2014年に「飛び系アイアン」のコンセプトをさらに進めて、「プラス2番手の飛び」を謳い文句にヒットしたのが、ヤマハ「UD+2」アイアンだった。
その最新モデルが昨年(2018年)発売されるのに合わせて、ダンロップは「ゼクシオ」の飛びの部分を強調した新コンセプトアイアン「ゼクシオクロス」を発売。
つるやからは7番アイアンでロフトが「24度」という、飛びに特化した超ストロングロフトアイアン、「アクセルDI₋X」が発売された。
「激飛びアイアン」は、もはや各メーカーが発売するアイアンのひとつのカテゴリーとして、すっかり定着している。
これらのアイアンに共通しているのは、「高初速」をウリにしていること。たとえば「インプレスUD+2」は、フェース面からソール下部までが「L字」のパーツでできており、そのパーツのソール部分を前モデルよりも伸ばすことで、フェース下部のたわみを増加させて、「ルール限界に迫る反発性能」を引き出しているという。
インプレスUD+2
7番アイアンのロフト:26度
長さ:37.75インチ
重量:353g
バランス:C9
同様に、「ゼクシオクロス」も、「ゼクシオ史上最薄」というチタンフェースの反発性能に加え、深くえぐられたポケットキャビティ部のたわみによって高初速を実現。
「アクセルDI₋X」は、前述の超ストロングロフトに加え、バックフェース部にカーボンを使用した中空構造によるたわみによって、やはり超高初速アイアンになっているという。
7番アイアンが飛ぶようになっても、難しくなったり曲がるようになったのでは本末転倒だが「、イ ンプレスUD+2」は、トップブレードから重量を削り取って、それをソール部後方に再配分するこ とで、上がりやすさと方向性を担保している。さらに、前モデルよりもトウ側を高くしたりソールを 薄くし、より「アイアンらしいデザイン」まで追求しているというから恐れ入る。
「ゼクシオクロス」も同様に、フェースとネック部から重量を削り、その分のウェートを主にトウ側下部に配置して、「深・低重心+高慣性モーメント」のアイアンに仕上げた。このあたりは、「ゼクシオ」の得意分野といったところ。
ゼクシオ クロス
7番アイアンのロフト:25度
長さ:37.75インチ
重量:356g
バランス:D0
さらに、「ア クセルDI₋X」は中空構造自体のやさしさに加え、バックフェース部にウェートを配置し、深重心と高慣性モーメントを実現。
アクセルDI-X
7番アイアンのロフト:24度
長さ:37.75インチ
重量:355g
バランス:D1
3モデルを試打した永井延宏コーチは、「はっきり飛びを感じられる一方で、クラブトータルのバランスがいいので、方向性や、やさしさの面では、従来の『7番』と変わらない印象です。1ランク上の弾道が楽に手に入ります」と証言した。
ユーティリティが苦手な人には、激飛び系アイアンがいい
最新の「激飛びアイアン」が、飛んで、やさしいのはわかったが、7番アイアンのロフトが「24度」というのは、メタルドライバー時代なら4番アイアンに近い。
さらに長ければ、飛ぶのはある意味「当然」だ。しかし「長さというのはヘッドの大きさとセットで考えるべきで、激飛びアイアンはヘッドが大きいので、それに合わせた長さともいえます。ドライバーもヘッドの大型化で長くなりましたが、それと同じです」と永井コーチ。
「おそらく『激飛び系』の7番は、現状で考えられる、地面から打つクラブとしての最高パフォーマンスを発揮するアイアン(番手)でしょう。ロフトが4Iや5I並みに立っていても、それに『7番』と刻印されていることによる心理的安心感というのもあなどれません」
ロフトが立っていようが何だろうが、「7番」だと思えば気楽に打てる。それが余計な力みを取り除き、スムーズなスウィングを促すことで、ミスを減らす効果があるということだ。
「激飛びアイアン」に弱点はないのか?
永井コーチは「ロフトが立っていることで、ピッチングウェッジ(PW)から下にロフトの空洞ができてしまうのが難点」と指摘。
「激飛び系」のPWは、ロフトが38度くらいで、単品売りのPWのロフトは48度前後が一般的。となると、42~44度のクラブを1本、間に入れたいが、そのあたりのロフトで単品売りを探すことは難しい。
【3モデルのロフト設定(度)】※赤字はセット売り
「いっそのことSWまでのセットで『激飛び系』を購入し、必要があれば一部だけ単品ウェッジに買い替えるという考え方もありだと思います」と永井コーチ。
また、「激飛びアイアン」の飛距離は、人によってはユーティリティやショートウッドにも匹敵するものなので、そういう意味合いのクラブとして、セッティングのなかに組み込む手もある。
「ユーティリティが苦手という人は意外に多いので、そういう人が『激飛び系』の7番や5番を、代わりにバッグに入れておくと、14本全体のつながりがよくなる可能性は高いです」
飛ぶ人も飛ばない人も、まずは試してみることで、自分なりの活用法を見つけられそうだ。
週刊GD2019年4月2日号より