26歳にして日本の頂点に立った今平周吾。ショットの精度、グリーン周りの上手さは定評あるが、何より秀でているのはその精神力。ときにふてぶてしいほどの勝負強さをみせ、ライバルに無言のプレッシャーをかける。マスターズ初出場の「大胆不敵」な若者の心・技・体に迫る。
画像: 2018年賞金王 今平周吾 2014年下部ツアーで賞金王になり、翌年にはシード権も獲得、JTカップにも出場。17年には関西オープンで初優勝を果たし、18年には賞金王。2019年マスターズ初出場

2018年賞金王 今平周吾
2014年下部ツアーで賞金王になり、翌年にはシード権も獲得、JTカップにも出場。17年には関西オープンで初優勝を果たし、18年には賞金王。2019年マスターズ初出場

【今平の技】左手の甲がフェース面。それだけ

GD 今平プロのショット精度は、他のプロの間でも評判になるほどです。それだけの安定感あるスウィングは、どのようにして生まれたんですか?

今平 正直、今までスウィングで悩んだことがないんですよ。スランプというのも一回もない。でもゴルフを始めたころから悩んだことがないわけではなく、実のところ中学生のときに、いろいろとしっくりくるスウィングはないものか探したんです。右わきを締めて打ったりとか、右ひじを体にくっつけたりとか、いろいろと試してみました。その中でいちばん良かったのが、「左手の甲をフェース面と考え、その左手を上げて下ろすだけ」という打ち方にたどりついたんです。左手の甲をインパクトでスクェアに戻して、甲をボールにぶつけるイメージですね。そうすると高い確率で真っすぐいく。その打ち方を発見してから、もう自分の中でスウィングに迷いがなくなりました。

画像: スウィングに悩んだことはない。さらに再現性を高める努力をしている

スウィングに悩んだことはない。さらに再現性を高める努力をしている

GD なるほど。考え方がすごくシンプルですね。

今平 試合が始まるとスウィングのいろんなことは意識できないですからね。できるだけ試合中は考え方をシンプルにしたいんです。左手甲だけなら簡単でわかりやすいですよね。中学生のころも、「簡単でわかりやすい打ち方ってないかな」と探すところからスタートしたのを覚えています。

GD マスターズ出場も決まりまして(取材時点)、世界に出る機会が増えて、自分のショット力がどれくらいのレベルにいると感じますか。

今平 世界ランキング65位にいますけど(3/10日現在)、正直その順位のレベルと言う実感はないですね。自分より上手い選手はもっといる。最近は特に飛距離差も感じていて、自分が飛んだなぁというときでも30~40㍎は違います。ですからもっと飛距離は欲しいなと思いますね。

画像: ショートゲームの上手さも定評あり、ベテランプロも舌を巻く技を見せる

ショートゲームの上手さも定評あり、ベテランプロも舌を巻く技を見せる

課題は飛距離よりも再現性

GD そうすると今の課題は飛距離を伸ばすこと?

今平 飛距離は結果的に伸びればいいと考えています。もちろん伸ばしたいですけど、無理して伸ばそうと思うとスウィングが壊れそうな気がします。課題にしているのは飛距離よりむしろ再現性ですね。もうちょっとショットの安定感が欲しい。再現性を高めていけば、結果的に飛距離も方向性もついてくると考えています。

画像: ヤーデージメモも見るが、「最終的に見た目の感覚を重視します」と今平

ヤーデージメモも見るが、「最終的に見た目の感覚を重視します」と今平

GD さらなるショットの安定感ですか!? 何か自分の中で目標とする基準はありますか?

今平 アイアンでもっとピンを差していきたいんです。今は9番アイアンで左右3ヤード以内に収まっているんですが、それを2ヤード以内にしたい。海外に出ると、その左右1ヤードの誤差を縮めないと、勝負できないと感じています。そのためには、まずは再現性を高めることだと思って練習に取り組んでいます。

画像: 左手の甲を意識したまま左手を上げて下ろすだけというスウィング。考え方はシンプルだから、試合中の迷いが少ない

左手の甲を意識したまま左手を上げて下ろすだけというスウィング。考え方はシンプルだから、試合中の迷いが少ない

「ライ角を考えたときに短く握るのがしっくりきます」

画像: 短く握ってミート率を上げるというよりも、構えたときのライ角がしっくりきた。以来ずっと短く握る

短く握ってミート率を上げるというよりも、構えたときのライ角がしっくりきた。以来ずっと短く握る

【今平の体】疲れてくると骨盤が浮きだす

GD オフのグアム合宿で体重が2キロ増えたと聞きました。昨年から比べて5キロ近く増えていますが、トレーニングの重要性とは?

