ルール改正で「ピン差しパット」がOKになった。PGAツアーや女子トーナメント中継でも、差したまま打つシーンが増えている。単純に考えればかなり強めに打っても入りそう。だがそこには意外な落とし穴があると、パター専門の国際指導者資格を持つ坂井昌司プロは言う。パット名人を目指するなら、まずはピン差しパットの勘違いを改めることから始めよう。
画像: 【解説/坂井昌司プロ】 1974年生まれ。パット専門の国際指導者資格CPIを持つPGAティーチングプロとして活躍中

【解説/坂井昌司プロ】
1974年生まれ。パット専門の国際指導者資格CPIを持つPGAティーチングプロとして活躍中

「カップ先30センチ」よりも「カップ先50センチ」の強気タッチが入る

画像: 「ピンを差したままパッティングすることで、これまでとはカップ周りの状況が変わりました」と坂井プロ

「ピンを差したままパッティングすることで、これまでとはカップ周りの状況が変わりました」と坂井プロ

ルールが変わって「ピン差しパット」がOKになり、すでに実戦で試している人も多いだろうが、 ピン差しパットは入りやすいのだろうか?

一般的に考えれば、ピンが差してあることで多少強めに打っても入りそうな気はする。物理的に言えば、ボールがピンに当たった衝撃で転がりの勢いが吸収されるから、カップインの確率は高まるだろうと推測できる。

ただし、すべてのゴルファーがピン差しの恩恵 を受けてスコアがよくなるかというと、そうでもなさそうだ。PGAティーチングプロで、パット専門の国際指導者資格(CPI)を持つ坂井昌司プロに聞いた。

坂井 従来のパッティングの理想は30センチオーバーの距離感で打つことでした。ルール変更により、ピン差しでのパットがOKになったことで、ボールがピンに当たることを前提にすると50センチオーバーまではカップインするというのが、私の経験から引き出した答えです。

ただし、坂井プロの答えは、ここでおしまいではない。むしろここからが肝心だ。

ピンを差したまま拾う人が増えるため、カップ回りの凹凸が強まる

画像: 「ピン差しパットが普及しつつある今では、カップ先50㎝に止める意識が重要です」(坂井プロ)

「ピン差しパットが普及しつつある今では、カップ先50㎝に止める意識が重要です」(坂井プロ)

坂井プロは50センチオーバーで打たないと、逆にカップインしない恐れもあるという。

坂井 ピン差しパットでカップインしたボールは、当然ですが、ピン差しの状態でカップの底から拾い上げますよね。ピンが差さったままだと拾いにくいので、カップのフチが荒れやすく、さらにカップ周りで屈んでいる時間が長くなるので、足の重みでカップ周りが窪みやすい。その影響を受けないためには、ある程度しっかり打つ必要があります。

画像: 新ルールでカップの周りは凹凸だらけになっていることも。カップから30㎝以内は、プレーヤーの体重で以前より傷んでいると思ったほうがいい

新ルールでカップの周りは凹凸だらけになっていることも。カップから30㎝以内は、プレーヤーの体重で以前より傷んでいると思ったほうがいい

画像: ピンを差したままだとボールを拾い上げにくく、これもカップまわりの地面が凹む原因となる

ピンを差したままだとボールを拾い上げにくく、これもカップまわりの地面が凹む原因となる

凹凸に負けない強さが「カップ先50センチ」

坂井 注意点はまだあります。ピンに当てる意識だと、方向性はよくなりますが、距離感は雑になりがちです。「ピンが差さっているから」という意識で打つと、大オーバーの事故をまねく確率も高まります。

坂井 ピンを抜いていればカップに「ボールを落とす」意識になりタッチが繊細になりますが、ピンが差してあるとどうしても雑になります。それを防ぐためにはピンに“当てる”というよりも、「カップの奥50センチに仮想のカップをイメージ」し、そのカップに“止める”意識で打つこと。

いつでも真っすぐ打てる上級者ならまだしも、方向性の安定しないアマチュアの場合、そもそもピンに当たるのかも定かではない。とくに下りのパットではパンチが入ると致命的なミスになりかねないので余計注意したい。

画像: 強めに打つなら、真っすぐ転がる軌道を作りやすいマレット型がおすすめです(坂井プロ)

強めに打つなら、真っすぐ転がる軌道を作りやすいマレット型がおすすめです(坂井プロ)

週刊GD2019年4月2日号より

ピン差しパットの注意点はまだある。坂井プロのパットレッスン次回も随時配信。ご期待ください

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