海外ではストロング&シャットが増加中
D・ジョンソンやB・ケプカほどの超シャットではないにしろ、現在、PGAツアーでは、ストロンググリップ&シャットフェース使いで、フェースローテーションを抑えるスウィングを採用する選手が増えています。これは特に最新のドライバーとの相性が良いためです。
クラブヘッドが大きく、重心距離が長い現代のドライバーは、一度フェースが開くと戻りにくいという性質を持っています。それだけに、フェースの開閉を抑えたスウィングのほうが再現性、安定性が高いわけです。
また、ハンドファーストに打つことで当たりが強くなり、初速がアップして飛距離が出やすくなることもストロンググリップ採用のひとつでしょう。
J・ローズなども数年前にスクェア系グリップのスウィングからストロング&シャットのスウィングに改造していますが、この流れは今後も続いていくと思われます。(内藤)
超ストロンググリップの代表選手
ストロンググリップ代表選手
その他のストロング系グリップ選手
●T・フィナウ ●B・ワトソン ●P・リード ●P・ミケルソン
スクェア系グリップ代表選手
その他スクェア系選手
●F・モリナリ ●J・ラーム ●J・デイ ●A・スコット
手先が器用だから? 日本人にはスクェア系グリップがいまだ多い
星野陸也プロ、時松隆光プロなどはストロング&シャット、藤田寛之プロは日本における超ストロングのパイオニア的存在ですが、他にはダスティンのようなストロンググリップのトッププレーヤーは見当たりません。(内藤)
これは韓国の選手なども同じで、日本ツアーではニュートラルなフェース使いで、体の正面でボールをとらえるスウィングが、いまだ主流と言えるでしょう。もちろん将来的には、日本ツアーにもストロング&シャットの選手は増えてくると思われます。
その他のスクェア系選手
●池田勇太 ●市原弘大 ●チェ・ホソン ●片岡大育 ●藤本佳則
しかし、米ツアーほど主流にはならないと、私は考えています。なぜなら、ストロンググリップが強くなるほど、球に細工をしにくくなるからです。その点、スクェアグリップは細工がしやすく、しすぎることもありません。
小柄で手先が器用で、それを武器にしている日本やアジア系の選手にとっては、スクェア系スウィングは大きなメリットであり、それが完全になくなることはないと思うのです。(内藤)
その他のストロング系グリップ選手
●藤田寛之 ●秋吉翔太 ●川村昌弘 ●重永亜斗夢
内藤コーチに質問
【質問1】 ストロング&シャットは最近のスウィング?
【回答1】 実は昔からあったんです。1960年代後半~80年代に活躍したL・トレビノ、「史上最強のストライカー」と呼ばれたM・ノーマン(1929~2004)などはストロング&シャットの原型とも言えます。また、1998年のPGAツアー賞金王に輝いたD・デュバルもストロング&シャットの草分けです。
【質問2】 ストロング&シャットはアマチュアには難しい?
【回答2】 いいえ。逆におすすめです。ストロング&シャットのスウィングは、パワーがないとできないと思われがちですが、実は飛距離に悩む人や女性にはおすすめのスウィングです。ダスティンほどシャットにする必要はないので、ちょいストロング&ちょいシャットから試してみてください。
【質問3】 どんな練習をしたらいいですか?
【回答3】 アプローチをしっかりやりましょう。グリップに合ったスウィングを身につけるには30ヤード程度のアプローチで、正しいインパクトゾーンの動きを練習するとよいでしょう。スクェア系であれば「スピース」、ストロング系であれば「マキロイ」がお手本。インパクトゾーンの動きがよくなれば、自然にその前後の動きもよくなってくるはずです。
【スクェア系】J・スピースのアプローチ
テークバックとフォローでトウアップし、グリップエンドが体から外れない動きを参考にしよう。
【ストロング系】R・マキロイのアプローチ
ダウンからフォローまで、甲側に折った右手首の角度を一切変えず、胸の回旋だけで打つ動きをマネしよう。
スクェアとストロングではフォローの感覚が違う
── スクェア系とストロング系では、フォローの感覚も違うということですが。
内藤 スクェア系は、インパクト後にヘッドが手元を追い越し、体とクラブが引っ張り合うような瞬間があります。「フォローではヘッドに引っ張られて体が回る」などと言う人がいますが、それはスクェア系の言葉だと思ってください。
── では、ストロング系はどんな感覚なのでしょう。
内藤 ストロング系は、フォローで手元が胸のあたりに来るまで、ずーっと胸がクラブをリードして、グリップエンドがヘッドよりも先行している感覚がほしいんです。このフォローの違いはとても大きいので、しっかりと理解してもらいたいですね。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa
週刊GD2019年4月23日号より