一般のゴルファーにとっての晴れ舞台と言えば年に数回のコンペ。しかし、せっかく練習を積み重ねても、いざ本番になると実力を発揮できずに撃沈……。こんな練習場シングルと本番に強い人にはどこに違いがあるのだろう? 独自のメンタルメソッドが人気を博す赤野公昭氏に話を聞いた。

【解説】赤松公昭氏
ビジェイ・シンやクリスティ・カーを指導した「禅ゴルフ」のジョセフ・ペアレント氏に師事。欧米の最新理論と東洋の「禅」を融合した独自のメンタルメソッドを開発

練習場では惚れ惚れするようなナイスショットを連発するのに、いざコンペとなるとミスを連発して崩れてしまう人がいる。逆に、ショットはそこそこなのにいいスコアを出して優勝をさらっていく本番に強いゴルファーもいる。この差はどこにあるのだろうか?

赤野 本番に強い人と弱い人、プロでも大きな試合で実力を発揮できる選手とそうでない選手がいますが、その差はメンタルに一因があるのは明らかです。

── 技術よりもメンタルが原因であると

赤野 もちろん、そもそも技術がなければコンペで優勝することはできませんが、ある程度の技術を持っているのにその実力が出せないのは、メンタルに原因を考えるべき。本番に弱い人の多くに共通するのは自分を「責める」ことです。

── たとえばどのように責めてしまうのでしょう?

赤野 たとえば1番ホールのティショットで少しテンプラ気味になり飛距離が出なかった、あるいはちょっとトップした、当たりが薄かったという場合もあるでしょう。そのとき、練習場では上手く打てていたのにと自分を責めてしまう人は負のスパイラルに陥ってしまうんです。

── 負のスパイラル……

赤野 ミスをした自分を責めることで、こんなはずじゃないとムキになる。ムキになると力みが生まれリズムが悪くなる。リズムが悪くなってまたミスをする。この負のスパイラルは自分を責めることから始まります。こうなるとプレーそのものが苦しくなってしまい、実力は発揮できません。

── では、コンペをつらい1日で終えないためにはどうすればいいのでしょう?

赤野 そもそもゴルフはミスのゲームです。自分を責めるのは完璧を求めすぎているからで、これは我欲(エゴ)です。もちろん完璧を目指すことは悪いことではありません。しかし、完璧というものはなく、完璧にすべてをコントロールしたいという我欲があるだけです。完璧という我欲を手放すことで人は解放され、無心のショットが生まれます。

── たとえテンプラしても、当たりが薄くても「フェアウェイだからいいや」と前に進む。ちょっとトップしてグリーンに届かなくても「花道だからいいや」と思えばいんですね。

赤野 完璧を求めず、自分を責めなければプレーが楽しくなる。この楽しむということが本番に強い人に共通するメンタルなのです。

本番に強い人には「一撃の心」がある

── 自分を責めず、完璧を求める我欲を手放すこと以外にポイントはありませんか?

赤野 練習場とコースの大きな違いは、コースでは一球勝負だということ。練習場では続けて打てますが、ラウンドでは打ち直すことはできません。いかに無心になれるか、いわば「一撃の心」が大切なんです。

── 一撃の心とは。

赤野 ある剣道の達人は「勝とう、打とう」と思った瞬間に剣先が鈍るといいます。ゴルフにおいても大事なのはターゲットと弾道をイメージし、そこに身も心もゆだねること。打とうとする意識が抜けた瞬間、体とクラブが自然に動き始める。これが一撃の心です。

── ゾーンに入った選手がピンしか見えなかったと語ることがありますが、これはまさに一撃の心なんでしょうか。

本番に強くなる練習法
ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

【指導】武田登行プロ
理論的なレッスンに定評があるスウィング研究家。

①ナイスショットの練習より、ターゲットを狙う練習が大切

画像1: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 練習場で漠然とボールを打っても本番に強くはなれません。本番に強くなるにはつねにターゲットを意識した練習が必要。ネットの柱などを利用してターゲットを決めて打ちましょう

②飛距離を伸ばすより、不安を解消する練習をしよう

画像2: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 より遠くに飛ばしたい気持ちは理解できますが、多少の飛距離の差はスコアに大きな影響を与えません。それよりも苦手なクラブや不安を解消することが大事。ドライバーに不安があるなら短くもって打つことも試しておきます。

③全力で振るより、7割の力でスウィング

画像3: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 本番に弱い人は練習場でつねに全力でフルスウィングしているケースが多いです。コースでも同様でライや状況に関わらずフルスウィングするのはターゲットと向き合えていない証拠。プロが練習で多くの球数を打てるのは7割くらいの力で打っているからで、実際のラウンドでも全力で振ることは少ないのです。

④同じグリーンを狙いつづけるより、1球ごとに狙いを変えて

画像4: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 同じ番手で同じようにスウィングして何球も打ち続ける人がいますが、コースでは同じ状況で2度続けて打つことはありません。一球勝負のラウンドを想定して、ターゲットを変えながら打つほうが本番に強いゴルフが身につきます。

⑤打席に入ったままより、毎回ルーティンから

画像5: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 1球打つたびに打席を外して、後方からターゲットを確認し、プレショットルーティンを行いながら打ります。打席にとどまったまま球数を打つのは実戦的ではありません。

やさしいアプローチ練習に時間をかける

画像6: 本番に強くなる練習法 ナイスショットの練習ではコースで結果はでません

武田 マットの上からではアプローチの練習にならないと考えるのは間違い。練習を続ければダフったかどうかの感覚はわかってきます。ロブショットなどの難しい練習よりやさしいアプローチを繰り返すのが実戦的です。

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