1本1本職人が手造りで仕上げるオーダーメイド感覚
そもそもクラフトウェッジとは、どういうものか。日下部光隆プロに聞いてみた。
日下部 スーツにたとえれば、量販店の“吊るし”が大手メーカーのウェッジなら、クラフトウェッジは、テーラーで自分の体型に合わせてつくる“仕立て”と考えれば、わかりやすいでしょう。
クラフトウェッジは職人(クラフトマン)が、プレーヤーの技量や特徴、好みに合わせて仕上げる完全オーダーメイド。1本1本が手作りとさえ言えるため、クラフトマンシップの個性が際立ってくるわけだ。
日下部 ウェッジに求められるのは、飛び過ぎず、曲がらず、止めたい場所にボールを止めることです。それを職人の技術で高めているのがクラフトウェッジであり、それぞれに現れる個性といえるでしょう。
現在、ツアープロが実際に使っている6モデルを、花道、ラフ、バンカーの3つの状況 で試打してもらった。
SDウェッジ(モダート)
SDウェッジ(モダート)
4万1000円~
ロフト:56度
バウンス:13度
FP値:4mm
総重量:471g
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打感がソフトで 球がフェースに乗る
日下部 ヘッドが先に行き、後からボールが飛ん でくるといった感じで、打感がソフトで 球がフェースに乗ります。自分はハンド ファーストが強めなので、引っかかるかと思ったが、絶妙な削りでソールが滑っ てくれます。バンカーに関しては、薄く砂を取れる技術がないと距離を合わせら れないかも。アプローチは抜群でイメー ジどおりに狙えます。
プロトタイプ(グラインドスタジオ)
プロトタイプ(グラインドスタジオ)
3万8000円~
ロフト:56度
バウンス:10度
FP値:6mm
総重量:467.5g
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ソールの抜けがよく 狙った弾道が打ちやすい
日下部 とにかくソールの抜けがいいのが特徴です。低いボールでスピンがしっ かりかかり、安心して攻めていけます。イメージしたとおりの高さとスピードで球が飛んでくれるので、距離感も合わせやすいです。
tTウェッジ(ジューシー)
tTウェッジ(ジューシー)
5万4000円
ロフト:55度
バウンス:9度
FP値:非公開
総重量:473g
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開いて使いやすく バウンスも効く
日下部 ヒール側を少し落として、フェースを開きやすくしてあります。バンカーやラフ、花道からでもロブショッ トが簡単に打てます。アマチュアはフェースを開けない人が多いので、こういうタイプを使うのはアリです。
CS-03W(ラズルダズル)
CS-03W(ラズルタズル)
3万240円(ヘッド単体)
ロフト:56度
バウンス:15度
FP値:7mm
総重量:470g
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ハイバウンスで バンカーに強い
日下部 ストレートネックでとても構えやすいです。バンカーショットをするとトウ側に 泥がつかないのは抜けがいい証拠で、 ハイバウンスが効いています。フェ ースを開いて使うほど、操作性は高まります。ソール幅が広いため、ア マチュアでもやさしく使えますよ。
Z1ウェッジ(アクシスゴルフ)
Z1ウェッジ(アクシスゴルフ)
2万2000円(ヘッド単体)
ロフト:58度
バウンス:11度
FP値:6mm
総重量:468g
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悪いライでも球を拾ってくれる
出っ歯形状で、ソールの抜けがよく、ボー ルだけを拾ってくれます。刺さらないとい うのはアマチュアには、とても大きな安心 感になります。ただ、バンカーだと逆に刺 さりやすい傾向も。砂を薄く取る人には向 いてないかもしれません。少し打ち出しが 高い印象ですが、ウェートで調整できそう
スタジオウェッジM425(マスダゴルフ)
スタジオウェッジM425(マスダゴルフ)
2万5704円~
ロフト:58度
バウンス:14度
FP値:2mm
総重量:466g
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抜群のスピンで キュキュッと止まる
日下部 ジャンボさんのアプローチは低いボールで、キュキュッと止まるのが特徴。そうしたアプローチを可能にするのがグースネック形状。ボ ールが食いつく打感は、気持ちがいいです。
クラフトウェッジは操作性が高い
日下部 フェースの開閉がしやすいモデル、ソールの抜けを重視したモデル、バウンスを効かせたモデルなど、その特徴はさまざまですが、共通しているのは、操作性が高いということです。総じてネックが長いタイプが多いのは、重心距離を短くするためで、操作性を重視すると同時に、振っても飛ばない、曲がらないというウェッジの目的を追求したためでしょう。
また、クラフトウェッジに共通する特徴として、バウンスが大きめであることが挙げられる。
日下部 芝の薄い春先は別ですが、ボールが沈みにくい日本の芝であれば、バウンス角は2ケタ以上がベストなのです。ソールが滑ってくれるため、アマチュアに限らず、プロにとってもやさしいクラブに仕上がるわけです。
性能はピカイチ、一度使ったらやめられない。あとは価格の高さだけ
5年ほど前からさまざまなクラフトウェッジを試して使っている日下部プロ。
日下部 仕立て屋のスーツでも、自分の好みに合わせて袖の長さや裾丈を調整してもらう楽しみがあるでしょう。それと同じで、自分好みのウェッジに出合ってしまうと、手放せなくなってしまうんです。これもゴルフの楽しみでしょう。
では、アマチュアにもそんな楽しみが味わえるのか?
日下部 「ある程度の技量は必要」と前置きさせてください。そのうえで、今のクラブで自分のイメージした高さやスピンが出ないのなら、一度試してみる価値はあります。確かに高額ですが、お金をかけるならドライバーよりウェッジです。アマチュアがプロと同じスペックを使えるのは、ウェッジとパターぐらいですから。
「上級者になるほどウェッジが繊細になる」とは、ショートゲームの名コーチ、デイブ・ストックトンの言葉である。
週刊GD2019年7月16日号より
ゴルフダイジェストのオンラインショップ「Gポケット」では、個性的なクラフトウェッジを販売中です