スコアメークに欠かせないコースマネジメント。なかでも重要なのが「番手選び」。アベレージゴルファーへのコースマネジメントを研究している伊丹大介プロは「残り距離だけで番手を選ぶからスコアを崩すんです」と言う。1ラウンドで「5打」も変わるという番手選びのコツをさっそく聞いてみた
画像: 【解説/伊丹大介プロ】 東北福祉大ゴルフ部出身。スウィング理論に精通するだけでなく、マネジメントやメンタルの知識も豊富。理論派プロとして人気を集める

【解説/伊丹大介プロ】
東北福祉大ゴルフ部出身。スウィング理論に精通するだけでなく、マネジメントやメンタルの知識も豊富。理論派プロとして人気を集める

技術の引き出しが「少ないこと」が武器になるマネジメントがある

伊丹大介プロが考える究極のマネジメントは、「できることだけをやる」。見方を変えれば「できないことはやらない」ことだ。

「スコアが90台ぐらいの方は、技術の引き出しはそれほどありませんよね。でも、少ないことは実は大きな武器なのです。なぜなら迷う必要がないから。それを活かして使う番手を選択できれば、いつもどおりのスウィングで、確実に5打は縮みます」と伊丹プロ。

では、スコアが伸びないゴルファーの番手選びは何が間違っているのか?

「おそらく皆さんの番手選びの基準は、「距離」がすべてになっているはず。残り距離は重要ですが、すべてではありません。マネジメントには考える順番があり、番手選びは最後にやることなのです」

コースマネジメントには考える順番がある

まずやるべきは上空から俯瞰でみたホール図を確認すること。ピンの位置、グリーン形状、ハザードの位置と、カップ側から戻って情報を集める。そこから生まれるのが“攻略ルート”。それで初めて、どこを狙っていくかが決まる。番手はこの順番で決めるもの。

画像: 技術の引き出しが「少ないこと」が武器になるマネジメントがある

コースを俯瞰するクセをつける

さらに距離の考え方もプロとアマでは大きく違うと伊丹プロはいう。

「皆さんの狙う距離は一点ですが、プロはエリアでとらえます。ピンまで残り150Yとして、前後左右、あの辺まではOK。あの先はダメといったように番手を選びます。だからグリーンを外してもパーが拾えるエリアを含めてショットします、ナイスショットの許容範囲を広めに作っているのです」

「ピンまでの距離だけを打ちたがると、ナイスショットがミスになることだって少なくありません」

クラブの特性を知り成功率の高い番手を考える

さらにクラブの特性を知ることも賢い番手選びには不可欠だ。

「たとえばロフトが寝るほど、フェースは左を向きます。つかまりやすく、ボールが左に飛びやすいということ。これを知るだけでも、番手選びは賢くなりますし、当然スコアもよくなります」

画像: 短い番手ほどロフト角が大きくなり、フェースは左上を向くようになる。この構造を知らないアマチュアは多いと伊丹プロは言う。ハンドファーストでインパクトする技術を覚える前にフェースの向きを知ることが大切だ

短い番手ほどロフト角が大きくなり、フェースは左上を向くようになる。この構造を知らないアマチュアは多いと伊丹プロは言う。ハンドファーストでインパクトする技術を覚える前にフェースの向きを知ることが大切だ

画像: パターが一番ボールに当てやすいように、ロフトが立ったクラブほど球にコンタクトさせやすい。反対にロフトが寝たクラブはボールを上げやすいが、歯が出ていてトップになりやすい。ロフト角は番手選びの大切なポイントだ

パターが一番ボールに当てやすいように、ロフトが立ったクラブほど球にコンタクトさせやすい。反対にロフトが寝たクラブはボールを上げやすいが、歯が出ていてトップになりやすい。ロフト角は番手選びの大切なポイントだ

番手選びで重要なのは?
各番手の80%ショットのキャリーを知ること
「各番手のキャリーの距離を知ることがなによりも重要。ボールの高さ、落下地点の形状、ライの状況でランの距離は変わります。ちなみに距離はフルショットの距離ではなく、70~80%の力感で振ったときの距離を基準にします」

状況別 セカンドショットの番手選び

では実戦では、クラブの特性を利用して、どう番手選べばいいのだろう。

伊丹プロは、握る長さを「通常」と「短く」にするだけで、マネジメント力が格段に上がる、と語る。「通常の長さで握るとシャフトのしなり戻りが発生し、フェースが左を向きロフトが寝ます。結果、ボールがつかまって上がり、右に飛びにくくなります。逆に短く持つと、シャフトのしなり戻りが少なくなり、フェース、ロフトとも構えた状態に近いままインパクト。その結果、ボールがつかまりにくく、低いボールが出て、左に飛びにくくなります」

短く持ったほうがボールがつかまるのでは?そう思った人も多いだろう。だが、同じスウィングと仮定すれば、クラブの特性から物理的にそうなる、と伊丹プロ。

【状況①:左か右に危険のあるグリーンを狙う】

画像1: 状況別 セカンドショットの番手選び
画像2: 状況別 セカンドショットの番手選び

「重要なのは状況によって打ち方や技術を変えることではありません。アマチュアがそれをやると大きなミスにつながります。であれば、 どんな状況でも徹底して同じスウィングをすること。変えるのはあくまでグリップの長さだけで、それも“通常の長さ”と“短い”の2種類だけです」と伊丹プロ。

つまり右に危険なエリアがあれば、通常の長さで持ち、左に危険なエリアなら、短く持てばいい。グリップの長さで距離も変わるから、それに合わせて番手を変えればいい、というわけだ。

【状況②右か左に行かせたくない傾斜地から打つ】

画像: 右に行きやすいつま先下がりは「短い番手を通常で持つ」といい。短い番手はつかまりがいいので右にいきにくくなる

右に行きやすいつま先下がりは「短い番手を通常で持つ」といい。短い番手はつかまりがいいので右にいきにくくなる

画像: 左に行きやすいつま先上がりで、左にだけは行かせたくないなら「長い番手を短く持つ」のが正解。

左に行きやすいつま先上がりで、左にだけは行かせたくないなら「長い番手を短く持つ」のが正解。

【状況③ 球を上げられない林の中から出す】

画像: 低いショットを打つときは、ロフトの立ったクラブから考える

低いショットを打つときは、ロフトの立ったクラブから考える

木と木の間を狙うショットは、ロフトの立ったクラブから状況に応じて最適なものを選びます。横に少ししか出せなければパターを選択し、ショットの握り、ショットの打ち方をすれば簡単に出せます。

最後に、「番手間の微妙な距離もグリップの長さだけで打ち分けられます。短く持ったぶん、ボールに近づき小さく構え、あとはリズムも振り幅も同じにして、しっかりと打てばいいのです」と伊丹プロ。
たとえば7Iで150Y、8Iで135Yだとしよう。その中間である143Yは、7Iを短く持って小さく構え、いつものようにしっかり打つ。リズムやスウィングの大きさ、インパクトの強さを変える必要はないのだ。

スコアアップにつながる2打目の戦略的番手選び。次回のラウンドでは早速実践してみてはいかがだろう。

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