今平 さきほど「再現性を高めたい」と言いましたけど、そのためには、ショットの練習ではなくて、トレーニングが大事だと考えています。シーズン中にスウィングが悪くなることはありますが、それはスウィングの問題ではなくて、体の動きが悪くて調子が落ちていると考えているんです。実際に練習を休んで体の調子を整えると、スウィングが元に戻ることが多いですからね。

「トレーニングは飛距離のためじゃない再現性のためなんです」

画像: どのトレーニングをするにも「全身を使った動きを意識させている」と渡辺トレーナー。120 キロのおもりでスクワットができるようになったのも、全身の筋力がついたからと言う

どのトレーニングをするにも「全身を使った動きを意識させている」と渡辺トレーナー。120 キロのおもりでスクワットができるようになったのも、全身の筋力がついたからと言う

GD どの部分を意識して鍛えているのでしょう?

今平 下半身ですね。シーズン中は疲労がたまってくると、骨盤が浮いてきやすく、股関節が入らなくなるクセがあります。太もも、お尻など下半身を強化するメニューをこなしました。試合中でも疲れているときは、朝に球を打つよりウォーミングアップに時間をかけるようにしています。

画像: 「ここまで追い込める選手は凄い」と渡辺トレーナー。グアム合宿で体重が2キロ増量

「ここまで追い込める選手は凄い」と渡辺トレーナー。グアム合宿で体重が2キロ増量

【今平の心】いい意味で「適当」の意識へコントロール

GD 優勝争いの場面でも、いつも平常心でプレーしているように見えますが、余り緊張しないタイプですか。 

今平 最近は緊張しなくなりましたね。昔は久々の試合の朝イチは震えたりしていましたから。今は“緊張しないような意識コントロール”を心がけて、プレーしています。

画像: 若き賞金王を陰で支えている二人。左がエースキャディの柏木一了さん、右がトレーナーの渡辺研太さん。二人に全幅の信頼を置く

若き賞金王を陰で支えている二人。左がエースキャディの柏木一了さん、右がトレーナーの渡辺研太さん。二人に全幅の信頼を置く

GD なるほど。どうやって意識を変えているんですか?

今平 「どうでもいいや」とか「なんとかなる」など、その局面を考えすぎず、いい意味で適当にやると緊張しないんです。皆さんも調子が良くないときってプレーをアバウトにやることが多いと思いますが、優勝争いの場面でもあえてその感覚を持って、自分の意識をコントロールしているんです。

GD 海外に行く機会も増えましたが、アメリカのPGAの試合でも緊張しないですか?

今平 海外でも変わりはないですね。英語で話しかけられてもニコニコしていればいいし。

画像: コースから離れると26歳の青年に戻る。食事中にスウィングの話を向けると、雄弁に語り出す

コースから離れると26歳の青年に戻る。食事中にスウィングの話を向けると、雄弁に語り出す

GD オーガスタの初日の1番ホールは?

今平 確かに、ティショットでボール置くときに、手がプルプル震えてそうですね(笑)。あとタイガーともし回れる機会ができたら、そのときも緊張するような気がします。

「優勝争いでも平常心。緊張させない術を心得ています」

画像: メキシコ選手権では高地で球が飛ぶため、アイアンの距離感を合わせるのが苦労したが、すぐ対応。ピンに絡むショットを何度も見せた

メキシコ選手権では高地で球が飛ぶため、アイアンの距離感を合わせるのが苦労したが、すぐ対応。ピンに絡むショットを何度も見せた

GD 最後に今シーズンの目標を聞かせてください。

今平 国内3勝、目の前の試合に1試合1試合集中していきたいです。賞金王はその結果ついてきたら嬉しいです。

画像: 2年前にヤマハと契約

2年前にヤマハと契約

画像: ニューモデルのRMXプロトタイプで挑む

ニューモデルのRMXプロトタイプで挑む

画像1: 【今平の心】いい意味で「適当」の意識へコントロール
画像: 「アイアンは打感が命」という今平のお気に入りRMX116 ツアーブレード

「アイアンは打感が命」という今平のお気に入りRMX116 ツアーブレード

画像: 長年使っているウェッジ以外にRMXの52度と60度を自分好みに作り上げ、テストを重ねる

長年使っているウェッジ以外にRMXの52度と60度を自分好みに作り上げ、テストを重ねる

月刊GD2019年5月号より

画像2: 【今平の心】いい意味で「適当」の意識へコントロール

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