切り返しで、足よりも手が先に動く。これが「打ち急ぎ」
ラウンド中にミスが出たとき、同伴者から言われる「打ち急ぎだね」や「今のはちょっと早かった」という言葉。その場では何となく納得してしまうものの、そもそも「打ち急ぎ」や「早かった」って、一体、何が早いのだろう。
横田 「打ち急ぎ」で表されるミスのすべては、「切り返し」のタイミングが『早い』という意味です。要するに、トップで「間」が取れずに、上半身から、あるいは上半身と下半身が一緒に動いてしまう状態というです。手(上半身)が足(下半身)よりも「早く」動くと、軌道がアウトサイドインで、入射角が鋭角になりやすく、スライスやスピン過多による飛距離不足といった問題が起こります。逆に、足が先に動いて、手がゆっくりになるほど、ヘッドがインから下りてきやすくなり、入射角もゆるやかになるので、ミスは減ります。
注意すべきは、ここでいう、「早い」とか、「ゆっくり」というのが、振り下ろす「タイミング」のことであって、「スピード」ではないということ。
横田 どんなにスウィングがゆったりしている人でも、トップから、手が足より0.1秒でも『早く』動き出してしまったら、それは「打ち急ぎ」ということです。
人間の体は、下半身を動かすと、上半身が静かになり、上半身を動かすと、下半身は「踏ん張る」ようにできている。
横田 ゴルフスウィングで、「みぞおち」より上の部分は、静かに動かして、クラブの動きを安定させる役割、下の部分は、積極的に動かして、パワーを作り出す役割があります。「打ち急ぎ」は、その役割前提を壊してしまうので、どうやっても上手くいかないのです。
ローズ、マキロイ、スコットの切り返しを見ても、上半身はトップの体勢のまま、下半身を踏み込ませているのがわかる。
切り返しの間がないとどうなる?
「飛ばない、つかまらない、当たらない、あらゆるミスの原因になります」
横田 切り返しで、上半身が下半身より先に動いてしまうと、ヘッド軌道がアウトサイドインになりやすく、スライスの原因になる。また、アウトサイドイン軌道は、入射角がきつくなるので、無駄なバックスピンが増えてしまいます。
「打ち急ぎ」とは、切り返しにおける手を下ろす「タイミング」のミスのことであり、クラブを振る「スピード」とは関係がない。しかし、「打ち急ぎ」を指摘された場合、多くの人がスウィング全体のスピードのことと受け取り、それなら「テークバックをゆっくり上げてみよう」と思ってしまうのではないだろうか。
横田 テークバックをゆっくり上げるのは、むしろ、切り返しのタイミングが早くなって、打ち急ぎを助長します。ゆっくり上げようとすると、手に意識が向いて、手だけでクラブを操作してしまい、足がまったく動かなくなりがちです。そうなると、トップでは上半身だけが回っている状態になり、そこから下半身を先行回転させるには、体勢的に無理があるので、必ず手が先に動いて、打ち急ぎになるということです。
手で上げたクラブは手で下ろすしかない
スウィングの始動で、手に意識を向けてしまうという意味では、「最初の30センチを真っすぐに引く」といったレッスンの常套句も同じで、実は逆効果ということだ。
横田 テークバックで重要なのは、足から動かして、可能な限り速いスピードで、クラブを上げるということです。もちろん、手だけの力でクラブを速く動かすのはNG。重い荷物を、両手を使って体の右方向に思い切り投げるときと同じように、足や体幹の力を使って、腕振りのスピードを作り出すことが重要です。足から動き出せば、切り返しでも足から動き出しやすくなるので、『打ち急ぎ』にはなりません。
体を使って上げれば、切り返しに間が生まれる
つまり、切り返しで、手から動き出してしまうのは、そこまでの動作を手で行っているからということ。
横田 切り返しの間は上半身と下半身の動きの時間差で生まれます。しかし、そもそも上半身だけでクラブを上げて、下半身を使っていなければ、時間差は生まれようがない。いくら切り返しで下半身リードを意識しても、下半身を使っていなければ、動かしようがありません。ところが、多くのアマチュアは、グリップをギュッと握って、腕の筋力だけでヘッドを持ち上げようとしています。
横田 腕で上げたものは、腕で下ろす(手から動かす)しかないので、『間』ができずに『打ち急ぎ』になるのは、ある意味、当然と言えます。
【ドリル】重いものを投げる。体を使う感覚がわかる
クラブが、全身の力を使わないと、到底扱えないほど重いと想像すれば、自然と足や体幹を使ったスウィングになる。
横田 メディシンボールなどの、重いモノを両手で投げる練習をすると、体幹を使ったスウィングのコツがわかる。
コースでのミスの大半「打ち急ぎ」。重いものを投げるイメージで「テークバックで体を使う」こと。これを徹底すれば、打ち急ぎのミスは減らせるというのが、横田プロの結論だ。
横田英治プロのレッスンを直接受けられる夏合宿
PHOTO/Yasuo Masuda
週刊GD2019年7月9日号より