「よっしゃ! と思って固めようとした瞬間にもうあきまへん」。今週の通勤GDは、高松志門プロと奥田靖己プロによる名師弟「一行レッスン」です。その第二十六話。
【通勤GD】通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【ゴルフ芸人 高松志門】
1951年生まれ。橘田規に師事し水平打法から独自の理論を展開。多彩な技から‟ゴルフ芸人”の異名をとる。
【志門流一番弟子 奥田靖己】
1960年生まれ。絶妙な寄せ技を武器に93年日本オープンで尾崎将司を退け優勝するなどツアー6勝、シニア2勝
高松 ちょっとスウィングがおかしくなっても、ラウンド中に「これや!」いうようなショットが出れば、スウィングっちゅうのは一発で変わる。
奥田 はい。ショットでもパッティングでもそうですよね。
高松 ショットの場合は特にそうやね。
奥田 でも「これや!」と思うて良うなっても、それがまた続かないのは何でですかね。
病気に理由はあっても健康に理由はない。
ナイスショットのワケを探すと病気が始まる
高松 それはよかった理由を考えてしまうからよ。
奥田 なるほど。ナイスショットに理由はないですからね。
高松 うまくいっている理由を考える必要はないのよ。だって上手くいってるんやから。自分で無理やり病気作ろうとせんでもええやん。
奥田 病気には理由はありますけど、健康に理由はないですもんね。
高松 ジョギングしてるから健康やとか、ゴーヤ食うてるから健康やとか言う人おるもんな。沖縄だって病気で悩んどる人はいるでしょ。健康な理由なんて誰もわかるかいな。
奥田 結局、そういうことをみなゴルフで考えてしまうんでしょうね。健康な人は理由を探さんでもええのに、普通はちょっと当たりだしたら、「よっしゃ!」となって、その理由を考えて何とか固めようと思うてしまう。
高松 そんなもん絶対に固まらへんから。固めたろう思うた瞬間にもうあかん自分が始まってるわ。
奥田 ナイスショットの理由を勝手に考えて、せっかくうまくいっているところに新しいものを付け加えてしまうんですから、また悪くなるわけですよね。
高松 それに「固める」いうことは作り物やから。作り物はあかんよ。
奥田 ぼくはスウィングしている自分がわからんようになりたいんですわ。我がなくなって、ただクラブさえ動けばええ思うんですけど、まだ時々どんなふうに打ったか、スウィングした後にわかってまう。わかる言うのはどっかで形を作っているということですからね。
高松 こないだあるオーケストラの指揮者が、俺のゴルフ見たいいうてきたんよ。ゴルフのゴの字も知らん人が俺のスウィング見て「何もしてない! 何もない!」言うてくれたわ。
奥田 やっぱりゴルフを知らなくても、“スウィングのもつれ”とか“残りカス”がないのがわかるんですね。
高松 スウィングはただ“もつれ”さえなかったらええねん。もつれんかったら、何も起こらないし球もどこもいかん。
スウィングのチェックポイントはなければないほどええ
奥田 もつれないというのは、気持ちも体の動きももつれないいうこと。もつれんかったらそれなりにクラブは動きます。
高松 そうやね。ほとんどの人はスウィングがもるれるから、“残りカス”が出る。食べカスで口中一杯になっとるようなもんや。
奥田 もつれないために一番やらないかんことって何ですかね。
高松 それもう“クラブを振る”という一念しかないよ。
奥田 なるほど。方向とか進とかスコアとか、そういうものがちょっとずつ“振る”ということから意識を離していくんですね。
高松 こうした敵が何で敵なのかさえ気が付いていない人が多いからな。
奥田 そういう意味ではスウィングのチェックポイントなんて、なければないほどええいうことですね。
高松 とにかく、“クラブを握る”という一念にかけたら、チェックもヘチマもないがな。何をチェックするんや。
奥田 なるほど。見事な生きざまです。
【通勤GD・今日のことば】スウィングのチェックポイントはなければないほうがいい
月刊GDより