アプローチといえば、体の動かし方やヘッドの入れ方ばかりを気にしがちだけど、もっとも大切なのはリズムやテンポだと、日下部光隆プロは言う。「実は、アプローチが苦手な人はテンポが速いんですよ。だからミスも出るし、距離感も合わないんです」と続ける。アプローチのテンポなんて考えたことがなかった人も、リズムやテンポを磨くだけで上達できるのなら、これはほっとけない。さぁ、寄せワンへ一歩前進。アプローチが上手くなるテンポ、教えます。
画像: 【解説】日下部光隆プロ くさかべみつたか。1968年生まれ。神奈川県出身。ショートゲームの上手さはレギュラー時代から折り紙付き。東京・世田谷のゴルフガレージWASSでアマチュアを教えながら、シニアツアーに参戦中

【解説】日下部光隆プロ
くさかべみつたか。1968年生まれ。神奈川県出身。ショートゲームの上手さはレギュラー時代から折り紙付き。東京・世田谷のゴルフガレージWASSでアマチュアを教えながら、シニアツアーに参戦中

アマは日下部プロの1.6倍の速さで振っている

アマ50人の、ピッチ&ランの切り返しからフィニッシュまでにかかった時間を計測し、平均した結果が下の数値。アマは日下部プロより1.6倍もテンポが速い。

画像: アマは日下部プロの1.6倍の速さで振っている
画像: コースに来ていたアマチュア50人に協力していただきました

コースに来ていたアマチュア50人に協力していただきました

ビートとは「一分間に刻む拍子(ビート)の数」
1分間に何ビート刻むかを表す。プロの場合、秒数と同じ1分間に60ビートを刻む速さ、アマの平均はその1.6倍、1分間に98ビート刻むので、かなり速いといえる

アマはテークバック、フォローともに小さく、ヘッドの動く距離が短いのが特徴。上手く当てたいという意識が、どうしても先行してしまうため、ゆっくり振ることができない。

体の回転で打つことがゆっくり振るコツ

── そもそも、プロはなんでアプローチをあんなにゆっくり振るんですか?

日下部 それは速いグリーンに対して、球をゆっくり飛ばして、ソフトに落としたいからです。速く振っちゃうと、ソフトに打てないから、ゆっくり振るんですよ。

── グリーン周りで微妙な距離を打ち分けるにも、速く振るより、ゆっくり振ったほうがコントロールしやすいんですかね。

日下部 ゆっくり振るには、振り子のように等速で振るイメージが大切。アマチュアのテンポが速くなってしまうのは、手打ちで振り子の支点が手首になっているから。支点からヘッドまでの距離が短い振り子なので、手先でいくらでもスピードが出せてしまうんです。

画像: 「等速に振るイメージです」という言葉どおり、連続写真を撮ってみると、ほぼ等間隔にシャフトが並んだ。ゆるやかなダウンブローでボールをとらえ、ヘッドが低く抜けていくのがわかる

「等速に振るイメージです」という言葉どおり、連続写真を撮ってみると、ほぼ等間隔にシャフトが並んだ。ゆるやかなダウンブローでボールをとらえ、ヘッドが低く抜けていくのがわかる

日下部 体の回転でスウィングできれば、支点が体の中になって、ヘッドまでの距離が長い振り子になるので、プロみたいにゆっくり振れますよ。

体で振ると振り子のストロークが長くなる。すると自然にゆっくり振れる

【ポイント①】 振り子のように一定のリズムで振る

日下部 アプローチでゆっくり振るには、振り子をイメージするといいですよ。振り子の球は等速で、ゆっくりと左右に振れますよね。バックスウィングを速く上げたり、切り返しやダウンスウィングでヘッドを急加速させてしまうと、振り子のように振れません。

画像: 体で振ると振り子のストロークが長くなる。すると自然にゆっくり振れる

【ポイント②】 「体の中」に振り子の支点がある

日下部 体幹や胸の中心、背骨など、体の中に支点を作って、体の回転で振ることが「ゆっくり」のコツ。手打ちで手首を支点にすると、ゆっくり振れなくなります。

画像: 支点から先端までの距離が短い振り子より、距離が長い振り子のほうが、スピードはゆっくりになる

支点から先端までの距離が短い振り子より、距離が長い振り子のほうが、スピードはゆっくりになる

画像: 支点が手首だと手打ちになってテンポも速くなる

支点が手首だと手打ちになってテンポも速くなる

振り子って、下手投げでトスするのと同じじゃないか!

── 振り子のようにと言われても、いまひとつピンとこない人もいるはず。

日下部 近くに置いたカゴに、ボールを手で投げて入れようとしたら、下手投げで軽くトスするように投げますよね。これが振り子の感覚に近いんです。近くのカゴにボールをトスするのに、手先をビュッと速く動かす人はいませんよね。

日下部 肩の付け根を支点に、腕をやわらかく使って、等速に振るでしょ。この感覚がアプローチの基本のピッチ&ランと同じなんです。

── 下手投げのトスなら、誰でもそこそこ距離感が合うはず。

日下部 人間は本来、そういう絶対距離感を持っているんです。下手投げでトスするように、振り子の要領で打つことが、距離感を合わせるコツです。

絶対距離感をアプローチに生かす

【ポイント①】 カゴに向かって下手投げでトスする

日下部 下手投げのカゴ入れは、振り子のように打つ感覚をつかんでもらうために、ボクのレッスンスタジオでも生徒さんにやってもらう練習のひとつ。誰もが手先でビュッと投げずに、自然と腕を振り子のように使う。そのほうが距離を合わせやすいからです。

画像1: 絶対距離感をアプローチに生かす

【ポイント②】 下手投げのトスとピッチ&ランはほぼ同じ

日下部 アプローチグリーンで実際にやるとわかりますが、下手投げのトスとピッチ&ランは、ほぼ同じような弾道でピンに寄せられるんです。つまり、下手投げでトスするようにアプローチすれば、距離感も身につくというわけです。

画像2: 絶対距離感をアプローチに生かす

【ポイント③】 パット、転がし、ピッチ&ランの順番で距離感を身につける

日下部 もっとも振り子のイメージを出しやすいのはパッティングで、その次がショートアイアンのランニングです。ピッチ&ランもその延長線上にあるので、パットやランニングのイメージで打つと距離感が磨けます。

画像3: 絶対距離感をアプローチに生かす

腰から腰までの基準の距離感を作る

日下部 クラブが水平から水平の振り幅のとき、キャリーで何ヤード飛ぶか。これが基準となる距離です。アマチュアの場合は15ヤードぐらいが理想。飛びすぎる人はテンポが速すぎる証拠です。

画像: 腰から腰までの基準の距離感を作る

アプローチ②に続く

週刊GD2019年5月28日号より

This article is a sponsored article by
''.