正面を向くイメージです。
塩見 左肩と左腰を一緒に回転させるので、上半身と下半身の捻転差はそう大きくなりません。ヘッドよりも手元が先行するハンドファーストのインパクトになり、ほんの少しフェースが開いて当たるのでフェードになります。
【ドロー】胸がちょこっと残っている
塩見 インサイドからクラブを下ろしてくるイメージはフェードと同じですが、ドローを打ちたいときは、ダウンスウィングで一瞬、胸が開くのを我慢。違いはこれだけです。
塩見 腰の回転は止めずに、ダウンスウィングで一瞬、胸の開きを我慢することで、手元の動きにブレーキかかり、ヘッドが走るんです。インパクトでは手元とヘッドがほぼ真っすぐになり、ボールにドロー回転がかかります。
【ドリル】左手1本で素振りをしてみよう
塩見 左手1本でクラブを逆さに持って素振りをします。自然とダウンで胸の開きが抑えられるので、感覚がつかみやすいんです。上体が力むとヘッドが走らずにドローが打てないので、体をしなやかに使うイメージを持っています。
インから下ろす感覚は「フック打ち」でつかめる
フェードとドローが兄弟ということは、スライサーがフェードをマスターするのは、少し時間がかかるのか。
阿河 曲がり幅を小さくすればいいだけと思いがちですが、アウトサイドイン軌道を修正するという根本的な治療をしないと、極上のフェードボールは手に入りません。正面から連続写真や動画を撮影してみましょう。フォローで左わきが開いてしまう人は、アウトサイドインのカット軌道になっている証拠です。
インサイドイン軌道に修正するにはどうすればいいのか。
阿河 逆球のフックを打つ練習で、インからクラブを下ろす動きを体に覚え込ませましょう。そこから少し軌道を修正してドロー、そしてフェードの順番でマスターするんです。遠回りに感じるかもしれませんが、スライサーの人にはこれがいちばんの近道です。
【ドリル】逆球のフックで軌道を整えよう
阿河 右足を後ろに引いてクローズスタンスに構え、インサイドアウトに振ってフックを打ちます。スライサーの人はまず、このドリルでフェードを打つのに必要な、インサイドからクラブを下ろす感覚をつかみましょう。
飛ぶフェードに必要! ハンドファーストを身に付ける
最後に、飛んで曲がらない本物極のフェードをマスターするには、ハンドファーストのインパクトが必須になると阿河コーチ。そのための効率的な2つのドリルを紹介してもらった。
【ドリル1】クロスハンドでグリップ
阿河 通常とは両手が逆のクロスハンドでグリップを握ります。このとき左手の小指を右手の人差し指に乗せる「逆オーバーラッピング」にするのがポイント。右手首の余計な動きが抑えられるので、ヘッドが手元を追い越すことはありません。左手でリードする感覚もつかめます。
阿河 ティアップしたボールをドライバーで打ちます。振り幅はハーフスウィング程度でOK。左手の甲をボールにぶつけるイメージでインパクトします。
【ドリル2】長い棒を握ってハーフスウィング
阿河 アライメントスティックとグリップを一緒に握り、アドレスでスティックが体の左側にくるようにハンドファーストに構えます。この状態からハーフスウィングの素振り。右手首の角度がほどけるとスティックが体に当たるので、ハンドファーストインパクトが身につきます。
阿河 フック打ち練習でインサイドイン軌道を身につけること。胸の向きでフェースをコントロールすること。ハンドファーストインパクト。これらをひとつずつ体に染み込ませれば、本物フェードは誰でも打てるようになります。(了)
週刊GD2019年3月19日号より
伊澤利光プロのフェードレッスンも見てみよう↓